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灼熱の銀の球体  作者: 佐屋 有斐
第一部二巻「楽園の使者」
23/179

一章


「私の傍で無邪気に笑うあなたに、私は永遠を夢みた。しかし、悲しくも、この願いは出会ったときから叶わなかった。深い深い夢に捕らわれた私。与えられた時が、情けもなく過ぎていった。

 あなたへの想いが胸の内に溢れ、私の涙となって落ちていっても、あなたが私の元から去るとき、色を失った世界は私を責めたてるだろう。まだ、生きつづけるのか。まだ、夢を見るのか。

 不安な夜が私に失う恐怖を植えつけるたび、私の不安を拭うように、今を生きるあなたが教えてくれた。残酷な別れの後も、あなたと私の想いは終らない。私たちの想いは果てしなくつづいていくのだと」

                                        布貴

      



 第一章 愛しあう者たち





 マイナス千℃の石の中に閉じ込められた心臓は、儚げにその鼓動を刻みつづける。力強い心音は、生きていることを教えてくれる。なのに、閉じられた瞳は開かれることもなく、もう二度と光りを映しだすこともない。皮の捲れた肌に手をそわせても、肌を覆う濃い霧が指先を濡らすだけ。そこに温もりを感じることはない。

 もう、いくつ年を重ねたのだろう。何度、この姿を目にしたのだろう。

 時間が流れるのも早いが、最後の笑顔を見た日を忘れるのも早い。感覚も失い、冷たい石のベッドで死体のように眠る恋人。飛びだした心臓、捻れた足、腐敗し、紫色に染まっていく肌。あんなにかわいらしかった容姿も、きっとあと数年で朽ちてゆくのだろう。

日々、人の形を失っていくのに、日々、会いたくなる。いつの間にか、一日に何度も顔を見に来ないと気がすまなくなっていた。会いたくて、会いたくて。頭がおかしくなりそうだった。年中、真冬の室内で、分厚いコートを着て彼女を眺め。花を買ってきては、部屋中にばら撒く。そうしていると、彼女が見てくれているような気がした。床で萎れる花など気にもならなかった。

 治癒者に、奇術師の治療を受けるように勧められたこともあったが、ほんの一時ですら、彼女に会えないのが耐えられなかった。家に帰ることも、短い睡眠時間を取ることさえも苦痛でしかなかった。だから、仕事を辞めて、施設の近くに引っ越した。気がついたら、一日中何も食べずに彼女の傍にいた。正気をかろうじて保っているような状態だった。腐っていく彼女を誰も止められないと知っていた。だが、少しずつ紫色に変色していくたび、愛しいと感じてしまう。どこかの螺子が緩んだように、なんの歯止めもきかなかった。

 この部屋で過ごす私たちの時間は、永遠だと信じていた。彼女と私。二人でいるだけで、それだけで、私には幸せだった。

あの日さえ、来なければ……


 彼女のための飲み物を買いに出ていた私が病室に戻ると、見知らぬ女性が部屋の中に立っていた。私は不安に襲われた。

「誰ですか?」

 私が問うと、短いブロンドの女性は髪を揺らして振り向いた。私は思わず手に持っていたポットを床に落としてしまった。

振り返った女性は、この世の者とは思えないほど美しかった。まともな女性を見たのは久しかった。鼻は高く、唇はふっくらとした厚み、眉毛は太くつりあがっている。もっとも、目に焼きついたのは、白く黄色い肌に浮ぶ大きな二つの目。女性の目は、金色と橙色と、左右の虹彩が異なっていた。女性は口元を押さえた。

「ひどい悪臭だわ。よく、ここに置いてもらえたわね」

 あきらかに、担当の治癒者ではない。女性の言葉は、私の心を現実に引き戻した。

「ここで、何をしていたのですか?」

「何もしてないわよ。ただ見ていただけ」

 そう言うと、女性は微笑を浮かべたまま、私に近づいてきた。私は後退した。女性は清潔そうな水色の無地の布で作られたワンピースをきていた。襟の部分が湾曲しながら二重に縫われ、手首から十五センチ離れた袖は折りかえされている。女性の体に沿って作られた、ゆったりとしたスカートの丈は膝上まであり、靴まで水色だった。女性の頭は髪一本落ちないよう、頭の高いところ結われている。治癒者の服装だ。

