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「ねぇ、そのお豆腐、どうするの?」

「ん?まあ、ちょっとな」


豆腐を適当に切り分けて、果物を乗せる。


「おい、蜂蜜あるか?」

「はい。これですね」

「ありがとう」


これを掛ければ…


「出来上がり」

「おやつ?」

「ああ。三丁で二十四個か…。四個はチビたちにやるとして…」

「あと二十個だね」

「どうするんです?」

「争奪戦だな」

「………」

「はぁ。そうですか…」


おやつを手に入れるのは誰?

昼過ぎの激烈争奪戦、開始だ。



一旦、広間にみんなを集める。


「これより、おやつ争奪戦を始める」

「おやつって何ですか?」

「これだ」


冷奴、杏仁豆腐仕立てを見せる。


「そこでチビたちが食べてるのと同じものだ」


望なんかはもうなかったけど。

舌鼓を打つ四人の姿を見て、唾を飲み込む。


「な、何人が食べられるんですか?」

「二十人」

「二十人…」

「ああ」

「どうすれば獲得出来るんですか?」

「手加減無用の生き残り合戦だ」

「て、手加減無用…」

「参加者にはこの鉢巻をしてもらう」


赤い鉢巻を見せる。


「なんと…」

「何をしてもいいから、相手の鉢巻を取る。そして、最後まで残った二十人がこれを食べられる」

「はいは~い」

「桜」

「ホントに、何してもいいの?」

「常識の範囲内でな。致命傷や重度の怪我を負わせるのはダメだ」

「それは分かってるよ」

「どうかな。それと、何かを破損させた場合、壊したものの責任になるからな」

「はいは~い」

「桜」

「鉢巻を取られた人はどうするの?」

「再度、この広間に集合だ」

「分かった」

「夕飯までに決まらなかった場合、残ってるものでじゃんけんだ」

「結局じゃんけんかよ…」

「なんか文句あるのか」

「いえっ!ありません!」

「はい。じゃあ、参加者は挙手」

「はーい!」


参加者は五十三人。

風華や桜はもちろん、ユカラや利家も参加している。


「鉢巻は、すぐ解けるように蝶々結びでな。じゃあ、常識ある行動を。いくぞ。よーい…」


挙げた手を一気に振り下ろす。


「どん!」


と同時に、飛び上がる。


「あっ!」


やはり、開幕直後を狙ってくるやつがいたか。

でも、それで落ちたやつはいなかったようだ。


「ふふ…さすが隊長…」

「散!」


徒党を組んでるものもいるか。

まあ、それも作戦のうちだな。

さてさて、これからどうなるかな。



とりあえず、自分の部屋に戻り、獲物を取り出す。


「これこれ。やっぱりこれでないと」

「取った!」

「残念だな」


後ろから忍び寄ってきていた桜の攻撃を難なくかわす。


「まだまだ甘いな」

「それはどうかな」

「ん?」


足をついたその場所。

桜が、自分の横に垂れ下がっていた縄を思いっきり引く。


「のわっ!?」

「ふふふ…いろはねぇ、討ち取ったり~」

「くっ…」


足を縄に取られ、逆さ吊りとなる。

こんな単純な罠にかかるとは…。

開始早々、諦めるしかないのか…。


「ってあれ?ちょっと…」

「どうした」

「うーん…」


どうやら、この逆さ吊りは起点となる縄…つまり、桜が引っ張っている縄を持っていないと維持出来ないらしい

必死に結びつけるところを探すが、見つからない。

縄を引っ張りながら手を伸ばしてみるが、これまた届かない。


「むぅ…あぅ…」

「………」

「よっしょ!うぅ…届かない…」

「はぁ…」


いつまでも逆さ吊りになってるのも辛い。

上体を起こし、足の縄を噛み切る。

そして、着地。


「わわっ!」

「まったく…罠に掛けた後のことも考えておけよ…」

