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第一章☆第三話

ゴクッ、と息を呑む。

近づいてくるにつれ、船に乗っているヤツラの姿がはっきり判った。

一番先頭の船の甲板で仁王立ちになっているのがボスだろう。

派手な服を着て、命令している。

その後ろには、船が五つ。

いずれも大きい。

「・・・・・・・・・・・・・あれ?」

ミツキが何かを見つけた。

「何だ?」

ドーが問いかける。

「あの子・・・・・・・きっとあたしたちと同い年だよね?」

ミツキが指差した先には、青色の髪と眼をした二人と同い年ぐらいの少年がいた。

手には、銃を持っている。それも大きい。

「そうだな・・・・でも、あの船にいるってことは“敵”だ。手加減なんかするなよ。多分、あの構え方からして、力はボスの次当たりかもしれない・・・・・・・きっと」

ボス船に乗っている少年。

ドーによれば、ボスの次に強い存在らしい。

「ま、いっか」

「切り替え早いな・・・・・・・・・これを・・・・単純って言うのかな?」

ミズキは少し考える。

「うわっ、何こいつ!兄貴だからって」

「いや、関係ないだろ。ていうか、兄貴だったら敬語の一つでもつかわねーのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・無理です」

「あ、っそ」

「うわっ、折角微妙だけど使ってやったのに」

「お〜い、別の世界に行かないでくれぇ〜」

クロがミズキの頭に寄りかかりながら言う。

「そう?ごめんね」

ミツキはにこっ、と笑って攻撃の態勢を少し崩した。

「あっ、体制を崩すときけ・・・・!」

と、ドーが言った瞬間、



「・・・・――やるな、チビガキ」



少年が言う。

そこには、先ほどの少年が銃を剣代わりにしながらミツキの前にいた。

「早いな、流石だ。ネズミ――いや、ミツキ」

「ネズミじゃな―――――いぃぃッッッ!ミズキのアホ!」

「いや、ミツキ、ソイツをどうにかしないと」

ドーが冷や汗をかきながら言う。

「そうね」

キンッ、と銃を跳ね返し、ミツキは少年と距離をとる。

「ミツキ、油断するな」

「わかってる、さっきのは悪かったよ、ミズキ」

軽く会話を済ますと、二人は攻撃態勢を整えた。

「オマエら、素人じゃないな」

少年は、にっ、と笑う。

「それじゃないと、楽しめないってもんだ」

「そうか、じゃ、こっちも楽しませてもらう」

ミズキは少年に言う。


「ボス、あいつら・・・」

船に乗っている乗組員が耳打ちする。

「何だ?」

「あの髪の色は・・・・・―――貴族ですよ。上級貴族」

「貴族?貴族のガキが海賊?珍しいな」

「どうします?捕まえます?結構いい値段になるかもしれませんよ」

「ほぉ・・・・・・そうだな・・・・捕まえるか」

ボスは、少年と同じように、にぃ、と笑う。


少年は走り出した。

二人に向かって。

「おいらたちが指示を出す。従ってくれ」

「うん、判った」

「オッケー、任せて!」

二人は、ドクロの指示に従い、分かれた。

ミズキが少年の前、ミツキが少年の背後。

「・・・・・・・・・」

少年は二人を見てから、銃を構えた。

「行くぞ」

少年はそういい、走り出した。

ミズキに向かって。

「ミズキ、左前方に移動!」

ミズキは言われたとおりに動く。

少年はそれを追いかけ、後をついてくる。

「あ〜、オレ持久走苦手なんだよな〜」

ミズキはぼそっ、とつぶやいた。


「ボス、ミロゥに言います?」

「そうだな、言っとけ、殺さないようにとも」

「ミロゥが不機嫌になりますよ?」

「構わん、言え」

「はい」

乗組員は急いで、他の乗組員に連絡した。

しばらくすると、少年と同じ色の髪をした少女が出てきた。

「オマエ、おとなしくしとけよ」

乗組員は銃を少女に突きつける。

「お兄ちゃん・・・・」

少女は小さくつぶやく。


ミズキが逃げている間、ミツキは少年を追っていた。

「速い。かなり」

ミツキは好奇心にあふれたように眼を輝かせる。

「怖い、何かを絶対たくらんでいるようだ」

ドーがつぶやく。

「大丈夫、あたし、鬼ごっこ、大好きだから♪」

ミツキはにぃ、と笑うとスピードをあげた。

「でも、ミズキ、逃げるほうは得意じゃないんだよね」

「マジ!?」

「うん、シャトルランは確か・・・・・・五百二十一回。あたしより一個下」

「ヤバイよ、それ」

「そうなの?」

「あぁ」