 担当の治癒者が不在で、何か用があってきたのかも知れない。でなければ、わざわざ病室にまで別の治癒者が顔を出すわけがない。強い不信感を拭うように、私は額を抑えて落ち着こうとした。

「すみません。近頃、イライラして眠れなくて……。治癒者の方が、何かご用ですか?」

「いいのよ、気にしないで。でも、私は治癒者じゃないわよ」

「えっ、治癒者じゃない?その格好は――」服装を指さすと、女性は身につけていた治癒者の服を見て笑った。

「あぁ、これは変装。そうでもなければここに出入りできなくてね」

 治癒者じゃない。身を襲う恐怖が、一気に、全身に波紋のように広がった。

「あなたは一体、誰ですか?私たちに何の用があって……」

 女性は小さく笑い、私の恋人が眠る石台の方へ歩いていった。私は胸が痛むほど驚いた。何をする気だ。すぐに、彼女に近づけまいと女性の前に立ち塞がった。そして、強く細い肩を掴んだ。女性は彼女を見ていた。

「痛ましいわ」

 同情にとんだ声に、私は顔を歪めた。なにも知らない人間に同情されるのはひどく腹が立った。耳に残り響くのは、治癒者たちの残念そうな声ばかり。恋人は死ぬのだろう。どんなに狂おうとも、わかっている。「どれくらい眠っているの?」

 その質問に私は「帰ってください」と答えた。冷かされるのは我慢ならなかった。

「帰ってください。私たちに、かまわないでください」

「なにを怯えているの?」

 女性が手を伸ばして、流れるような動作で私を腕に包み、抱きしめた。

「なにをするんですか!」女性の腕をふりほどこうと、私は手で彼女の腕を押して抵抗した。慰めなどいらないと、私は叫んだ。しかし、もがくほどに、女性は私の頭を大事そうに胸に抱えた。何年ぶりかの人の温もりに、私の体はしだいに力を抜けていった。緊張がとけていったのだ。あまりにも、心と反した行動だった。

「恐れることなどないのよ」

 優しく呟やかれた言葉に、私は黙った。ここまで、人の温もりに飢えていたとは思わなかった。目には涙が溢れていた。女性の心音は、彼女のものと同じだ。彼女と同じように、この女性も生きている。女性が、私の頬を撫でた。

「本当にかわいそうなのは、あなたの方ね。恋人の死に怯え、あなたは人生を手放そうとしている」

 閉じたはずの口がひらいた。「人生など……」

「恋人の死を見つめながら、あなたも死ぬつもりなの?」

「彼女がいない人生など……」

「死を選ぶ。それは正しい選択なのかしら。わたしには、あなたが恐れのあまりに逃げ出そうとしているようにしか見えない」

 私は首を激しく横に振った。

「私は彼女を一人では逝かせられない。愛しているから……愛しているから、ずっと傍にいてあげたい。彼女が悲しまないように……」

「共に死ぬことは、愛ではないわ。本当に、愛しているのなら、あなたの願いを思い出して」

 抱擁から解放された私は、女性の赤と金色の瞳を見た。その不思議な瞳の中に、私は吸い込まれていった。――赤々と燃える球、それを見上げ、憧れの眼差しを向ける人々。何千、何億もの人々の中、彼女もそこに立っている。あの世界は誰のものでもない。その願いだけは果たされない。いくら諭しても、彼女の耳には一言も届かなかった。彼女はあの世界に行くことだけを夢見て、生きていた。見開く私の片目から、ついに涙が流れた。「いけない、それに近づいてはいけない」震える声がでた。私の目の前で、燃える火の中、飛び込んだ彼女が、炎に焼かれる苦しみに泣き叫んでいた。灼力が彼女の身体を蝕み、彼女を灰にしようとしていた。両目から涙が流れた。

