表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ

プロローグ


 女神の朝は早い。

 ベッドからもぞもぞと起きだした。

二度寝したい誘惑は一切断ち切る事にする。

 立ち上がり窓の前まで行き、カーテンを勢い良く開けると、地平線が白み朝もやが立ち込めるのが見えた。

 換気のため窓を勢い良く開けた。少し肌寒い風が部屋に入って来る。

眼下に広がるは栄えた街並み、遠くには森と地平にはエスポレオ火山。見上げれば、空を飛んでいる天使もいる。


 ここはヴァマーズの大地。神々と召された英雄勇者が集う、神の世界である。


「ふぅっ、今日もいい天気ね」


 開け放った窓からさわやかな朝の空気が流れ込む、これで完璧に目が覚めた。

 今この街で起きてるのは、小鳥かよっぽど不眠症の人か、徹夜明けの人くらいのものだろう。

 なお、その中には夜通し飲み続けた酒の神とその仲間を含む。


「う~~~~~んっ!」


 大きく伸びをし、新鮮な空気を目一杯吸い込む。

 すると胸のところがぷるんと揺れ、ぱっちんと一つボタンが弾け、飛んでいってしまった。


 ついでに下着のフロントホックも外れて、床に落ちてしまう。

 今日は赤のレースでフリルだった。服装の地味さに反し、下着が派手なのは私の趣味だったりする。


 だって見えないところくらいお洒落したいじゃないか。


「ありゃ、ベッドの下に入ってしまったか」


 空気を入れ替えたら一度開けた窓をまた閉め、カーテンを閉じる。

 カーテンを閉じたのは万が一のこともあるからだ。

 何しろここは中央広場に面した最高立地、誰の目があるのか分かったものではない。


「これが大きいのは豊穣の女神として誇っていいところなんだけど、いかんせん服のサイズに困るのよね。今のも苦しくなってきたし……」


 私の眼下に見え、視線を遮るほど、やたらサイズだけはある双球にため息。服だってタダではないのだ。まぁ縫い物は得意としているわけだけど、サイズ直しにも限界がある。


「繕いの神様に習ったから、ひと通りはなんとかね。デザインに凝りたいんなら芸術の神様だけど、私あんまり派手なのはなぁ」


 すでに拘束具を失った胸をぷるぷるさせながらシャツのボタンを探しに屈むと、今度はウェストから破滅の音が。

 ばちんっ……ころころ。


「まずい、これはまずい。いよいよダイエットを考えなければ」


 などといっても私、食べるの好きな年頃ですから。運動すればとも考えたが、うっかり最近忙しくて疎かになってる自分にやや、反省。


「ともあれまぁボタンは二つとも拾ったし。あとはこれをばれないうちに繕って……ウェストは少しなおしておこう」


 自分にいいわけしながら、着ている寝間着を洗濯物用のカゴへと入れていく。

 そして一糸纏わぬ姿になった。私は下着まで完全に朝から新しいものを着用する派なのだ。

 何となくそうしないと、一日が入れ替わった気がしない。まぁ、下着のフロントホックはおバカになりましたし。


「とと、いけない」


 下着を服の下に隠すのは日課だ。全裸で何をやってるんだろうと思うこともあるが、男所帯が多いこの店、下着の扱いにはとにかく困る。

 特に今日は派手な赤のレースフリル付きのモノ。こんなのを見られた日には、と思う。……そりゃ、洗濯物干してる所を見れば見れるんですけど。それとこれとは別なのです。


「それは、美の女神様みたいに抜群のプロポーションでもしていれば、話は別なんですけど、このへんとか、このへんとか、ちょっとね」


 二の腕とか腰回りとかを摘みつつ、言う。見られて恥ずかしい身体をしているのだから仕方があるまい。

 お嫁に行くまでには、もうちょっと、このお腹まわりの余分なお肉も削ぎ落としておきたいものだ。

 削いで落としていければどんなに楽か、と姿見を見ながら思う。何しろ、揺れるのだ。体を揺すってみると、胸と一緒に余分なお肉が。


「うう、これはいけない」


 嘆きつつクローゼットから薄手の白いブラウスに、ちょっと厚ぼったい茶のチョッキ、スカートはピンクのロングスカートを選んだ。

 今日の下着はピンクの揃いで。一つずつゆっくり着込んでいく。

 服を着替え終わると今度は身だしなみだ。

 汲み置きの水を洗面器に入れ顔を洗う。うちの水は親友である水の女神に入れてもらった一級品だ。これだけでもう肌に良い。

 ドレッサーには一応の化粧道具が揃えられているが、私は基礎化粧以外をあまり使わない。

 一応食品を扱う身ですし、何よりすっぴんのほうがまだ可愛いものだ、若いころ限定で。よってドレッサーは基本長い髪を梳かすための姿見となっている。


「~~♪~~♪」


 夕焼け空の小麦畑色をした髪は、私の自慢だ。新緑の色の瞳とともにとても素晴らしい容姿に生まれたと思う。こればかりは両親に感謝しなければならない。

 よって髪の毛の手入れには気を使っている。椿のオイルを入れつつ、ブラシで髪を梳いていきそれを後ろで纏めてリボンで結び、準備完了。


「良し、今日もがんばりますか!」

 これから、豊穣と平和の女神ウィートの一日が始まるのだ。


やっぱ生に会わないので一気に投稿します。


ジャンルはベリーライト神話。三全世界を統べるどこか抜けた神々の物語です。

肩の力を全力で抜いて見て頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