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利家が政務に戻り、私は暇を持て余していた。

…まさか、こんな日が来ようとは思わなかった。

儀のあと、貰い受けた小さな刀を取り出す。

…この刀が、契りの証人。

さっきのことを思い出すと、胸のところが温かくなった。


「利家…」

「うわっ!灯!?」

「もう…。お姉ちゃんったら、つれないなぁ。それ、契りの証人でしょ?」


唐突に現れた灯。

そして、刀をジッと見詰める。


「うん。やっぱりそうだ。名前が彫ってある」

「あ、灯…」

「おめでとう、お姉ちゃん。さあて、今日は盛大に祝わないとね!」

「あ…いや…」

「…分かってるよ。私も、お姉ちゃんとお兄ちゃんが言うまで黙ってる」

「うん…」

「でも、私に何の相談もしてくれなかった罰」


そう言って、私を抱き締めて、額を合わせてくる。


「二人の未来が明るいものとなりますように。順風満帆、家庭円満。夫婦喧嘩はほどほどに」

「…うん。ありがとう」

「嫌になったら、お兄ちゃんを張り倒して、私のところに来なよ」

「ふふ、分かってる」


しっかり灯を抱き締めて。

…ありがとう、灯。



暇をしてるならと、灯に部屋に来るよう誘われた。


「ただいま~」

「お帰り」

「何をしてるんだ?」

「ん?ちょっとな」


美希は、灯の覚書を横に置いて、丁寧にそれを書簡に写していた。


「ほぅ。左利きか」

「羨ましいか?」

「いや、別に」

「えへへ。お姉ちゃんは両利きだから」

「へぇ~」

「羨ましいか?」

「うん。羨ましい」

「ふふ、良いだろう」

「うん。良いな。私にも分けてくれ」

「また考えておくよ。それで、何をしてるんだ?」

「私の覚書の整理と、美希の勉強を兼ねて」

「勉強?」

「うん。料理のね。実際に作るのが一番良いんだけど…」

「食材を出来るだけ無駄にしないように…だな」

「ああ。実験の真似事をするのは、もっと腕を磨いてからだ」

「ということは、美希は調理班に入るのか?」

「うーん…そうだな…」


美希は筆を止めて、しばらく考える。


「他にどんな班があるんだ?」

「戦闘班、医務班、伝令班。それぞれにいろんな仕事が割り当てられてるから、班名通りにはいかないんだけどね」

「ふぅん…」

「戦闘班にはお姉ちゃん、医務班には風華、伝令班には望、調理班には私がいるよ」

「ほぅ…」

「あと、今ならどこに入っても暇だよ」

「余計なことを言うな」

「葛葉は?」

「葛葉?葛葉はまだどこにも入ってない」

「そうか…そうだよな…」


葛葉が気になるんだろうか。


「よし…。やっぱり私は調理班に入るよ」

「やった!」

「そうか。じゃあ、暇なときで良いから、登録書を政務室に出しておいてくれ」

「分かった」

「登録書は灯が取ってきてくれるから」

「えぇっ!?私!?」

「何か問題でもあるのか?新人の世話は先輩が見るものだ」

「せ、先輩…。むぅ…。分かったよ…」

「よろしくな。先輩」

「うん」


先輩と言われて、悪い気はしないようだった。

照れくさそうに頬を掻き、少しうつ向いて。


「さて、先輩。ちょっと喉が渇いたから、飲み物を持ってきてくれないか?」

「うん…って、何かおかしくない?」

「おかしいか?」

「おかしくないだろ」

「もう!二人して!」


灯の反応がまた面白くて。

…結局、みんなで厨房へ水を貰いにいった。

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