「やめてくれ。やめてくれ。彼女はなにも悪くない」

 泣きじゃくる私は床に座り、首を振りながら顔を覆った。

「私は死よりも、彼女が私の目の前からいなくなる方がよっぽど辛い。奪うなら、私の命を奪えばいい。お願いだ、彼女を奪わないでくれ」

 床にひれ伏し、幻覚を見て泣き呻く私を見て、女性はわかに笑った。

「そうね。あなたの彼女は、このままでは死んでしまうわ」

「やめてくれ……。やめてくれ……。考えたくもない」

「彼女はこのままでは死ぬだろうけど、だけど、迫る死をとめる方法はあるのよ」

 私は顔をあげ、女性を見上げた。「死をとめる方法?」

「そうよ、あなたの彼女を救う方法。でもね、それには危険が伴う」

 救ってくれるのか。救いようもない彼女を。誰もが諦めろといった、彼女の命を――。藁にも縋るような気持ちで、膝をすって女性の服を掴んだ。

「危険など怖くない。どうすれば。どうすれば、彼女は死なずに……」

「あなたのすべてを捧げるというなら、教えてあげる。後悔しないというならね」

「後悔などしない。なんだってする。彼女のためなら、この命を捨ててもかまわない」

 目を見開き、叫ぶ私の頬を濡らす涙に、女性は「いいわ」と頷き、哀れむように触れた。

「いらっしゃい、あなたの願いを叶えてくれる人に会わせてあげる」

 艶めく唇が、めいっぱい笑った。私はその時、奇跡を目にした。治癒者の服を破り、女性の背から眩しい純白の羽があらわれたのだ。









 第四世界、治癒の世界。温かな気候が年中つづく、この世界で。小さな庭付きアパートの一室のような快適な病室で、三大賢者の一人、ザーク・シュミレットはテラスの白い椅子に座り、腕で足を組んで頬を膨らましていた。なんともまぁ、傍から見れば、十四、十五歳ぐらいの少年が不機嫌面をしているようにしかみえなかったが。黒い髪と、黄金の瞳を持った賢者は、まさにご立腹だったのだ。

 第十四世界、水の世界での事件が解決して、もう一年は経っていた。体内時間調整のためにもっていた、体内時間調節器を時術師に返却し。あとは水の世界で負った、右肩の手当てさえすれば、日常がもどってくるはずだった。けれど、シュミレットの細い右腕には、重厚な包帯が巻かれていた。不機嫌の原因は、そこにあったのだ。

 シュミレットの隣に座った助手のルーネベリが、カップに入った紅茶をさしだした。

「先生。いい加減、機嫌を直してくださいよ」

 爆発したように、あちこちにはねた赤い髪と、大柄な身体を持つ助手は、賢者をなだめようとしていた。五粒の紫のアミュレットがついた片眼鏡の奥で、伏せられていた左目がルーネベリを見た。

「僕の機嫌を直したいなら、この腕をどうにしかしてくれないか」

「無茶なことをいわないでください。俺は治癒者じゃありません。学者ですよ」

「同じようなものだよ、僕にとっては」

「まったく、違います。そもそも、先生がはじめからエントロー先生の治療を受けられていれば、こうはなりませんでした」

「忙しいエントローの手を煩わせたくなかったんだ。でも、僕の配慮が、こうなるとは思いもよらなかった」

シュミレットは惨めな白い腕を見下ろした。

「新任の治癒者にあたったくらいで……」

「一年もこの状態だよ。完治するのに、あと数週間かかるなんて」

「先生」

「おかげで、せっかくもらった休暇に、ダビ様に会いにも行けなかったじゃないか」

「そればかり言っていますけど、気にしすぎです。腕が治った後でも、事情を話せばきっと、ダビ様もわかってくださいますよ」

「大丈夫なものですか。一年も経った後に行っても、ダビ様に叱られて追い返されるだけだよ。あの人が知らないことはないんだから。いつ、夢便りが届くか、気が立って夜も眠れない」

 身震いしたシュミレットに、ルーネベリは苦笑いした。シュミレットは前賢者ダビのことばかりに気にかけていた。賢者シュミレットが恐れるほど、よっぽど、怖い人物なのだろうか。

「先生、そのことはどうにかなるはずです。とりあえず、今は、これをご覧ください。時術師から目ぼしい調書の写しを借りてきたので」

 ルーネベリは座った膝の上にのせていた茶色い冊子を三冊、シュミレットに渡した。シュミレットは「これだから、嫌になるんだ」と、顔をむっとさせながらも、表紙に目を通した。

