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「この飛行機械ってさ、たとえば、私が使って空を飛んだりは出来るの?」

「出来るやろうけど、うち用に調整してあるから、かなり難しい思うよ。一気に回転上げて、かなり高出力の状態で安定するようにしてるから」

「ふぅん。柏葉って、術式の力が強いんだね」

「うん、そうらしいね。でも、なかなか制御が利かんでな。なんもなしか、全速力かやねん」

「そういうのは、練習次第でどうにでもなると思うよ。私だって、初めて使ったときは、全然制御出来てなかったもん」

「そうなん?でも、うちらには、そんな時間はないから」

「そっか…」

「せやけど、悪いことだけやないんやで。速度があれば、一撃離脱ゆうて、一回強烈な攻撃して、そのまま戦場を離れて、また反転して一撃を加えに行くって戦術が効果的に出来るから」

「ふぅん」

「まあ、そんときは、空爆用推進砲ゆうて、一発で広範囲に攻撃出来る武器使うねんけど」

「へぇ…」

「うちは、まだ使たことないねんけどな。でも、夜間巡回組でも、一人とか二人とか、少数で哨戒することが多なるから、似たような爆撃推進砲とか持っていったりして。普通の火器では間に合わんこともあるし」

「ふぅん…。クウバクとかバクゲキとか、よく分からないけど…」

「分からんでええと思うよ」

「そっか…」

「あぁ、そういえば、こうな、夜間巡回のときに、探知範囲広げたら、遠くの伝通とか聞こえたりするんやで」

「へぇ、探知って、そんなことも出来るんだ」

「まあ、防護眼鏡に組み込んだ機械で増幅してるからやねんけどな。波長さえ合ったら、いろいろ聞けるよ」

「ふぅん」

「夜間巡回の訓練してるとき、教官にその裏技教えてもろてな。一人で哨戒してたら、すごい寂しなるからって」

「いいね、なんかそういうの」

「せやろ。ほんでな、そんとき初めて遠方の伝通を受信したとき、綺麗な曲が流れててん。なんや、海の向こうの国から届いてたみたい」

「えっ、すごい。海の向こうまで聞こえるんだ」

「よっぽどええ条件揃わな無理らしいけどな。知らん言葉やったんやけど、教官に聞いたら、生き別れた娘に、両親が捧げた曲やったらしいわ」

「えぇ、外国の言葉が分かるんだ。すごいね、その人」

「教官は、もともと外国出身の人やから。たまたまやってんけど、祖国の放送を受信出来たって喜んでたわ」

「嬉しいだろうね、そりゃ」

「うん」

「…ところで、そのデンツウというのは、どういうものなのだ?」

「リューナが、伝通って何なのかって聞いてるぞ」

「あれ、知らない?波動の術式に音を乗せて、送信機で発信するんだ。そしたら、受信機があれば、その波動を読み取って、音を聞くことが出来るって仕組み。術式自体、日ノ本ではあんまり知られてないからあれだけど、外国のどこかでそういう発明がされて、一般大衆向けの放送も少しずつ始まってるってのは聞いたことあるよ」

「ほぅ…。波動に、そんな使い道があったとは…」

「うちの時間では、そういうのを伝通放送ゆうて、風華お姉ちゃんも今ゆうてたけど、一般大衆向けに番組作ったりしてんねん。今は戦局放送もしてるけど、普段はいろんな番組やってて。たとえば、番組宛に手紙を募集したりして、曲掛けてもろたり、その手紙読んでもろたり」

「なるほど…。それは目覚ましい発展だな…。大衆娯楽の発展は、文化の発展にも繋がる。なかなか興味深い」

「あはは。まあ、そこまで考えてる人は少ないやろうけどな。でも、みんな、伝通放送を楽しみにしてるのは確かやで」

「やっぱり、一人一台くらいにはなってるの?」

「一台ゆうたら大袈裟やけどね。一人一個持ってるゆうんも、珍しないで。いろんな波長で放送してるから、聞きたい放送もそれぞれやし」

「へぇ、一個二個って数えられるくらい、小型化してるんだ。私が聞いたのは、洗濯桶みたいに大きいって話だったけど」

「えぇ、余計な飾り付けてるんちゃうん?自分で作れるくらい、簡単な構造やで」

「えっ、そうなの?すごい!今度教えてよ!」

「ええけど、今はなんも放送してないんと違うん?」

「そうだけど…。でも、ほら、外国のが聞こえるかもしれないじゃない」

「確かに、外国では、日ノ本よりずっと前から、本格的な伝通放送してたらしいけど…。でも、聞こえるんはホンマ稀やと思うで?」

「いいのいいの。ね、約束だよ」

「うん。まあ、分かった」

「えへへ、楽しみだね、姉ちゃん!」

「いや、オレは作らないけどな…」

「えぇー、つまんないの。あ、ところでさ、その放送で流れてた曲って、どんな曲だったの?三味線とか?」

「外国に三味線はないんちゃうんかな」

「そうかな?」

「教官が言うには、ピアノっていう楽器やねんて」

「ピアノ?どんな楽器なの?」

「黒と白の鍵盤がようけある楽器で、両手で弾くねんて」

「え?琴みたいなかんじ?」

「そういうんとはちゃうみたいやな。んー、実際に見たわけちゃうから、上手く説明出来ん」

「そっか…」

「でも、綺麗な音やったよ。遠くの音やから、聞こえにくいところもあったけど」

「いいなぁ。私も聞きたいなぁ」

「根気よう待ったら、聞けるかもしれんな」

「やっぱり、早く受信機を作って、常駐させとかないと」

「気合満々やね…」

「当たり前だよ。今だって、飛んできてるかもしれないんだよ?」

「うーん…。夜の方がええんちゃうかな」

「えっ、なんで?」

「うちが聞いたんも夜やったし」

「そりゃ、夜間巡回の訓練中だったんだから」

「まあ、せやねんけど…」

「とにかく!早く作ろう」

「お前はそれしか頭にないのか…」



とは言っても、伝通には私も興味があるけどな。

風華が受信機を作ったら、見せてもらおうかな。

…いや、それだったら、私も作った方がいいのかもしれないけど。

また考えておくか…。

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