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名も無き将軍の物語り  作者: 縞栗鼠
1/22

受け継がれる黄金騎士。

この惨状を見よ!


戦とは、かくも(むご)いものだ…………


二度と、このような事があってはならない。


戦場となった丘陵に塁々と横たわる死骸を見詰めて黄金騎士が呟いた。


軍を率いて勇敢に闘った彼の声は、勝利の喜びとは程遠い悲しみに満ちていた。


翼の付いた顔面を覆うサレットの下から零れる滴は涙なのか…………


彼の言葉を傍らで耳を傾ける一人の若者は、そう思い深く(うなづ)いた。


『黄金騎士様……自分は将軍の、お顔を一度も見たことがありません。』


『なぜ、皆の前に顔をお出しにならないのですか…………』


黄金騎士は若者の方を向いて徐に話し出した。


『私も、お前の歳ぐらいの時に同じ事を先代の騎士様に訊ねた事がある。』


『状況も全く今と同じだった…………』


『戦を二度と起こさぬようにと言い残し、去って行かれた。』


『この黄金騎士のサレットを私に譲り渡して……』


『実は私も、先代の顔を知らないのだ。』


『先代様は、このようにして黄金のサレットを譲り渡して下さった。』


黄金騎士は自らのマントで顔を覆うとサレットを外して若者に手渡した。


そのまま、背を向けて司の持つブレードを地に突き刺して若者に語った。


『これよりは、お前が、この黄金騎士のサレットを被り軍を率いて行くのだ。』


『お前ならできる、自らの名声や名誉のためではなく国民のために仕えよ!』


若者は黄金騎士のサレットと司のブレードを彼から受け取った。


『あなた様は、これから何処へ行かれるのですか…………』


背を向けたまま馬に乗った彼は軽く右手を上げて答えた。


『風に追われるままに……』


そう言い残して彼は馬に鞭を入れて走り出した。


北風が彼の背中を押し、捲き起こる土煙りが、その姿をかき消していった。


若者は黄金騎士のサレットを被り司のブレードを帯びて丘陵を下った。


彼の姿に、一人、また一人と兵士達が後に続いた。


広い草原に出た頃には群れを成す程の数に達していた。


黄金騎士は司のブレードを高々と翳して雄叫びを挙げた。


『これより、我らの平和な世を創るのだーーー!!』


『いざ!!』


『国へ帰るぞーーー!!』


この時より若者が黄金騎士として生きる歴史が始まった。


名も無き将軍として………………






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