「デルナ・コーベン、キュデル。これはケトラ・J・ウォンドのものですか……」

 冊子のページをめぐりながら、シュミレットは瞬時に文字を読み解いていくと、「一週間たりとも、同じ世界に滞在していない。ウォンドはあちこち行き来して、なにをしていたのやら」と、つぶやいた。

「ウォンド?」

 ルーネベリの、語尾のあがらない聞き返しに、二冊目の冊子を開いていたシュミレットが目をあげた。

「ケトラ・J・ウォンド。君は彼を知っているのかい?」

「はい。といっても、名前のみですが」

「それなら、正体は僕が暴いてあげよう。彼はこの世の中のあらゆるものを、非合法に取引している不法者だよ。賢者の助手である君が、個人的に彼を知っているのなら、大いに問題がありますね」

「先生のご期待に添えずにすみません。ケトラ・J・ウォンドという人物と、個人的な接点はありませんよ。ただ、その名前を聞くまで忘れていましたが、セロナエル・J・アルトがケトラ・J・ウォンドと接点があったそうです」

 読み終わった冊子を三冊、シュミレットはそっとテーブルにおいた。全部を読みきるのに、数分とかからなかった。

「この調書に書かれていなかったことを、君が知っているなんて驚きだね」

ルーネベリは「学者仲間から聞きました」と、誰から聞いたのかだけはあえて伏せた。しかし、シュミレットは追求せず、冊子の上に腕をのせて、手を組んだ。

「関心しないね。時術師よりも君のほうが優秀だなんて。おまけに、こんな調書の写しまで借りてきて。君は僕の仕事を増やそうとしているのかい」

「ご希望なら」と、ルーネベリ。

「僕の仕事は、問題を解決するだけだよ。犯人を捕まえるのは、僕じゃなくて時術師の仕事。ユノウに君も預けようかな。そしたら、僕はややこしい人間関係を詮索しなくてもすむのだろう」

「ユノウ先生の助手の方々に、俺を袋叩きにさせたいのですか」

「それも楽しそうだね」

「先生。エントロー先生と、ユノウ先生の部屋の熱気をご存知ないから冗談が言えるんですよ」

 シュミレットは笑った。

「君、あの部屋まで行ってきたのかい」

「時術師の部屋は、ユノウ先生の部屋でもあるんですよ。調書を借りるためには、どうしても、行かなければいけませんよ。先生の助手だから、親切に接していただけましたが。俺がもし、同じ先生の助手だったら、調書ひとつでさえ、あの気の遠くなる調書の山から、自分で探しださなければいけないところでした」

「面倒きわまりない話だね。僕は不思議でならないよ。ユノウもエントローも、何十人も助手なんかこさえて。よくもまぁ、窮屈に思わないものだよ」

 ルーネベリは唇に親指をあて、首を傾げた。

「いいえ、もしかしたら、それがふつうなのかもしれません。本来なら、未来ある魔術師の助手が、先生を派手に崇めまつっているべきなのかもしれません。なんていっても、賢者様なんですから」

 とにかく、目立つのが大嫌いなシュミレットの性格を知っていて、面白半分にそう言ったルーネベリに、シュミレットは頬を膨らました。

「僕を派手に崇める助手だって。そんな無駄口を叩く暇があるなら、僕の腕をどうにかしてくれ」


「あらあら。賢者様がそんなかわいらしい顔をしては、しまりがありませんことですよ」

 治癒者の長が隣の塀の戸をあけ、庭をよこぎってこちらへ歩いてきた。短くカールしたオレンジ色の髪に、緑の丸い瞳。幸せな太りの二重顎を持つこのふくよかな女性は、第四世界でも三番目に偉い人物だった。

