文化系能力①
「そろそろ…俺が突入するべきかな。」
少年はそう呟き、
「「時間狂」、「夢世界破壊」…
「連立方程式」、発動。」
時間と空間を壊して飛翔した。
彼の瞳はまだ翡翠色だった。
out of step
禁忌が発動される前に、
俺が止めなくては。
その頃ーーー
「?!祐也ッ!!」
全てを破壊する兄の姿。
まるで人格が変わった様だ。
「俺は…アウリッシュを堕としてやる!!!」
兄は細長い刀を地面に刺し、
「「時代ノ牢獄干渉扉開門」はつどーーー
パキッ
空間が壊れ、能力を発動する時に唱える「法程式」も止まってしまった。
パラパラと音を立てる、空間。
瓦礫の中から出てくる青年。
「ふーっ、間に合ったかな?うん、間に合ったね。」
見渡しても池袋の街並みだ。
だが、アウリッシュがいる。
「何で僕も来てる訳ぇ?」
青年は答える。
「あんたはユーリオ家の人間だろ?
ユーリオ、フィアリア、楔、美郷…はまだいないか、この世界四大能力勢力家は「ある事」を起こすまで、友好条約を結んでる。
のに、あんたはどうしてそこまで楔を堕としたがるのさ?それが聞きたくて君も連れ戻したんだけど。」
アウリッシュは、言葉をつまらせ、体を震わせながら座り込んだ。
「うぐっ?!」
と同時に祐也までもがその場に座り込む。
青年は苦笑して
「あー、能力を使い過ぎたっぽいね。
とりあえずファミレス行こうか。」
×××××× ××××××
「まず、俺の名前はルカ=フェアリア。
名前から聞いてわかるだろうけど、フェアリア家の人間。で、そのカップルさんは?」
炭酸水を飲みながら祐也。
「いや、カップルじゃないですけど。
僕は楔 佐緒里。楔家の人間です。
で、こっちが…楔 美華。僕の双子の妹です。」
そしてその傍に肉を頬張る侑樹。
「えーっと、楔 美華?です。記憶失っててよくわかりませんが、まぁ、よろしくお願いします。」
ルカは眉を顰め、「ふぅん。で、そこの
TTCは?」
少年は被っていたフードを取り、顔を見せた。
なんて整った顔なんだろう。
整った顔立ち、薄い翡翠の瞳と色素が薄く白と見間違える様な長い、パーマと見間違える様なほど上手くカールした金髪だった。
「僕はアリア=ユーリオ。アウリッシュって言うのは渾名。…そしてTTC。」
言い切った所でルカが仕切る。
「さて、一通り自己紹介が終わった。
次に今までの経緯を言っていこう。
俺は2011年から、そこの双子が今にもヤバそうなのをを「千里眼」で見て「連立方程式」でこちらへ来た訳。あ、「連立方程式」とかは後で説明するから。」
成る程と妹はうんうん頷くが兄には全く持ってわからなかった。
しかし、とにかく説明だけはしなくてはいけない。得意の要点整理でどうにか凌ごうか。
「えーっと、僕らは元の時代、2011年に遊んでたら、いきなりこうなった訳です。」
ルカはまた眉を顰めた。
美華は俯いている。
「次。アリア。」
アリアは説明し始める。
「僕はただ元の時代、2011年に昼寝してたら、夢の世界から連れていかれたんだ。
それで起きたらこうなってた。」
ルカはその事柄については理由が分かったのか、頷いて終わった。
「さて…佐緒里と美華に能力の説明をしないとな。まず、佐緒里の能力からだ。
佐緒里達の家系である楔は、本来なら
時間を飛んだり未来を見たりする…所謂「時間系能力」しか使えない筈だ。
美華には悪いがぶっちゃけて言うと、
美華は「時間系能力」の一つである
「時間飛翔」を使ってこっちに来た訳だ。」
その言葉に佐緒里は、ただ、驚く事しかできなかった。
「何で…黙ってたんだよ。嘘も吐いて、
それほどの理由があるのか?!」
「仕方なかったんだよ…佐緒里を助ける為にはこうするしかなかったんだよ!!」
その言葉に佐緒里は食って掛かった。
「何だよ、俺のせいにするな!!」
口論が始まりかけたのを止めたのは、
アリアだった。
「まぁ、抑えて。で、ルカ。結局佐緒里の能力は?」
ルカはハッとした顔をして、
「そうだな。忘れてた。オイ、ちゃんと聞いてろよ?一回しか言わねぇから。」
少し落ち着いた所で、ルカはまた説明を始める。
「さっきも言った様に、楔は「時間系能力」しか使えない筈だ。美華は「時間系能力」を受け継いでいる。しかし、佐緒里は受け継がなかった。と言う事は無能力と言う事だ。だがどこから覚えたのかは知らないけど、
佐緒里には「文化系能力」、「絶対禁忌能力」という能力を合わせ持っている。
そしてこの時代に来たのはいい事だったんだ。」
「何でですか?」
刹那、時は凍る。
「お前のその能力のおかげで、
もし2011年に残っていたら、3年後の
16歳になる時…お前は消滅する筈だったんだ。それを見越した美華とお前らの母親が
安全だと判断したこの時代に飛ばしたんだ。」
アリアと美華は泣いている。
美華は「千里眼」で見てしまった光景を思い出してたのか、大粒の涙を零した。
アリアは自分の目的に関係あるのか、
ただただ悔し涙を流すだけ。
そして佐緒里はーーー
「お客様、お待たせしました。山盛りポテトです。」
店員の声など、虚無と化した。