二人は会話を終えるともっとスピードをあげた。

少年は後五メートルほどでミズキに追いつきそうだった。

「お・・・おい!ミズキ・・・?」

「大丈夫、きっと」

ミズキはそっけなく言うと、ちらり、と少年を見る。

少年は、疲れた様子も見せず、追いかけてくる。

「はあ・・・・面倒なことになったな」

ミズキはまたため息をつく。

と、少年が銃を構える。

「ミズキ、右に合図したら移動だ」

「判った」

少年がトリガーを引く寸前、

「右に移動だ!」

ミズキが移動した。

しかし、声はコレだけではなかった。


「ミロゥ!止めろ!」


「・・・・・・・ドウ?」

少年は、銃を下ろした。しかし、追いかけながら。

「そいつらを殺すな!」

「何故?出来ればそれは遠慮したい」

「これでもか?」

乗組員はにやり、と笑った。

「!?」

少年はそれを見て、眼を大きく開けた。

「リロゥ!?」

少女は五〜六歳ごろで、汚れたワンピースを着ている。

「こいつがどうなってもいいなら、そいつらを殺せ」

「くっ・・・!」

「お兄ちゃん!わたしはどうなってもいい!お兄ちゃんは逃げて!じゃないと・・・」

少女――リロゥは兄である――ミロゥに向かって叫んだ。

「うるせぇ!黙ってろ!」

乗組員は少女を殴る。少女は後ろに飛ばされる。

「リロゥ!?ドウ、止めろ!」

「じゃあ、早くそいつらを捕まえろ!」

「・・・・・・・・・・・・判った」

ミロゥは、眼を閉じ、また開け、二人を見た。

「今の話は聞いただろう?オレはオマエらを捕まえる」

少年は、先ほどより速いスピードで二人を追いかける。

「お兄ちゃん!やめて!もうそんなこと!」

「黙ってろ!」

今度はミロゥが叫ぶ。

「ぁ・・・・・何で・・・?お兄ちゃんは何もしてないのに・・・お兄ちゃん・・・・」

リロゥは床にへたり込み、泣き出す。

「うるさいぞ、ガキ。いい加減黙れ」

乗組員がもう一度、リロゥを殴ろうとする。が、


「やめなさい、ドウ。この子はアタシが見てるわ」


「え・・・・、やまはさん!そうですか!?それでは!」

乗組員は逃げていく。

やまはといわれた女性はリロゥの傷をぬぐう。

「大丈夫、ボスはさっき逝ったわ」

「逝った・・?」

「えぇ」

やまははにっこり、と笑う。

リロゥはやまはの手についている血をつけた。

「それ・・・・・・・・・?」

「これ?あぁ、これがボスの、よ。今はアタシがボス。ていうか、これからずっとボス」

やまはは「あはは」と、笑った。

「証人はいるもの、大丈夫」

またやまはは笑った。

「やまはさん、なんでわたしを?」

「さぁ?でも、コレだけは分かるわ」

「?」

「あなたにはアタシと同じ道は歩ませない」

「アタシと同じ・・・・・・・?」

「そう、アタシも同じ事があってね。きっとキミにアタシを重ねちゃったんだろうね」

やまははやっぱり笑った。

よく笑う人だな、とリロゥは思った。


パアァンッ


銃声が響く。

「お兄ちゃん!?」

リロゥが見る先には、甲板の先まで追い詰め、銃を二人に向けるミロゥ。

「・・・・・・・・・・撃たないのか?」

「撃つ必要はないよ?あの子、無事だもの」

ミツキは言い、笑った。

しかし、銃の構えを動かそうとはしない。

「お兄ちゃん!わたしは大丈夫だから!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「お兄ちゃん?」

リロゥは身を乗り出し、問いかける。

ミロゥは銃を下ろした。

そして、二人の下へ歩いてきた。

「ねぇ、なんでだろ?」

「何が」

「剣を構えなくてもいいと思うのは」

「さぁ?でも、同感」

「やっぱし?ドクロたち、どうしようか?」

「いいんじゃね〜?」

「やっぱ??」

四人はにこ、と笑うとミロゥを見た。

ミロゥは四人の前で止まった。そして、

「少しだけ、楽しかった。今度は本気でやれよ」

ミロゥは、極悪な笑みではなく、心から笑っていた。

「そうだな、たっく、バレてたのは驚きだった。今まで見分けた人はいない。だから、修行もサボれた」

「聞いてない聞いてない」

ミツキがツッこむ。

「はは、そうだな」

「オマエはこれからどうするんだ?」

「そうだな、まず・・・・・・・・・・・リロゥを親戚に預ける。それから―――」

ミロゥが言おうとしたとき、



パアアアアンッッッ



今度はもっと大きい銃声がし、ミロゥを撃った。

『――――――っ!?』

四人を始め、リロゥややまはも驚いた。

