第一章・赤 ド ク ロ
広すぎる海の真ん中。
その上に、この海に比べれば小さすぎる、しかし人にしてみれば大きすぎる船が浮かんでいた。
そして、人にしてみれば大きすぎる船の上に、子供が二人。ハンモックで寝ている。
一人は男の子。ムービングツイストパーマで透明なキャラメル色の髪と眼。
黒いキャップに黒いデニムノースリーブジャケット。前を開けている。
そしてその下には黒いTシャツ。そして、下には黒いカーゴパンツ。かなりぶかぶか・・。靴は、真っ黒なスニーカー・・・と黒いものしか着ていないような少年。
そして、もう一人は女の子。少年と同じ色の髪と二重の大きな眼。
髪は腰まであり、左右両サイドで縛っている。
そして、少年と同じで黒色の服を着ている。違うのは、カーゴパンツではなく、オーバースカートになっているぐらいだ。後は、キャップも上も靴も同じ。
二人とも、おとなしくしていれば、美少年・美少女といわれるほどだ。
そして、二人の横にある可愛らしいテディベア。
469ほどのサッカーボールの大きさで、少女の方が薄い水色。少年のほうが赤色。
薄い水色のテディベアは眼が少女に似ていてくりくりとしている。
赤色のテディベアは眼が半円でちょっとつりあがっている。
二つとも可愛らしく笑っている。
しかし、このテディベア。普通ではなかった。
「起きろ―――――――――ッッッ!!」
「敵だぁ―――――――――ッッッ!!」
このテディベアは喋る。
「んぁ?」
「んん〜?」
二人はむっくりと起き上がる。
「敵ぃ?」
「そんなのいないよぉ・・」
二人はまだ眠いのか、こっくりこっくりと揺れている。
「おらっ!さっさと起きろ!」
しかも、動く。
「ったくも〜・・オレらから望んだことだけどよ〜・・」
「いいじゃん・・別にぃ〜・・」
「ったく〜、こんなんじゃ、海賊になれないぞ!?」
『はぁ〜い・・』
こんなことになったのは、つい最近。
二人の誕生日だった。
ハッピーバースデー!
と書かれたウェディングケーキより大きいケーキの上に乗っているチョコレート。
その周りには、大勢の・・といか多すぎるほどの人&机と料理。
二人は、この宇宙に浮かんでいる惑星・「ミラード」の中に存在する国・ラスタの貴族の子だった。
二人は、一応双子だ。
一応と言うのは、二人は血が繋がっていない。
それは、二人の父親が見事に浮気をしていたからだ。
二人は父親と同じ髪と眼の色を受け継いだ。この色は貴族の間にしか生まれない。
二人の母親はもちろん、貴族。
そして、少年は少女の家へと養子に行った。
それは、二人が2歳のとき。
それから、8年。二人は10歳になった。
そのとき、両親から貰ったプレゼントがこれだ。
あやうく、どっかの小さい国をプレゼントされるところだった、とメイドさんに教えてもらった。しかし、10歳に政治は任されないという理由で却下だ。というより、もともと無理だろう。この案は二人の母親が出した案だ。能天気な母親二人だった。
そして、部屋に戻り、テディベアに名前をつけようとしたときだった。
「変な名前をつけるな!魔法が解けるだろうが!」
「そうだ!おいらたちの名前はちゃんとあるんだ!」
と叫んだ。
『え・・・・・・・・・?』
二人はモチロン、呆気に取られた。
そして、ぴょこん、と動いたかと思うと、走って二人の頭を叩いた。結構痛い。
「何!?なにがあったんだ!?オレたちは夢でも見てるのか!?」
「違う!これは、夢じゃない!」
二人はパニック状態になった。
そして、すぐさまテディベアに向き合う。
「だ・・誰だ?オマエら・・」
こくこく、と少年の言葉に頷く少女。
「おいらたちか?おいらたちはな、水色のほうがドー。で、おいら、赤色がクロだ!」
「ドー・・クロ・・?ドクロ?」
「そうだ!ドクロ様だ!どうだ!恐れ入ったか!?」
「・・・テディベアに入ってるからな・・・」
「全然しないよね・・?」
二人は顔を見合わせる。
「うるせー!オレっちたちは好きでこんなものに入ってるワケじゃねーんだ!どーせならあのカッコい〜いロボットに入りたかったぜ!」
水色の方――ドーが愚痴をこぼす。
「しょーがねーだろ・・」
と、ないている(マネ)をしているドーを赤色の方――クロがなぐさめる。
「そうだ、一つ、オマエらに聞きたいことがある」
「な・・なんだ?」
「何・・?」
「オマエら―――海の上で旅する気・・・ねーか?」
テディベアの一言。
二人の好奇心を探るのには最適な一言だった。
こんにちわ。見ていただきありがとうございます。
それでは、さようなら。
(↑短いですね)