「メリア・キアーズ、君にも少しは責任があるのだよ。この腕のせいで、生活するのにも苦労しているんだ」

「まぁ、それはおかわいそうに」

 あいていたテラス席に、メリアは腰かけた。ルーネベリは冊子をさっと、膝に戻した。シュミレットは話つづけた。

「治るどころか、傷が移動したんだ。もう少し、ましな人をよこしてくれればいいのに」

「患者が賢者様だと治癒者たちには言わないだけでもありがたいと思ってくださらないと。管理者ニエルヌ・ズーユ様にも、内緒にしているのですからね」

 シュミレットは口篭り、「それにしたって……」と言った。

「第三世界には、偉大なエントロー様がいらっしゃいますし。はじめから、わざわざ来られなくとも」

「君も同じことをいう。賢者は来てはいけないと言うのかい」さらに口を膨らませたシュミレットに、メリア・キアーズは声をだして笑った。

「昔から、お変わりありませんことね」

「君の少し抜けたところも、昔からまったく変わっていないよ」

 親しく笑う二人に、ルーネベリは言った。

「いつから、ご親交があるのですか?」

 メリアがルーネベリに言った。

「私の祖父は賢者でしたの。ですから、おじい様が引退なさった後からもずっと、ですわね。私の小さい頃には、賢者様に遊んでもらった記憶もありますのよ」

「はぁ」

 シュミレットが子供と遊ぶ?これはまた意外だな、と思ったルーネベリに、シュミレットは言った。

「メリアの父親は高飛車で、あまり好きではなかった。だけど、メリアの祖父に当たる彼はいい人だった。メリアは顔だけは彼に似ているんだ」

 うふふと、メリアは笑った。

「本当のところ、おじい様を思い出して、この世界に来たのではありませんか。シュミレット様は、口下手なところもありますものね」

 シュミレットは口を丸めた。

「君は年々、かわいくなくなっていくね」

「私もいい歳ですもの。今年で、八十三歳になりますのよ」

 ルーネベリは驚いた。一見したところ、皺も少ない顔立ちだったので、てっきり、メリア・キアーズは五十代半ばだと思っていた。奇術師エントローよりもずいぶんと、年上だったのか。

「お若いですね」と、ルーネベリは言った。

「ふふ、ありがとう。私、治癒者の長をやっておりますけど、祖父と同様に奇術も扱えますの。奇術には外見を若返らせる術式もありますから、実力次第で、何歳にもなれますのよ」

「女性にはとてもいいことではないのですか」

「よく羨ましがられます。でもね、奇術を扱っても、賢者様のように永遠の若さは手に入れられませんのよ。力は歳と共に衰えますから」

「僕に嫌味を言うのかい」

「あら、嫌味に聞えましたか?」

 シュミレットはうんざりするようにため息をついて、「顔だけは、メリアとそっくりなのだけれどね」と、くりかえし言った。賢者のこんな会話を聞くのは珍しかった。ルーネベリは二人の話に、しばらくの間、耳を傾けていたかったのだが。どこからともなく、キーンと、頭の中に慌てた声が響いた。

「キアーズ治癒長、大変です。『癒しの塔』の頂上に人が……」










< 登場人物 >



ザーク・シュミレット …… 三大賢者の一人 魔術師

ルーネベリ・L・パブロ …… 賢者の助手 学者



ニエルヌ・ズゥーユ …… 第四「治癒」世界の管理者 奇術師総督

トゥナート・ワール …… 副管理者 奇術師

メリア・キアーズ …… シュミレットの知人 治癒者の長

ザッコ …… 治癒の世界の患者

ジェタノ・ビニエ …… 狂った奇術師 

ミグディーン・ドゥワン …… ベテラン治癒者

ブリオ・ボンテ …… 若い男の治癒者

ケフィタ・シャイヨ …… 若い女の治癒者

ギルビィ・ベーグ …… 灼力感染患者

タニア・シュベル …… ギルビィ・ベーグの付添い人

イスプルト・マシェット …… 雇われ時術師



イモア …… 奇術を操る魔術師

サンジェル …… 混色翼の血を引く者

デム …… 時術師



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挿絵(By みてみん) 


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ご愛読頂いている方々へ、大変お待たせ致しました。

2011.10.8.satより灼熱の銀の球体 第二巻「楽園の使者」、連載開始いたします!


本文をお読みになった方なら、ご承知の通り。

第二巻は、「針の止まった世界」から一年後の話、治癒の世界が舞台になります。


不審な女や、治癒の世界の人々を迎え、ある答えが生まれ。ある謎が露になる……

三大賢者の一人ザーク・シュミレットとその助手ルーネベリ・パブロは、

今日も、出される問いに「答え」を探して走りまわる。



次章も、お楽しみに!



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