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「ナナヤ、おかしくない?」

「そうか?」

「おかしいよ、たぶん」

「ふぅん…」

「何かあったのかな」

「さあな。直接聞いてみたらどうだ」

「聞いても答えてくれるかどうか…」

「なら、聞くな」

「姉ちゃんなら何か知ってるんじゃないの?」

「いや、知らないな」

「ふぅん?まあ、姉ちゃんって嘘も上手いからね」

「そういう風に思われてるのか」

「だってさ、姉ちゃんって何考えてるか分からないもん」

「そうか?オレは分かるけど」

「自分のことだもん。そりゃ分かるでしょ」

「自分のことだって、分からないことはたくさんあるぞ?」

「そういう話じゃないでしょ。ねぇ、何なの?ナナヤに恋人が出来たとか?」

「そうだな」

「もう…。教えてくれたっていいでしょ…」

「ふん」


まあ、たまには都合のいいこともある。

こういう風に。

これでナナヤの恋人説は、ある程度抑えられる…かもしれない。


「それでさあ、ツカサが今朝、変な声が聞こえるとか言って」

「変な声?ていうか、今朝って何だよ」

「まだ夜も明けてないのにさ、私を起こして。なんか知らないけど、声が聞こえるって」

「どんな?」

「朝から仕事がどうとか。疲れてるんじゃないかって言っておいたけど」

「朝から仕事、頑張ってくれ。そんなところだろ、どうせ」

「あー、そんなかんじ。…なんで分かるの?」

「母さんだと思うぞ、たぶん。ツカサも、声だけ聞こえるんだな」

「えぇ…。何それ…。怖いんだけど…」

「怖くないだろ。オレの母さんだ」

「声だけ聞こえるなんて怖いじゃん…」

「お前は聞こえてないみたいだし、いいじゃないか」

「余計怖いよ…。幽霊が知らない間に近くにいるかもしれないなんて…」

「お前は臆病なんだな」

「いや、誰だって怖いでしょ…」

「オレは怖くないけどな」

「姉ちゃんは見えるし話せるし、普通の人と話すのと変わらないでしょ…」

「そうだな」

「はぁ…」


風華はまたため息をついて。

…見えても大変なことはあるけどな。

この前は、本当に大変だった。


「それで、ツカサはどうしたんだ。仕事に行ったのか?」

「行ったんじゃない?私はすぐに寝たから知らないけど」

「ふぅん」

「たまには休んだらって言ったんだけど、働けるうちに働かないとって。過労で倒れないか心配だけどさ、まだ大丈夫そうだったし」

「止めておけよ…。倒れてからでは遅いんだぞ?」

「分かってるよ。でも、ああいうのは無理矢理休ませてもダメだし。一回倒れるくらいの方がいいんだよ。そしたら、すぐに分かるでしょ?」

「薬師の言うことじゃないと思うけどな」

「いいのいいの、そんな細かいこと。まあ、そのうち休養を取らせるから。市場の人たちも分かってるでしょ、ツカサが働きすぎってこと。朝から晩までさ。お店を構えてる人だって、一週間に一回は休んでるのに」

「そうだな」

「でも、一所懸命なのは好感が持てるかな。仕事ばかりに一所懸命なら嫌だけど」

「ふぅん。そんなものか?」

「姉ちゃんは知らないけどさ。少なくとも、私はそうだよ」

「そうか」

「姉ちゃんも兄ちゃんも、サバサバしてるもんね?二人で一緒にいてるところなんて、ほとんど見たことないし」

「お前に見られるほど間抜けじゃないしな」

「むっ。どういう意味よ、それ」

「まあ、お前の知らないうちに会ってるのかもしれないなということだ」

「えぇ~、会ってるの?」

「さあな」

「だって、一回だって一緒に寝たこともないんでしょ?」

「なっ!」

「夫婦なんだからさぁ、寝室くらい同じでもいいんじゃないの?」

「い、犬千代の政務の邪魔になるだろうし…」

「政務のせいで夫婦関係が崩れるなら、政務なんてやらなければいいんだよ!」

「そうもいかないだろ、風華」

「兄ちゃん!」

「お前だろ?兄ちゃんを王に仕立て上げたのは。最初は不本意ではあったけど、結局は誰かがやらないといけないことなんだ。今はもう、少しでもこの国をよく出来るなら、なんだってする覚悟は出来てる」

「そういうことじゃないよ。夫婦なんだから、寝室くらい一緒にしたらどうなのって話」

「でも、紅葉の部屋はもういっぱいいっぱいだろ?」

「なんで、兄ちゃんがこっちに来るのよ。姉ちゃんがそっちに行くの!」

「えっ?でも、政務室も寝るところはないけど」

「じゃあ、兄ちゃんはどこで寝てるのよ」

「物置。政務室の中は、まだまだ書簡だらけで全然片付かないし。それに、ちょうどいい大きさなんだ、あそこ」

「はぁ…。これだから、兄ちゃんは…」

「まあ、紅葉と一緒に寝られるときは、まだまだ先みたいだな、残念ながら」

「はぁ…」


風華は、何度もため息をついて。

そんな風華も気にせずに、利家はまた、笑いながら物干し場に向かう。


「ホントに…。姉ちゃんは、子供が欲しいとか思ったことないの?」

「えぇ…。話が飛躍しすぎだろ…」

「してない!私、姉ちゃんの子供を取り上げたいの!」

「そうか…。まあ、気長に待っててくれ…」

「気長にって、いつよ。涼さん、もう割とすぐだよ?」

「涼は関係ないだろ…」

「あるよ!」

「そうか…」


なんで、私の子供の話になるんだ…。

しかも、引き合いに出てきたのが涼って…。

とにかく、さっさとこの話題から離れたいものだけど…。

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