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灼熱の銀の球体  作者: 佐屋 有斐
第一部第五巻「天秤の剣」
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七十八章 避けられない戦慄

  


 第七十八章 避けられない戦慄





 ルーネベリは気のせいだろかと、少し不安に感じた。ルーネベリの背中には「神殺し」という別名を持つ真実の剣がぶら下がっている。そして、目の前にいるスタルセラティティタンは過去既に一度神を殺していた。一本の剣と、神はまるで巡り会うことを予期して此処へ辿り着いたように思えた。

「ルーネベリ、どうしたの?」とスタルセラティティタンが言った。

 ルーネベリはふとスタルセラティティタンを見て、彼が真実の剣について気にならないのだろうかと考えた。恐らく、その思考はスタルセラティティタンに伝わったのだろう、首を黙って横に振っていた。

ルーネベリは思考を覗かれた不快感と、疑問に苛まれた。

 何も知らないアラが言った。

「神殺しという言葉を聞くのは二度目だ。真実の女神は剣で消滅させたと言っていたな。ティティはどうやって……」

 アラの言葉にルーネベリとシュミレットがぴんと弾かれたように肩を揺らした。ーーそうだ、アラの言うとおり、スタルセラティティタンはどうやって友人の神を殺したのだろうと、答えが聞きたいと思った時。突然、スタルセラティティタンが椅子から立ちあがった。

「ーー皆、動かないで。レイションが戻ってきた」

 ルーネベリたち全員の身体が強ばった。声すら喉の奥に引っ込むほどの圧力を感じながら、身体が固まっていった。

 一瞬、紫を帯びた黒い電気が筋を描いて光った。そして、宙から緑色の炎を纏った男神が怒った様子で姿を現した。

「スタル!スクリーやインデルフォルスに聞いたが、剣を持った連中は見てないと言っていたぞ!」

 スタルセラティティタンは取り繕うように笑みを浮かべた。

「レイション、そんなはずないよ。僕、見たんだよ。スクリーやインデルフォルスが隠しているのかもしれない」

 真っ赤な嘘を平然とついているというのに、スタルセラティティタンはとても落ち着いていた。レイションと呼ばれた男神は鼻をぴくぴくとさせて獣のごとく匂いを嗅いだ。

「スタルの神殿にしか残り香がねぇ!」

「どうしてだろう。なんでだろう。僕にもわからないや」

 明らかに恍けているスタルティティタンに、レイションは睨みつけただけで。固まったままの姿のルーネベリたちの周りを匂いを嗅ぎながら三周しただけだった。

 スタルセラティティタンはレイションには真実の剣を見つける力はないと言っていたが、まったくその通りのようだ。スタルセラティティタンの力なのか、身体が固まって動けないルーネベリの背中には確かに真実の剣が存在している。しかし、レイションは目の前にあるにもかかわらず、剣を見つけることはできなかった。

 ルーネベリたちの周りをぐるぐるとその後も周り、二十回目ほどでようやく諦めた。

「おかしい!匂いがするんだが……。どこにもない!」

「レイション、もう神殿に帰ってよ。僕はもう余計ないことはしないし。ここで大人しくしているから」

 レイションは鼻を啜り拭った。

「わかったよ。別のところを探す。見つけたら、すぐに言えよ」

「うん、すぐに言うよ」

 スタルセラティティタンが頷くと、レイションはフワッと宙に浮かんで一瞬にして消えた。

 レイションがいなくなったと同時に、ルーネベリたちの身体がぐにゃりと柔らかくなり、すぐに元の姿に戻った。

「ーーふぅ」と一息つくと。スタルセラティティタンは笑っていた。

「見た?レイションっていつもああなんだ。偉そうなのに、見つけたいものを見つけられないんだよ」

 ルーネベリは言った。

「見つけられない?」

「僕に意地悪ばっかりするから、僕は教えてあげないんだ。教えてあげたって、わからないけどね」

「どういうことなんだ?」

 スタルセラティティタンは手を後ろで組んで、可愛らしく上半身を斜めに傾けた。

「レイションはね、ビュア・デアに来る前から欲しがりだったんだ。他の神が持っているものを欲しがって、飽きたら適当な場所に捨ててしまうんだ。だから、欲しいものは目の前にあっても見つけられないんだ」

