01 夢の中の僕と君。
昔から見ていた変な夢の話をしよう。
その夢の中で君が様々な人に出会い過ごす夢だ。
その夢の中の君は全く違うのにまるで自分のような気がした。
小さい頃から見ていた夢の中の君は僕と同じように大きくなっていた。
まるで過去の誰かの人生を見ているように。
小さい君は不気味なくらい笑わない子だった。
小さい僕は無邪気な笑顔で笑う子だった。
少年になった君は少しだけ表情豊かになった。
少年になった僕はたくさんの表情を持っていた。
僕が笑顔を増やしていると
君はどんどん僕に似て笑うようになった。
どんどん似てきた。
だから自分のように思えたんだ。
青年になった僕はある日いつもと違う夢を見た。
最初に立っていたのは草原だった。
そこで君は一人で歩いていた。
歩いている先には大きな闇が見えた。
君は何も知らずに歩いていく。
僕はその時何故か走っていた。
いつもなら夢だからと見ていただけなのに
君のもとへ走っていた。
止めないといけない。
君の手を掴まないといけない。
そんな気持ちでいっぱいだった。
だから走っていた。
君は闇に一歩ずつ奥へ進んでいく。
僕は君に精一杯叫んだ。
待って
行かないで
お願いだから
―――□□□□!!!
その時だった。
君は僕の方を見ると同時に君は落ちた。
闇の中に手を出しながら、
何かを叫びながら落ちていく。
僕は躊躇しなかった。
君が落ちると同時に落ちる。
君の手を引こうと手を伸ばす。
やっと君に逢えたんだ。
やっと君の名前を知ったんだ。
だから消えないでと泣きながら。
君はその声に応えるように僕の手を
一生懸命掴むように手を伸ばした。
そして君の指先が僕の指先に触れた。
灰色の世界だった。
僕と君は手をしっかり持って落ちた先は灰色の世界だった。
もうすぐで夢は覚める。
そう君は言った。
僕は先に白い世界が見えた。
もうすぐで夢が覚めてしまう。
もう君に会えない気がした。
だからこそ僕は言った。
―――――一緒に行こう。□□□□
君は驚いたかのように目を丸めると笑った。
「ありがとう。君と一緒に僕がいていいなら。」
白い世界が目の前に迫る。
僕は君の手を離さなかった。
それが返事だった。
目が覚めるといつもの世界が広がっていた。
なんだかさっきまでのことが夢に思えなかった。
すると声がした。
「やぁ、いい朝だね」
その人は扉の前であの時と同じように笑っていた。
「初めまして、この世界の君」