第一章☆第一話
「どうだ?」
「・・・・・い・・・行きたい・・っ!」
「う・・・うんっ・・・!」
二人は同時に頷いた。ドーはそれを見て、腕を組みうんうん、と頷く。
「やっぱし、子供はこうじゃなきゃな!さぁ、用意するんだ!」
「うん!・・って、ねぇ、母様の許可は?」
「ん?あ・・・どうしよ・・」
「ん?何だよ、別にいいじゃねーか!」
ドーの言葉に少女は、
「よくない!」
と、叫んだ。あまりにも大きい少女の声に驚き、ドーはクロの後ろに隠れる。
「だって、前母様、あたしたちとかくれんぼしてて・・屋敷の中に隠れてたら、陸軍と空軍出してあたしたちを探し出したんだよ!?」
「そういやそうだな・・あやうく戦車とか出しそうだったな」
「陸軍に空軍・・に戦車・・・無断で行ったらヤベェな・・さっさと行って来い!ついでに食料とかも話しつけとけよ〜!」
「おっし!」
バッターンッッッ、とイキオイよく閉められたドア。
二匹は部屋の取り残された。
「・・・・・・上手くいくかもな・・」
ドーはつぶやいた。
「そうだな・・あいつら・・・単純だな・・」
クロはそういった。
二匹は互いに頷いた。
「これで、一つに戻れるな・・・!」
二匹は涙を拭くマネをした。
「いいわよ♪二人とも♪」
『えっ?』
旅に出たい、と言ったところ、案外早く許可してくれた。
今だけ、母親が能天気でよかったと思う。
「だって、あなたたちは今日で10歳♪国をあげれなかったもの・・これぐらいは許すわ♪」
「・・ホントいいの?母様・・?」
少女は年には念をと言うことか何度も聞き返す。
「なんで?あなたたちがしっかり出来るなら、母さんは止めないわ」
そう言って母親は、近くにあった受話器を取った。
「もしもし?あなた?わたしよ、ミルイユよ。あのね、この子達が海で旅したいんですって」
海なんて言ってません!
なんで、分かるんですか母様!?
「えぇ・・そうよ・・それで・・・用意してほしいのよ・・うん・・ありがとう!じゃ」
ガチャン、と受話器を置くと母親――ミルイユは言った。
「船、用意できるって♪」
この人は何者―――――――――ッッッ!?
あたしたち海と言う単語を行った覚えはありません!
二人の意見は同じだった。
そして、ミルイユは二人を引っ張って、ある倉庫に連れて行った。
「ここは、武器庫よ♪」
「武器庫?」
「そうよ、旅に出るなら武器は必要よ♪どれか持って行きなさい」
ミルイユはそう言って、二人を中に入れた。
そして、二人はいろいろ見た後、自分が最も気に入ったのを選んだ。
「ミツキとミズキは短剣二本?一緒なのね〜」
「そりゃ、得意なものがコレですから。嫌だけどな」
「なによっ!あたしだって嫌よ!」
「じゃあ、やめればいいじゃねーかよ!」
「そっちこそっ!」
「まぁ、仲がいいのね〜。母さん嬉しいわ〜」
『違うっ!』
「ほら、ハモッた♪」
ミルイユは、きゃぴきゃぴと子供みたいに笑う。
二人は同時にため息をつく。
「母様って・・・」
「子供だな・・・」
二人は、薄く苦笑い。
ミルイユはまだ笑っている。
「おっ、武器まで貰ったのか〜」
「一緒じゃねーか!仲良しさんだな〜」
『最悪』
二人は、罰の悪そうな顔になる。
「・・・・・・・・あっ、そ〜いや、二人の名前、聞いてなかったな〜」
「・・・・オレはミズキ」
「あたしはミツキ」
「・・・・・オマエら、もしかして双子か?」
クロが腕を組みながら聞き返す。
「一応」
「血は繋がってない」
「へ〜・・って、何だアレ!?」
突然、ドーが叫ぶ。
「何だ?ってえぇぇぇぇぇっぇぇぇぇっ!?」
続いてクロも叫ぶ。
「何なに〜??」
ミツキは二匹が見ている窓から顔をのぞかせる。そして、
「かあさまああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」
ミツキが突然叫ぶ。