 ルーネベリは言った。

「理にかなった罰のようだな。初めから欲しいものが手に入らなければ、捨てることもない。ただ、欲しいものを探しつづけるだけ。ーー

レイションという神とは知り合いなのか?ビュア・デアに来る前から……」

 スタルセラティティタンは頷いた。

「知っているよ。ビュア・デアにいる神全員が知り合いってわけじゃないけど、僕はほとんど知っている神が多いよ。会ったことがないのは僕がビュア・デアに来た後に生まれた神々とデハルぐらいかな。デハルは僕がビュア・デアに来たときにはもういなかったから」

「デハル?」

「ビュア・デアを作った創造神だよ。僕より古い神で、老神様よりも若い神様。神殿のほとんどを棲家にしている神たちが自由に外観を変えているけど、デハルの主殿は今も昔と変わない外観のままビュア・デアにあるよ」

 シュミレットが言った。

「その神殿には今は誰も住んでいないのかな?」

「勝手に住み着いているのがいるよ」

「一体、誰がーー」とルーネベリが言いかけたとき、キーンと耳鳴りがした。そして、ざわざわと耳の奥から聞こえる雑音の中に笑い声と共に声が聞こえた。

《ーーわたしだ》 

 ルーネベリの心臓がドクンドクンと煩く鳴っていた。あの艶やかな声はスタルセラティティタンに出会う前に聞こえた声だった。

「ルーネベリ?」とアラが言った。シュミレットもルーネベリの顔を見ていた。しかし、ルーネベリは唇ひとつ動かせなった。このような状態になったのは何度目だろうか。身体が再び硬直していた。

 スタルセラテイティタンはそんなルーネベリの姿を見て、溜息をついた。そして、あの背筋のぞくりとする気味の悪い声で言った。

《僕らの話を聞いていたの?意地悪だね》

《フフ》

《ーールーネベリが怒っていたのは、こんなに不愉快だからだったんだね。覗くのはいいけど、覗かれるのは嫌だ。嫌な感じがする。……あぁ、そうだ。僕は覗かれたことがほとんどなかったから知らなかったんだ》

 スタルセラティティタンの声ともう一人の艶やかな声は、ルーネベリだけではなく、シュミレットたちにも聞こえはじめた。スタルセラティティタンがそうしたのだ。

 もう一人の声が言った。

《ティティタン様、フフ。怒らないでください。それにずっと目をつけていたのはわたしが先です。それをそこに置いておいてください。もう近くまで来ているので、今から取りに行きます》

《そんなことを言うけど、其方のものじゃないよね?》

《ティティタン様は剣にはご興味もないはずです。今、その赤髪の生物以外は持ち主はいない。その生物には持ちつづけることはできないので、神の一員であるわたしが頂戴してもいいはず》

《剣?あぁ、うん。剣には興味はないよ。だけど、ルーネベリや『ザーク』、アラ、リカ、オルシエ、バッナスホート、彼らには興味があるんだ。彼らは僕に大事なことを教えてくれた人なんだ。彼らが辛い思いをするのは悲しい》

《フフ、悲しいだなんて。あなたのような神がそんな者たちを憐れむなどあってはなりません》

 束の間、スタルティティタンの周囲の空気が激しく揺れはじめた。そして、背筋をぞくりとさせる声がまるで深く深く体内へ入り込んだかのように、ルーネベリだけではなく、その場にいたスタルセラティティタンの声が聞こえていない皆たちの内側にある見えないはずの奇力体を激しく揺さぶり、強く迫り来る死を意識させられた。

