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「お母さん」

「なんだ、戻ってきたのか?」

「うん。疲れちゃった」

「そうか。ほら、こっちに来い」

「うん!」


りるはパタパタと走ってくると、私の膝の上に乗って。

それから、ニコニコと笑ってみせる。


「今日ね、りるね、一回も"当たり"にならなかったよ!」

「ほぅ、そうなのか。頑張ったな」

「えへへ」

「何言ってんの、いろはねぇ。ずっと見てたじゃん」

「桜、五月蝿い!」

「いたっ!なんで叩くのさ!」

「桜が余計なこと言うから」

「余計なことって何さ」

「ふん」

「ねぇ、お母さん。なんで、桜とユカラお姉ちゃん、喧嘩してるの?」

「さあな」

「りる!なんでボクだけ呼び捨てなのさ!」

「……?桜は桜でしょ?」

「なんで、ユカラはお姉ちゃん付けなのに、ボクは呼び捨てなのさ!」

「えっ…?だって…」

「小さな子供のすることに目くじらを立ててどうするんだよ。お前の度量が知れるな」

「だって、いろはねぇ!悔しくない?ユカラはボクより歳下なのにお姉ちゃんって言われて、ボクは呼び捨てなんだよ?」

「相手をしてもらえるだけで充分だろ。どうでもいい相手なら名前も呼ばれないし」

「でも…」

「名前の呼び方ひとつでギャーギャー喚き立てるのは、かなり格好悪いぞ。体面を気にするなら、中身が伴うようにしろ。中身が伴わない、お姉ちゃんと言ってもらうに相応しくない間は、ただの五月蝿い子供だ」

「うぅ…。じゃあさ、ユカラは中身が伴ってるの?」

「そういうのが、中身が伴っていないと言うんだ。他人がどうとかじゃなくて、自分がどうなのか、だ。それが分からないうちは、いつまで経っても呼び捨てのままだぞ」

「うぅ…」

「お母さん、桜をあんまり怒らないで…」

「…そうだな。まあ、こいつが本当に分かってたら、の話だが」

「………」


桜は伏し目がちになって、遠くの方を見ていた。

今言ったことを、ちゃんと考えてくれていたらいいんだけど。

まあ、桜ももう子供じゃない。

分かってくれているだろう。


「お母さん」

「ん?」

「響と光はどうしたの?」

「喧嘩してるんだよ。朝からずっと」

「ふぅん…。仲直りしないの?」

「さあな。ずっとあの調子だ。…それで、サンは何をしてるんだ」

「えっ?」


部屋の方を見ると、サンがちょうど光の顔を覗き込んでいるところだった。

光は目を合わせないように、顔を背けるけど。

それからサンは、次に響のところに走っていって。

また同じように、顔を覗き込む。

響はサンの方を少し見て、威嚇するように唸って。

…それが面白いのか、何回も同じことを繰り返していた。


「何してるのかな」

「…さあな」

「サン、サン!」

「はぁい」


りるが呼ぶと、すぐに駆けつけてきた。

そして、真っ直ぐにユカラに抱きついて。


「ね、ね、ユカラ!三編み!」

「えっ?あ、うん。でも、用事があるのはあたしじゃないでしょ?」

「…何、りる?」

「何してたの?」

「え?うーん…響と光の顔を見てたの」

「ふぅん…」

「どんな顔してた、あいつら?」

「なんかね、光はジメジメした顔で、響はガラガラした顔だったよ!」

「そうか」

「ガラガラ…?どんな顔…?」

「ガラガラした顔だよ」

「ガラガラした顔だな」

「ふぅん…。分かんないけど…」

「ユカラ!三編み!」

「あぁ…。はいはい…」


サンは懐から髪紐を取り出して、ユカラに渡す。

それを受け取ると、三編みを始めて。

…サン、三編みが好きなんだな。

この前にカシュラに行ったときからだろうか。

まあ、いつからだろうが、別にどうでもいいんだけど。


「りるも三編みにしてみる?」

「んー?」

「まあ、充分な長さではあるな」

「三編み?」

「そうそう。あたしとか、サンが今やってるみたいにさ」

「んー…」

「りるは、まとめて上げた方がいいかもしれないな。三編みより」

「あぁ、そっか。結構活発に動き回るもんね」

「三編みでもいいんだけどな。髪紐は…」

「あたしのを使ったらいいよ。予備持ってるし」

「そうか」

「ちょっと待ってね…。はい、これ」

「ああ」


ユカラから髪紐を受け取り、りるの髪をまとめて。

ちょっと上の方がいいかな。

位置をだいたい決めて、髪紐を結わえる。


「ほら、これでいいか?」

「首の後ろがスースーする~」

「…髪をまとめたからな」

「あ、いいね、それ。姉ちゃん、結わえるの上手いし」

「結わえるのに上手とか下手とかあるのか?」

「あるよ~。あたしなんて、姉ちゃんに比べたら全然だし」

「お前も上手いと思うけど」

「随分練習したしね。自分の髪で。昔は、それくらいしかすることなかったし…」

「………」

「サンも、練習したら、ユカラみたいに上手くなれるかな」

「えっ?あ、うん。そうだね。きっと上手くなるよ」

「じゃあ、練習する!」

「そうだね。でも、練習する相手が…」

「お母さん!」

「え、えぇ?姉ちゃん?」

「オレは別に構わないけど」

「そ、そう?じゃあ、あとで練習させてもらおっか」

「うん!」

「ごめんね、姉ちゃん…」

「なんで謝るんだよ」

「だって、せっかく綺麗な髪なのにさ。傷んじゃうかもしれないよ?」

「オレの髪が傷むくらい何だって言うんだよ。サンがやりたいって言うんなら、喜んでいくらでも練習させてやるよ」

「…うん。ありがと」

「ああ」


サンが上手くなったら、また私も三編みにしてもらおうかな。

まあ、もうすぐ練習で三編みにされるんだけど。

それはそれでいい。

早く上達してくれることを願うばかりだな。

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