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「澪、一緒に遊ぼ」

「えっ。いや、私はまだ修行があるから…」

「うぅ…」

「また今度な」

「今がいい!」

「えぇ…。困ったな…」

「りる。澪を困らせるな。暇なんだったら、寺子屋にでも言ってきたらどうだ」

「今日はそんな気分じゃない」

「お前、どこでそんな言葉を覚えてくるんだ…」

「澪と遊びたい!」

「我儘な子は嫌われるぞ」

「うぅーっ!」


りるは、澪の服の裾を引っ張って。

まったく、なんでそんなに澪と遊びたいんだろうかな…。

まあ、そういう気分の日もあるかもしれないけど…。


「大和…」

「紅葉にも付き合ってもらってるんだ。今日はやめるわけにもいくまい」

「そうだよな…」

「ふむ。しかし、そうだな…。りるも妖術の練習をしてみてはどうだ。澪と一緒に遊べて、修行も出来る。一石二鳥だろう」

「いや、妖術の修行は遊びじゃないだろ…」

「何事も、遊ぶように楽しくやるくらいがちょうどいいんだ。そちらの方が上達も早いしな」

「本当かな…」

「どうだ。妖術を扱うことに興味はあるか?」

「何それー?」

「不思議な力のことだ。たとえば、何もないところから火を起こしたり、風を起こしたり」

「ふぅん」

「澪は、今はそれの勉強をしている。どうしても澪と遊びたいとなると、妖術の修行を一緒にやることになるが」

「じゃあ、やってみる」

「そうか。まあ、何事も挑戦だからな」

「うん!」

「いいのかな、ホントに…」

「人間は、どちらかと言えば、龍の術式や、人間自身が作った呪術などの方が合ってるのだがな。妖術や法術も親戚のようなものだ。修行を積めば、扱えないこともないだろう。それに、適性もあるしな。りるは、妖術の適性が高いかもしれない」

「断定じゃないんだ…」

「私には、人間の術適性を見抜く力はあまりないからな。やってみないことには分からない」

「うーん…」

「どのみち、このまま纏わり付かれていると何も出来ないのだから、試すだけ試してみてもよいのではないか?」

「それはそうだけど…」

「よかったな、りる。妖術なんて、オレだって使えない力だぞ」

「澪の力を借りてなら、使うことは出来るがな」

「砂と氷だろ…。どこで使うんだよ…」

「さあな」

「………」

「まあ、用途など、その時々で考えればよい。修行に戻るぞ」

「うん」


大和と澪がまた修行を始める体勢に戻ったので、とりあえず、りるは澪の隣に座らせておく。

それを確認してから、大和はゆっくりと話し始めて。


「りるも加わったことだし、もう一度、基礎から確認しておく。妖術や術式など、術という括りで表されるものは、精神の力を物理的な力に変えているんだ。人間の場合、超能力などと言って胡散臭い手品と混同されることも多いが」

「ふぅん」

「純粋な超能力者…つまり、術を扱う者、術者もいるのだろうが、そういった理由で、評判がよくないのも事実だろう」

「…そういう話は、今いるのか?」

「人間の前では、おいそれと使うものではないと言っているのだ。特に、見せびらかすようなことは絶対にするな。ただ信用を失うだけだからな」

「はぁい」

「そんなことくらい、分かってるよ…」

「澪。心構えや基礎というのは、何回確認しても損はない。逆に、そういったことを疎かにすれば、痛い目を見たり、足下を掬われたりすることになる。分かっているからと侮って、そういったことになるのはお前なのだぞ」

「うぅ…。分かったよ…」

「それならいい。では、続きだが…」

「あ、風華ちゃんの言った通りでしたぁ」

「む?フィルィか。すまないが、今は取り込み中でな」

「そうなんですか?紅葉さんもダメですか?」

「今日一日は、こいつらの手伝いをすることになっててな」

「そうですか。まあ、それじゃあ、ぼくがここにいるのはダメですか?」

「それは構わない。なんなら、お前も妖術の修行をしてみるか」

「いえ。ぼくはもう、草平さんにいろいろ教わっていますので」

「そうか。しかし、同じ事柄でも多角的に見るというのは大切なことだぞ。強制はしないが、聞くだけ聞いておくことを、私は薦める」

「んー。それもそうかもしれませんね。じゃあ、ちょっと聞くだけ聞いておきます」

「ああ」

「大和、早く!」

「分かっている。そう急かすな」

「んー…」

「それで、どこまで話したかな」

「胡散臭い手品と間違えられる、というところだったと思う」

「あぁ、そうか。それで続きだが、一見すると分からないものも多いが、妖術は大変危険な代物だ。扱いには充分気を付けるように。危険な使い方をしていると分かれば、妖術を使えなくなるように縛るしかないのでな。そんなことにならないようにしてくれ」

「はぁい」

「…まあ、大まかな注意事項としては、そんなところだな。この心構えの下に使っていれば、何も縛られるものではない。よく心に留めておけ」

「んー」

「では、早速、基礎から始めてみようか。最初は、気を集中させるところからだ」

「気?」

「術を使うために必要な精神の力だ。とりあえず、目を瞑って、気持ちを落ち着かせるところからやってみよう」

「どうやって?」

「私は、大切なのは呼吸法だと思っている。深呼吸をするように、ゆっくり、空気を肺に溜めるんだ。それから、ゆっくりと吐き出す。自分の心音が聞こえるくらいになれば完璧だが、今はそこまでやる必要はない」

「分かった」

「では、始め」


大和が号令を掛けると、澪とフィルィはすぐに瞑想に入って。

それを見てから、りるも真似るようにして瞑想に入る。

…私もやってみようかな。

これで一緒に練習して、澪の力を使わずに妖術を使えるようになってしまったら、澪の立つ瀬がないかもしれないけど。

まあ、それはそれか。

とりあえず、目を瞑った。

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