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脱衣ジャンケンなるものは、ナナヤが意外と子供趣味な下着姿を御披露目して、ちょっと半泣きになったところで中止になった。

まあ、少し大人気なかったかもしれない。


「なんであんなに勝てるのよ…。おかしいじゃない…」

「だから、お前が出そうとしている手を見て、勝てる手を出していただけだ」

「出したのは同時だったじゃない!それなのに、なんで…」

「師匠は、動体視力が物凄いんだと思いますよ」

「ふん。変人の領域だね、完全に…」

「お前も、訓練を積めば出来るようになる」

「いや、絶対無理だから…」

「それは私も思います。いくら動体視力が良くても、ジャンケンの手まで見える人なんて、師匠だけですよ」

「そんなことないだろ?」

「あるよ…」


そうなんだろうか。

まあ、何にせよ、私にジャンケンを挑んだナナヤが悪かったんだな。

うん、そうしておこう。


「それで、秋華ちゃん。リョウゼン書店はどの辺にあるの?」

「あっ、通り過ぎてます…」

「えぇ…。頼むよ、秋華…」

「す、すみません…。お喋りが楽しかったもので、つい…」

「戻ろ戻ろ」

「すみません…」

「でも、どんな本があるのかな」

「きっと、すごい本があるに違いありません!」

「まあ、望が気に入るような本があるといいんだけどねぇ」

「そ、そうでしたね…。望は、どんな本が好きなんでしょうか?」

「秋華、知らないの?」

「えっ?は、はぁ。あの、よくは知らないです…」

「そっかぁ。秋華も知らないかぁ」

「ナナヤも知らないのですか?」

「うーん、知らないね」

「じゃあ、誰も知らないんじゃ…」

「あ、紅葉さんなら何か知ってるかも」

「いや、知らないな」

「えぇ…」

「まあ、何か読みごたえのある本を買ってやればいいだろ。あいつはたぶん、そういうので喜んでくれると思うぞ」

「読みごたえのある本ねぇ。辞書とか?」

「あの、辞書は読むための本ではないと思いますよ…」

「そうなの?」

「…紅葉。リョウゼン書店はここじゃないか?」

「ん?おい、三人とも」

「どうしたの?」

「あっ、ここですよっ。リョウゼン書店ですっ」

「えっ?へぇ、こんなところにあったんだ」

「私、もっと、お化け屋敷みたいな本屋さんだと思ってました…」

「どんな本屋さんよ…」

「とにかく、中に入ろう」


三人娘がやいのやいのと騒いでるうちに、私は先に書店の中に入る。

中は少し薄暗く、エスカの言っていたお化け屋敷というのがしっくりくると思った。


「わぁ、本がいっぱいありますっ!」

「そうだねぇ。この中から一冊を見つけ出すのは難しいかもしれないね」

「とりあえず、手分けして探してみましょう。自分が一番いいと思った本を持ち寄って、その中から決めるんです」

「あ、いいね、それ。そうしよう」

「あの、私は、自分の見たい本もあるので…」

「いいよいいよ。時間はあるんだし、ゆっくり見ようよ」

「あ、ありがとうございますっ」

「じゃあ、決まったら、会計の前らへんに集まることにしようよ」

「そうですね。会計がどこにあるのかは分からないですが…」

「ほら、上を見てみなよ。会計の看板が下がってるでしょ。たぶん、あの看板の下らへんにあるんだと思うよ」

「あっ、本当ですっ。あんなところに看板…の上の先っちょしか見えませんが…」

「本棚に隠れてなかなか見えないのに、よく見つけましたね、ナナヤさん…」

「まあね。立ってる位置がよかったんだよ。じゃあ、解散しよっか」

「はい」


そして、三人は、それぞれ別々の方向へ散らばっていって。

まあ、私もぼちぼち動くとするか。


「あっ、やばっ!」

「何を慌ててるんだよ、レオナ。いるのはずっと分かってたぞ」

「うっ…。間の悪いときに…」

「堂々としてればいいじゃないか。なんでコソコソするんだ」

「だって…」

「まあ、望にいいものを考えると、みんな答えが似通ってくるということだな」

「蛇は黙っとき」

「リューナに八つ当たりをするな」

「してへんし!」

「それで、お前が見つけたのは何の本なんだ?」

「そんなん簡単に教えるわけないやろ!」

「いや、意味が分からないから…。別に、尋問してるわけじゃないんだからな…」

「姉ちゃんに真似されても困るし」

「言わなかったら、被る可能性もあるだろ?」

「こんだけ本あんのに、被るわけないやん」

「じゃあ、オレが探そうとしてた本を言おうか?気象学の、入門書あたりの難易度の本を探そうと思っていた」

「な、なんで被んねん!」

「ほら、言った通りだ」

「あっ、せや。どっかで見たんやろ、どうせ」

「どこで見るんだよ…。お前、本も何も持ってないじゃないか」

「うっ…。でも、うちはもうそれに決めたから、姉ちゃんは別のんにしてや」

「はいはい、分かったよ。いちおう、あいつらにも言っておくから」

「うん…」

「それで、本は自分の金で買ったのか?」

「そら、自分のお金やないと意味ないやん」

「本なんて高いだろ。ちゃんと足りたのか?」

「…正直、ちょっと足りんかった。だから、リュカに小遣いの貰お思て」

「…オレでよければ、出しておいてやるぞ。またいつでも返してくれたらいいから」

「ホンマ?ほんなら、そうしてもらおかな。兄ちゃんに小遣いせびるんもどうか思てて」

「まったく…。リュカも大変だな…」

「姉ちゃん、ありがとうな」

「いや。でも、いつでもいいけど、ちゃんと返せよ」

「分かってる分かってる。さて、そうと決まればこっち!」


と、ナナヤに手を引っ張られて。

会計に向かうんだろう。

…途中で、秋華が熱心に何かの指南書らしきものを立ち読みしてるのが目に入った。

まあ、この珍しい本が揃う書店で、いろいろ見て回るといいさ。

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