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りるとナディアを連れ立って、昼ごはんへ。

銀次も一緒についてきたが、千秋はもう少し縫っているらしい。


「ナディアは本当によく食べるな」

「ああ」

「どうしたノ?」

「いや。まあ、しっかり食べろよってことだよ」

「うん」

「りる、溢してるぞ」

「んー」

「しかし、隊長。また連れてきたんですか?」

「オレが連れてきてるわけじゃないぞ」

「調理班としては嬉しいですけどね。美味しく食べてくれる子が増えるってだけでも」

「そうか」

「たくさん食べてくれた方が、作り甲斐もありますし」

「そうだろうな」

「でも、大変だろ?」

「大変ですが、それ以上に嬉しいですからね」

「ふぅん…」

「銀次さんも、数学のお勉強は大変でしょ?」

「うーん…。まあ、そうだな」

「でも、今もやめずにずっと頑張ってる。大変なこと以上に、楽しいことがあるんじゃないですか?問題が解けて嬉しい、とか」

「楽しい…。そうだな。楽しいな、確かに」

「そういうことですよ。どれだけ大変だとしても、それが楽しければ苦にはならない。人間ってそういう生物だと思うんです」

「ふぅん。そうなんだ」


銀次は感心したように頷くと、パスタとかいう西洋の麺料理を器用に箸に巻き付けて。

そして、啜ることもなく、そのまま巻き付けたパスタを食べる。

…そうやって食べるのか?

よく分からないが。

とりあえず、銀次は感心することが多いらしい。

こうやって話してると、感嘆の声をよく聞くことが出来る。


「美味いな、このパスタ」

「材料がなかなか揃わなくて。似たようなものを寄せ集めてみたのですが」

「美味いよ。寄せ集めとは思えない」

「そうですか。ありがとうございます」

「な、紅葉もそう思うだろ?」

「ん?あぁ、まあな」

「毎日食べに来たいくらいだよ」

「毎日は、パスタは用意してませんね…。すみませんが…」

「そうなのか?残念だな」

「はい。申し訳ないです」

「でも、また作るときは、俺も呼んでくれよ」

「ふふふ。そうさせていただきます」

「うん」


そして、またクルクルと巻いて食べる。

本当に器用だな。

私には上手く出来ない。


「銀次さんは、パスタは初めてですか?」

「んー?いや、一回食べたことがある。そのときは、フオークかホークかよく分からないものを使って食べたんだけど」

「なるほど。だから、そうやって巻き付けて食べる方法を知っていたんですね」

「うん、まあ」

「そうやって食べるのが正しいのか?」

「外国では、音を立てて食事しちゃいけないんだってさ。行儀が悪いらしい」

「ふぅん…。蕎麦とかはどうやって食べるんだ」

「さあ?食べないんじゃないのか?啜らないとダメだしな、蕎麦は」

「まあ、銀次さんのようにして食べるのかもしれませんね」

「可能性はあるな」

「しかし、外国の方は箸を上手く使えないらしいですよ。どう使うのか分からないらしくて」

「オレたちだって、小さい頃から練習してなければ、箸の使い方なんて分からないだろ。知らないやつにとっちゃ、ただの二本の棒だ」

「そうなんですけどね」

「だけどさ、それを言うんだったら、ナディアって箸の使い方が上手いよな。外国人っぽいのに」

「どこかで練習したんじゃないか?」

「それはそうかもしれないけど。どこでなのかな」

「さあな」

「ナディアのこと、話してるノ?」

「ん?まあな。どこで、箸の使い方を習ったんだ?」

「オハシは、上手に使えるヨ?」

「そうだな。確かに上手いな」

「銀次よりもな」

「うっ…。矯正しようと思うんだけど、なかなか上手くいかないんだよ…」

「銀次さんは、箸の持ち方の講義を受けた方がいいかもしれませんねぇ」

「酷いなぁ…」

「ふふふ」

「りる、美味しいネ」

「んー?なんか言った?」

「美味しいネ」

「うん、美味しい。おかわり!」

「はいはい。ちょっと待っててね」

「うん」

「ナディアちゃんはいいかな」

「じゃあ、ちょっとだけ貰おうかナ」

「はい、分かりました」


又吉は二人の皿を持って、鍋の方に行く。

調理班が麺料理を作るときは、いつ来るか分からない相手に対し、いくつかの鍋を使って時間差で茹でて、常にちょうどいいかんじの茹で具合になるようにしているらしい。

少し茹ですぎたり、伸びてしまった分は、若い連中の水増しに使うと言っていたが。

…銀次のはどうなんだろうな。

私のよりも、ずっと量は多いかんじで出てきたけど。

まあ、本人が美味しいと言って食べてるなら、何も言うまい。


「はい。一番美味しい茹で時間のものだよ。アルデンテと言うそうだけど」

「アンデルセン?」

「アルデンテ」

「アンデルセンって何なんだ、紅葉」

「オレに聞くなよ…。知らないし…。そもそも、そんな言葉があるのか?」

「さあ?」

「まったく…」

「アンデルセンだって、ナディア」

「アルデンテだヨ」

「アルデンデン?」

「アルデンテ」

「二人とも。喋ってる間に、アルデンテが過ぎてしまうぞ。先に食べてしまえ」

「うん」


頷くと、早速食べ始めて。

そうなれば、りるにとっては、もはやアルデンテでもアンデルセンでもアルデンデンでも、どうでもいいらしかった。

夢中になって食べている。


「まあ、アルデンテはいいのですが、パスタはどうも、ナポリタンというのが一番人気みたいですね。調理班調べによると」

「ふぅん。ナポリタン?これは?」

「これは、有り合わせのタラコを使ったもので、まあ…タラコパスタといったところですね。ナポリタンとは別物です」

「ふぅん。ナポリタンも食べてみたいな」

「また作りますね」

「うん」


銀次は、前に食べたときは何を食べたんだろうな。

たぶん、タラコパスタやナポリタンではなかったんだろうが。

…銀次の真似をして食べようとするんだけど、本当にどうも上手くいかない。

だからどうというわけではないし、外国人じゃないんだから蕎麦のように食べても問題はないんだけど、なんとなく悔しいな。

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