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朝露と夕暮れの狂想曲  作者: 暇人、都築
1/4

タイムトリップ ①

「「始まり」があるなら「終わり」もある」

「嫌だ……絶対に……終わらせない!!」


時は2140年。何時(いつ)の間にか

時を超えていた。


彼女はそれに、気づいていない。

僕らがタイムスリップしてしまった事を、

彼女は気づいていないーーー


Humpty Dumpty


「ねぇねぇ祐也(ゆうや)!池袋に行こうよ!!」

河崎(かわさき) 祐也(ゆうや)

それが僕の、此処(ここ)での名前。

本当の名前は違う。

妹は、その事に気づいてない。記憶を失っているからだ。

妹が記憶を失っている、という事を此処にきた時から知っていた。

普通に名乗りたかったが、普通に名乗ってはいけなかった。

理由は二つある。

一つは「本当の僕」は此処にいたら大変危険だからだ。

此処に来た時に、僕らのいた時代を調べて見たのだ。すると、僕と妹は、重大な事に巻き込まれていた。僕らが、16歳の時に。しかもご丁寧に僕らの本当の名前まで記載されている。

そしてこの時代では、その「重大な事」を引き金に、様々な変化を起こしていた。

もし、この時代で僕の本当の名前を言ったら、拷問をされるのだろう。それほど重大な事なのだ。

幸い、(幸いと言ってはいけないが)妹が

記憶喪失で、僕の名前も自分の名前も忘れてしまっているので本当の名前をこの時代に知られずにすんでいるけど、そんなのはただの偶然にすぎない。


そしてもう一つの理由。

それは僕の重度の名前嫌い。

自分の名前はそこまで嫌いではなかったが、

「あの日」、自分の名前のせいで妹が

あんな目に遭った。それから嫌いになってしまったのだ。



「祐也ー、祐也ー。」

妹の透き通った声。

「何?侑樹(ゆうき)

僕は「この時代の妹」を呼ぶ。


「私が祐也を守るから、祐也は笑っててね」

表情こそ「本当の名前」みたいだが、

言っている事はとても真面目であった。


その言葉を聞くと、実の妹に嘘をついているという罪悪感と、妹が事件に巻き込まれない様にとあの時代へ帰る方法を見つけようと言う感情がぐちゃぐちゃと混じり混ざって

何時の間にか涙が出ていた。


「絶対に…帰ろうな…」


×××××× ××××××


それをモニター越しに見る者がいた。

「アッハッハッハ…笑わせてくれるではないか…。(わたし)は絶対お前らを此処から帰さない……我のものにしてみせよう!!」


刹那、


物が彼女の後頭部へーーー


「な……にを…………」

少女は睨んだ。


「祐也の邪魔をする奴は(ゆうき)が許さないから。」

とてもとても楽しそうに笑う少女は、

律儀に割れた花瓶を片付けて

その場を去って行った。


×××××× ××××××

お兄ちゃんが、誰よりも大切だから。

お兄ちゃんを、これ以上巻き込みたくないの。


「あの事件」から、お兄ちゃんを助けるために私は…



大切な人を、裏切り、嘘を吐くの。

記憶が消えてるなんて嘘。本当は全てを知っている。

「事件」の事も、全て知っている。


だって私は、「時間飛翔」を、受け継いでいるから。


本当の苗字は「(くさび)」という。

楔家には、先祖代々受け継がれる魔法の様な、超能力があり、受け継げられる超能力は

男女によって違う。

私たちの親は、二人とも幼馴染だったらしく

おばあちゃんは二人に超能力を教えた。

それから二人は絶対に結ばれなくてはならなくなった。現に二人は愛し合っているからいいけど。

母が受け継いだ超能力

・「千里眼」

位置的に遠い場所を見る訳ではない。

そう、遠い未来や過去を見る能力。

母は「千里眼」で私達の危機を知り、私に「時間飛翔」を受け継がせ、「この時代」へ飛ばした。

・「時間飛翔」

これは私と同じ様に、未来や過去に飛ぶ能力。遊びで飛んだりもするが、年号などを違えると、自分自身が破滅する可能性もある。

・「時間逆再生」

時の流れに逆らって一日や一年をやり直す能力。母はこの能力を少し改造し、老衰しない体にしたと言う。つまり、見た目も少女時代から変わっていない。


父が受け継いだ能力

・「全自動負傷回復(オートマティックリカバリー)」傷口などを、瞬時に回復する能力。だが、大きい怪我の場合は不可能らしい。

・「時間逆再生(タイムリバース)

母親同様、一年や一日単位で全てがやり直せる。父親の場合はそれに付け加えて自分が生まれる前などにも行けるらしい。

・「絶対服従」

魔方陣を発動する事によって使える超能力。

楔家の中で最強最高であると共に最狂最悪の

超能力と呼ばれている。世界禁忌能力の一つ。

まだ使用する姿を見た事がない(というか見たくもない)ので、効力は分からないけど、

「楔ノ能力書」によれば、自分を地の底へ堕とす代わりに一番大切な人を救う事が出来るらしい。


父親は母親の超能力によって少年時代の時の見た目のままになっている。

記憶を失ったふりをするのはかなり辛い。

だけどあの人を安全に守るためには、

こうするしかないから。


×××××× ××××××




「遅いなぁ、侑樹。」

侑樹はあの後、「ちょっと用事があるから先に帰ってて」と言い残し、何処かへ行ってしまった。

家はちゃんと建ててもらっている。

この時代の、法律では親がいない、18歳未満の子供には家が無償で建てられる。(全て来た時に調べた)大人になってから2000万円を支払えと言われるが、それはまた置いといて。

今解決すべきはどうすれば帰れるのか。

僕らはその時、ただ、アンティーク調の

時計を買って、大きな湖で侑樹と読書をしていただけなのだ。

その時計の秒針が響き、針が十二を指した時、何かに吸い込まれていく感覚に襲われた。

瞑っていた目を開けたら、そこには白い空間があった。そして、黒い亀裂が入り…

空間はとても大きく揺れた。

その時繋いでいた妹の手を、恐怖で離してしまったのだ。


「××ぅぅぅぅぅっっっ!!!!」

涙ながらに僕は叫ぶ。

「お兄ちゃんぁあっぁぁぁぁああ!!!!」

大泣きする妹を抱き締めて、


僕らは黒い狭間に堕ちて行った。




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