母様という言葉に反応してミズキも顔をのぞかせる。
「母様・・・・・・・・・・・何してるんですか・・?」
二人+二匹が見たもの一体どれぐらいの大きさだ?と言うぐらいでかすぎる船。
しかも空を飛んでいる。
「いやっ!死ぬ!」
ミツキが震える。
「オレっち死ぬのか?」
「おいらまだ死にたくねぇ・・・」
二匹気絶寸前。
二人崩壊寸前。
「二人とも〜、あの船はどうかしら〜?」
突然、ドアが開いてミルイユがたずねる。二匹は慌てて動かなくなる。
「母様っ!でかすぎです!せめてあれの四分の一!出来れば五分の一!」
ミズキは必死になって言う。
「そうだ・・・母様・・今すぐアレを引き返してもらうよう指示出して!じゃないと街に落ちたら、大変なことに・・」
「そう?じゃ・・・もしもし?それ、すぐ引き返して、作り直して頂戴。それの四分の一の大きさで・・・ちょっと待って・・ねえ、二人とも、何で作ってほしい?木?それとも鉄?」
『・・・・木!』
「だそうよ・・えぇ、・・そう・・・お願いね・・・」
プッ、と携帯(!?)の電源を切る。
「母様、普通ですか!?ホントに大丈夫ですか?」
「えぇ、後二分後には出来るわ」
「早いです!母様!」
「オレ・・めまいが・・・」
「あっ、ミズキ!」
ミズキは数歩後ろに下がった。
「あら、この国の総力をあげれば10秒で出来るかもしれないわ」
「総力挙げなくていいです」
「そうかしら?まぁいいわ。ほら、出来たわ」
「二分もたっていません、母様」
「ミツキ・・帰ってもらおう・・」
「そうね、母様、用意をするので・・」
「そう?じゃ、わたしは政府に連絡を・・」
『結構です』
「あら、そう?」
母親にきっぱりと子供二人は言う。立派だな、と二匹は思う。
「オマエらの母親は楽しいヤツだな」
「そうだよね?結構・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにがある?」
ミツキはいい所を探しているが、天然としか思いつかない。
「う〜ん・・・・・・何かあったっけ?」
「オマエ・・自分の母親なのにわからねーのか・・・?」
「うん!」
「喜ぶことじゃねーよ」
「そうだね〜・・・って、ドー、クロ何してるの?」
「んぁ?なんでもない!ははは!」
「そうだ、オレッちたちは何もしてません!」
二匹は何かを隠すようにして、腕を後ろに回す。
「危険だな・・」
「そーねー・・って、あれは母様!?って、後ろに船!その中に食料いっぱい!」
船に向かう途中、ミルイユが指示を出して、食料などを運んでいる。
「死ぬ心配はないけど・・・・」
「沈む可能性はあるかもな、おいらたち」
一気に静まりかえるその場。
「で・・でも大丈夫!」
「そうだ!」
二人はなんとか乗り切った(?)
「じゃ、バイバ〜イ!」
「お土産頂戴ね〜♪」
「無理でぇ〜す!」
「そう〜?まぁいいわ!頑張ってね〜!」
「は〜い!」
ミツキとミルイユはもしかして最後になるかもしれない親子同士の会話(たった十秒)を終えた。
それを、羨ましそうにミズキは見る。そして、一言。
「ずる・・・」
たった十秒の哀しい会話に嫉妬(?)をするミズキを無視し、ミツキは手を振っている。
「・・・・・・・・」
クロは不満そうな顔のミズキを見ていた。
そして、あれから三日。
いまだに二匹の目的を聞けない二人。
そして、今、ゆっくりハンモックで昼寝。
二匹もそれぞれに用意された、大きな籠に布を敷いて寝ている。
太陽の日差しが二人+二匹を深い眠りにつかせる。
ミズキがごろん、と寝返りを打つ。
遠くの方。
黒い影がいくつか、青い海の上に浮かんでいる。
それは、二人の船に向かって進んでいる。
その先頭の大きな船。
その上にいる、大男はにやり、と笑った。
「オイ・・・アイツらを殺るぞ」
低く、野太い声は、楽しんでいた。
新連載物です。
頑張っていきますので、よろしくお願いします。