《ーー僕は悲しんではいけないって言うの?僕だって、他者を憐れむこともあるんだ。とても儚い者たちが傷ついてほしくないと思うことだってあるんだ。だから、僕の手が届くのなら、僕は他者のためになる行いをして善き神になりたかった。僕はやり過ぎてしまったけど、其方は神をなんと心得ているんだ》 

 スタルセラティティタンは白い風を纏い、怒りに震えていた。

 その姿を見て、動けないルーネベリもシュミレットもアラも、リカ・ネディやオルシエ、バッナスホートですら、皆感覚的に感じ取っていた。けして逆らうことができない大きな存在だと。スタルセラティティタンはやはり神であり、しかも、今まで出会ったどの神よりも恐ろしい存在なのかもしれない。子供の姿をしているからとスタルセラティティタンに道理を説いていたルーネベリもシュミレットも、薄い氷の上をいつの間にか歩いていたのだと初めて気づいた。スタルセラティティタンの機嫌をもし損なっていればと思うと、身震いせずにはいられなかった。


《フフ、凄い。凄まじい。遠くにいるわたしの元までひしひしと伝わってくるーー消されるかもしれないという恐怖がとても甘美だ》

 艶やかな声は怯えることもなく、ただ狂ったように面白そうにそう言った。スタルセラティティタンは言った。

《其方は目が曇っている》

《フフ、なにを仰る。わたしたちは同じ目をしています》

《同じであって、同じじゃない。僕の本当の色を其方は知らない》

《ティティ様には会ったことはありますよ》

《ビュア・デアでね。でも、そんなに多くはないよ。長い間、デハルにくっついて離れなかった。デハルがいなくなった後も、僕には会いにこなかった》

《フフ、会いに行かなかったことを怒っていらっしゃるのか、拗ねていらっしゃるのか?》

《其方が来なくても、僕はなんとも思わなかったよ。すぐ近くに其方がいたことは知っていた時もあったけど、僕は声もかけようとも思わなかった。これまで僕らには繋がりなんてものはなかったんだ》

《フフ、そうでしょうね。あなたは出来損ないの神たちと戯れていた。楽しかったですか?》

《皆、出来そこないなんかじゃないよ。皆、それぞれ抱えているものはあるけど。沢山怒られたけど、皆といられて楽しかったよ。でも、僕は悲しくもあったんだ。ビュア・デアから出られなかったから》

《ここから出たデハルのようにですか?ーーあなたとデハル、どちらが強いでしょう》

 スタルセラティティタンは俯いた。

《僕も愚かだったけど、其方の方も愚かだね。力が強ければなんでもできると思っているから、いつまでもデハルの姿を追いかけているんだね。僕も望みを叶えてあげたら喜んで貰えるんだと思っていた。僕と似ていて僕とは違う》

《フフ、あなたと同じなら、あなたほどになれていたら、どんなによかったでしょう。こんなにも喉から手が出るほど飢えた気持ちを抱くことはなかったでしょう。欲が出る前に既に手にしている……。羨ましくて、羨ましくてたまらない。欲しいものが手に入る幸福な者と、はじめから持たざる者。生まれながらにして全ての定めが決まっているのです》

《其方の心も寂しんだね。いくら欲しいものを手に入れても心が満たされなければ、意味がないんだよ。僕の友人もそうして苦しんでいたんだ。僕がもっと話を聞いてあげればよかった。其方にも、そんな風になる前に話し相手がいればよかったんだ》

《フフ、話し相手など、お友達などいても、すべてが手に入らなければ私の心は満たされることはない……》

 声が止まった瞬間、スタルセラティティタンの背後にある宙が一直線にひび割れて、中から飛び出してきた二人の男神と思われる黒い光を纏った者たちが、黄色い光の剣を手にしてスタルセラティティタンに襲いかかった。