「あぅ…」


もはや無抵抗の桜に近付き…頭を軽く叩く。


「はぇ?」

「次はちゃんとやれよ」

「あ…うん…」

「じゃあな。頑張れよ」


そのまま窓から飛び出す。


「あぁっ!なんで出入口から出ないのさ!」

「さっきのは上手かったけど、出入口のはバレバレだからな」

「もう!」


そして、堀に飛び込む。

大きく息を吸い、潜水。

隠し水路へと向かう。

それにしても、ホント、なんであんな単純な罠に引っかかったんだろ…。

焼きが回ってきたのかな…。

うーん…まだ二十歳くらいなのに…。


「目標、認識しました。攻撃します」


えぇっ!?

水中でも声を発してる!?

って、そんなことに感心してる場合じゃない。

素早く近付いてくるユカラをなんとか間一髪でかわし、水路へと逃げ込む。


「目標、喪失。対象捜索機能に移行します」


まずいなぁ…。

あれ、風華を見つけたやつだよな…。

いくら水路が迷路になってても無駄か…。


「検索中…」


ユカラの無機質な声を後ろに聞きながら、最短距離で水路から脱出する。


「はぁ…はぁ…。追いかけて…くるよな…」


間違いなく。

でも…ちょっと息を長くしすぎたみたいだ…。

休憩…。


「はぁ…はぁ…」


小部屋に響く息遣い。

それにしても、ユカラは堀に誰かが来るまで、ずっと待ってたんだろうか…。

そうだとしたら、相当息が長いことになる。

ていうか、今もまだ水路にいるはずだし…。

と、ユカラの気配が足元あたりに来た頃に、相棒を支えにして立ち上がる。

とりあえず、この部屋から出ないと…。


「姉ちゃん発見!」

「ふ、風華…」

「ありゃりゃ?だいぶ弱ってる?ていうか、ビショビショだね。お風呂にでも入ってたの?」

「………」

「ふふふ…まあいいや。私は手加減しないからね!」

「臨むところだ…」

「目標、再認識。攻撃します」

「くっ…」


ユカラ、思ったより速かったな…。

挟み撃ち…。

万事、休す…か。


「痛い…」

「ん…?」

「痛いよ…」

「ユ、ユカラ?」

「ゴホッ…!」


咳と共に、大量の吐血をする。


「ユカラ!」

「おい!ユカラ!」

「損傷大。自己修復機能起動。…続行可能。全ての脅威を排除します」

「な、何…?」

「風華!離れろ!」

「あうっ…」


風華を突き飛ばす。

くそっ!

なんだってんだ!


「対象壱に敵意を確認。排除します」

「伏せろ!」

「ひゃぅ!」


放たれた無数の凶器を相棒で弾き飛ばしていく。


「背後からの接近を確認。応戦します」

「はぁっ!」

「損傷軽微」

「くっ!硬い…!紅葉!」

「そら!」


打ち落とした武器の中から薙刀を選び、香具夜に投げる。

それにしても、曲刀、直刀、大剣、ヌンチャク、釘、矢、金槌…。

ホントになんでもありだな…。


「感心してる場合じゃないでしょ!」

「ああ。分かってる!」

「対象壱、参に敵意を確認。排除します」


笛を咥え、特殊な信号を鳴らす。


「隊長!」「参上つかまつりました!」「なんですか…この殺気は…!」

「任務!ユカラの無力化、そして拘束だ!全力でかかれ!半端だと死ぬぞ!」

「はっ!」

「風華を安全な場所へ!」

「大丈夫だ。もうやった」

「犬千代!」

「僕と風華が待機してる。怪我をしたら後退するんだ」

「分かった」

「対象多数。敵意を確認。排除します」

「かかれ!」


昼下がり、楽しいはずの時間がこんなことになってしまうなんて…。

ユカラ…。

本当にお前は何者なんだ…。


次からしばらく血生臭い展開になってしまっています。

その間は殺伐戦国絵巻に…。

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