「誰だ!?」

「チッ」

影はやまはの銃により、殺された。

影の血が飛び交う中、何かが蒼い海に落ちたのをリロゥはみた。

「お・・・おに・・・お兄ちゃああああああああああああああああああああんっっっ!?」

リロゥが船を飛び降り、駆け寄る。

「キミが、リロゥちゃん?」

ミツキが問いかける。

かなり動揺しながらも、リロゥは頷く。

「お兄ちゃんは!?」

「海の中」

ミズキが普通に言う。

「お兄ちゃん!」

蒼い海がある一部分だけ紅く染まる。

「いや!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

そこから泡が浮かんでくる。しかし、それもだんだん消えていき、しまいには浮かんでさえもこなくなった。

「ぁ・・・・あ・・・・・いや・・・・ぁ・・」

うつろになったリロゥの目は蒼い海と同じ色の空を見てから、甲板の床を映した。

「リロゥちゃん!?」

「ミツキ、ちょっと上着持ってろ、ついでにロープも」

「あ、うん、はい」

上半身裸になり、渡されたロープを腰に巻いたミズキは海に飛び込んだ。

「キミ、なんていうの?」

「え、ミツキです」

「ミツキね?まず、タオルとか用意して、救急箱とかはどこ?」

「あ、それならそこの部屋に」

地下では無い、甲板にある小さな、しかし、キッチンやらいろいろある部屋にやまはを案内した。

「うわ、結構大きいな」

「気にしないでください、あ、これです。タオルと救急箱」

「ありがとう、ベッドとかある?」

「この下に」

「そう、この子を連れて行くわ」

「分かりました」

やまははリロゥをつれて、地下に進んだ。

ミツキは、ロープがつながれている場所にタオルなどを持っていった。

丁度、ロープが動いている。

「引き上げるのよね?よおっし!」

一気にロープを引っ張る。

すると、海面にまで二人は上がってきた。

「大丈夫!?」

「こっちは!コイツ・・・なんだっけ?」

「ミロゥ?」

「そうそう、ミロゥは水をかなり吸ってる!」

「分かった!今引き上げる」

ミツキはロープがつながれたゴムボートを海に投げる。

ミズキはそれに乗り、引き上げてもらう。

ゴォン、と船が揺れる。すると、カカカカカカカカカカ、と音を立てて、ボートが上ってくる。

そして、甲板まで上がってきたボートから二人を下ろす。

まず、タオルをかけ、ミロゥには応急処置をする。一応、怪我の対応の仕方も習っている。

そして、やまはにミロゥを預ける。

ミロゥは意識はもうろうとしているが、命には別状はないみたいだ。

撃たれたのは、右腕であり結構深い。

続いて、ミズキだ。

一応、今は初夏だ。しかし、この地域、寒い。

初夏にこの海に入る人など、バカでもやらない。

ミズキはかなり凍えている。

「ミズキ?大丈夫?」

手を触ると、かなり冷たい。

ミツキはタオルをもっとかけるが、一向に体温が上がる気配なし。

「ひぃぃっ!どうしよ!」

ミツキはミズキが上半身裸のことに気づいた。

なので、まず服を着せる。

すると、かすかだが、震えが治まったような気がした。

「はぁ、よかった」

ミツキはため息をつくと、肌についた水をふき取る。

「さすがにこんなのは習ってないわ」

とにかく、今はミズキの安全確保だ。

「しかも、こういうときに限ってドクロたちはいないし」

何も知らないやまはたちから逃げるように、ドクロたちは地下三階にいる。

「ん?・・・・・・・・・って、熱!?」

かすかだが、ミズキの顔が赤い。そして、額の手はうっすらと温かくなってきている。

「熱の薬ならあるね、そういえば」

壁にミズキを寄りかからせ、救急箱をあさる。

「おぉ、あったあった♪」

ミツキは錠剤を取り出すと、ミズキに聞く。

「飲める?」

もちろん、返事は無い。

「さぁ、どうしましょう?」

とりあえず、水の用意はしてある。

「はぁ、しかたない。本意じゃないけど・・・・・・・・」

ミツキは錠剤を口に含む。

そして、ミズキの唇に自分の唇を重ねる。

(飲んで、お願いだから)

ミズキは錠剤を水と一緒に飲む。

少しずつ、呼吸が安定してきている。

そして、小さく寝息を立て、眠って入った。

「ふぅ、まぁ、助かった??」

ミツキは言ってから、ミズキを個室へと連れて行った。




「ま、助かってよかった♪」




ミツキはつぶやいた。

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