 スタルセラティティタンは即時に振り返ると、二人の黒い光を纏う男神たちはその場でぴたっと固まってしまった。

《デハルの影を使って操ったんだね》

《あなたとデハル、どちらが強いのかこれでわかるーー》

《もう避ける気なんてないんだね。ここへ来るなら、僕が代わりに相手をしてあげるよ。其方がいくら他の神を操ろうと、僕は彼らを守るよ》

《フフ、楽しみだ》



 ふっと、艶やかな声が消えると、「起きて」と、スタルセラティティタンは片手を大きく振った。まったく身動きができなかったルーネベリたちの身体に自由が戻った。

 アラ、オルシエ、バッナスホートは椅子から立ち上がり、硬直していた身体を動かしてまず最初に背中の大剣を抜き取っていた。神相手に勝てる勝てないの問題ではなく、彼らは本能的に気を落ち着かせようとしていた。リカ・ネディは硬直していた身体を動かして、身体を伸ばしていた。シュミレットは乱れたマントを暢気に整えていた。そんな中、ルーネベリは立ちあがった後、その場に座り込んでしまった。あまりにも恐ろしさに震えてしまっていた。

 そんなルーネベリの元にスタルセラティティタンは白い風を纏ったまま近づいてきて屈んだ後、ルーネベリに手を差し伸べて言った。

「そんなに怖がらなくても、大丈夫。僕がいるから大丈夫だよ」

 ルーネベリは震えながらスタルセラティティタンの虹の瞳を見つめた。先ほどは心の底まで恐ろしさを感じたが、今はまるでルーネベリたちを守る守護神のように優しく頼もしく思えた。

 ルーネベリは言った。

「ーーどうして、俺だったんだ?いや、どうして、俺が代わりをしなければならなかったんだ」

 スタルセラティティタンはちらりと、ルーネベリの背後の方に虹の目を向けて言った。

「重荷を背負う者が必要だったからだよ」

 ルーネベリは首を激しく横に振った。

「俺じゃあ無理だ。自分のことさえ守れそうにないのに、どうして、こんな大事な役目を負わせるなんだ」

 スタルセラティティタンは首を傾げた。

「戦うのが嫌なんだね?」

「嫌に決まっている!俺が望んで戦いたいわけじゃない。奪い合いの渦中にいたいわけじゃないんだ」

 ルーネベリは急いで背中に担いでいた真実の剣をスタルセラティティタンに差し出して言った。

「受け取ってくれ。俺には無理だ、重すぎる。でも、ティティ、お前は神だから持てるはずだ。この剣が持ち主を選ぶとしても、ティティなら持てるんだろう?だから、あの声の奴は……」

 スタルセラティティタンは剣に目を通して、悲しげに言った。

「うん、僕にはその剣を持つことができるけど。それをデハルが望まないと思うよ」

「デハル?」

「ルーネベリ、その剣がデハルなんだ」

「え?ちょ、ちょっと待ってくれ。デハルってついさっき聞いたばかりの……」

「うん、ビュア・デアの創造神だよ。もう話している時間はあまりないから、今話しておいた方がいいと思う」

「あぁ……」

「うん、デハルが剣の姿になったのは、ビュア・デアを出るために姿を犠牲にしたからだよ」

「姿?」と、ルーネベリはそういえば、艶やかな声がそんなことを言っていたような気がした。

「デハルは元々は神々に愛される憧れの存在だったんだ。姿がとびきり美しくて、多くの神にとって理想的な神の姿だった。僕が憧れたのは老神様だったけどね」と、スタルセラティティタンはにこやかに微笑んだ。ルーネベリは言った。

「ーーそれで、その姿を捨てて剣になったのか?でも、どうして……」

「デハルはビュア・デアを作った後、デハルの美しい姿を似せて絶対者という生命を作り出そうとしたんだ。でも、その子たちは神にあまりにも似た、擬似的なものだったんだ」

「擬似的?ーー俺の記憶がわかるなら、俺たちも神になった生命を見たぞ。ヴィソロゴダン」

「その子は擬似的じゃないよ。本物の神になったんだよ。でも、デハルが作った子は永遠に神にはなれない擬似的なものだったのに、神のように振る舞って。神々の摂理から外れて、別の世界を無意味に滅ぼしてしまったんだ」

「他の世界を滅ぼしたのか?」

「うん、それでーー僕がその子たちの存在自体を消したんだ」

「まさか、その絶対者という者が殺してあげたという友人なのか?」

「ううん、僕の友達は今のデハルと同じように剣だったんだ。僕は真実の女神と同じように、神を裁くことができたんだ。でも、僕の友達は嫌だったんだよ。罪人でも誰か存在をこの世から消し去ることが嫌だったんだ。心がとても優しかったから、苦しんでいたんだ。あとは話した通りだよ。僕は彼の心を殺して消し去ったんだ。それから、老神様が目がないのは、僕のせいなんだ。

 僕は抜け殻の彼を手放して、彼を欲しがっていたレイショーが彼を手に入れたんだ」

「なんだって?」

 スタルセラティティタンは綺麗なきらきらと煌めく透明な涙を流していた。

「全部話してなかったんだ。僕は善い神になりたかったけど、良い子じゃなかった。さっきも言ったけど、レイショーは飽きたら捨ててしまう。レイショーはある世界にぼろぼろになった彼を飽きて捨てたんだ。僕の友達は心がなかったから、意識もなく神の純粋な力だけでその世界を汚染してしまって、その救済のために老神様が生命に目を与えて汚染を食い止めたんだ。老神様の両目がないと汚染の侵食を食い止められないんだ。だから、二人が必要で」

「もしかして、二人のうちその片割れがマトラン……。全部、繋がっていたのか……」

 ルーネベリは赤い髪を掻きあげた。

「うん。絶対者を創造した罪のためにデハルはビュア・デアに閉じ込められて。僕もーー。老神様は僕らに慈悲をかけてくださったんだ。ビュア・デアにわざと罪を犯した神たちや生命を送って、最も大切なものを犠牲にすればビュア・デアを出られるって。僕にはもう何も大切なものが残っていないから、出られないんだ」

「でも、デハルは出たんだな。姿を捨ててーー」

「そうだよ。僕にはできないことを、彼はしたんだ」

 ぼろぼろとスタルセラティティタンは泣いた。

「泣かないでくれ」と、ルーネベリは剣を床に下ろして、差し伸べられたスタルティティタンの手を握った。スタルセラティティタンは唇を噛んで、涙を堪えた。そして、ルーネベリの手を握り返した。

「ーーありがとう。デハルは剣になった後に色々あってね、もうとっくに罰を受けたんだ。だから、真実の女神の元で心の平和を得たんだ。ーー僕は違う。まだ罰を受けつづけているんだ」

 ルーネベリは仕方ないなと、スタルセラティティタンの涙を手元の服で拭って言った。

「なぁ、泣くなよ。ティティが迎えに行けば良いんじゃないのか?」

「ふぇっーーごほん、えっ?」

 スタルセラティティタンは奇声を発したあと、驚いた顔をした。

「ティティの友人は危険なんだろう。その世界にあったら困るなら、お前が持っていれば良いんじゃないのか。そしたら、老神様とやらの両目は元に戻るし。それに、本当にお前の友人は死んだのか?」

「死んだよ」

「どうやって殺したんだ?」

「僕の力で、声が聞こえなくなるまで剣の中の奥の奥の奥に押し込めてーー」

「それは眠らせただけなんじゃないのか?」

 スタルセラティティタンは手を繋いでいない方の指を唇に置いた。

「その身体は、いや、剣が存在しているなら、まだ心もどこに残っているんじゃないのか?神がどんな構造になっているのかわからないが、世界を汚染するほどの何かをまだ持っているんだろう。その友達が生きていようと、死んでいようと、側にいてやるべきじゃないのか」

「ーーそれができるなら、そうしたい。でも、僕はビュア・デアを出る前に犠牲にできるものを何も持っていない!」









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