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「どうだったんだ、墓参りは?」

「ん?別段、変わったことはなかったけど」

「桐華がさっき、やけに喜んでたみたいだが」

「なんだ、知ってるんじゃないか」

「いや。何があったのかは知らない」

「…八色目の白色が当たったんだよ」

「ふぅん…。まあ、そういうこともあるだろうな」

「ああ。でも、珍しい色目だと聞いてたらしいから」

「ふふふ」

「なんだ、気持ち悪いやつだな」

「紅葉と桐華では、かなり反応が違うと思ってな」

「桐華は少しはしゃぎすぎなんだよ」

「私は、紅葉が落ち着きすぎだと思うけどな」

「そんなことない」

「まあ、些末なことだけど」

「じゃあ、そんなことを言うなよ…」

「図星だったのか?」

「違う」

「そうか」


またクスクスと笑う美希。

まったく…。

いったいなんだって言うんだよ…。


「さあ、昼ごはんだ」

「ああ」

「日常、無関心でいると、生きることに疲れてくるぞ」

「お前より、少しだが長く生きてるんだ。そんなことは分かってる」

「ん?私の歳を知ってるのか?」

「風華の少し上といったところだろ?あいつが十六だから、お前は十七か十八くらいだ」

「ふぅん。よく分かったな。私は十七だ。年齢が分かりにくいと、よく言われるんだけど…」

「歳上に見られるのか?」

「そうだ」

「まあ、そうだろうな」

「なんでだ?私はそんなに老けて見えるのか?」

「老けて見えるのとは違うと思うけどな。大人っぽく見えるんだろ。背もそれなりにあるし。喋り方もそんなだし」

「じゃあ、どんな喋り方をすればいいんだよ」

「風華や灯の話し方を真似てみたらどうだ。ああいう話し方なら、まだマシだと思うけど」

「今更、話し方なんて変えられないよ…」

「なんだ、どっちなんだよ…」

「紅葉だってそうだろ?その話し方をやめろと言われてやめられるのか?」

「オレは、やめろと言われてもやめないよ」

「…ずるいぞ、そんな答え」

「何言ってるんだよ。オレは、別に何歳に見られようとも構わないからな」

「むぅ…」


美希は私の隣に座ると、自分の昼ごはんを食べ始める。

ため息をついたりして、かなり不機嫌なようだ。

と、灯が厨房に入ってきて。


「ねぇ、美希」

「なんだ」

「わっ、何怒ってるの?」

「怒ってない」

「嘘だぁ」

「怒ってない!」


思いっきり机を叩くものだから、美希のご飯茶碗がこけた。

灯はニコニコしながら、その茶碗をちゃんと美希の手元に置いて。


「それで、どうしたんだ、灯」

「あ、うん。今日の夕飯は洋風にしようと思って」

「洋風?西洋の料理なんて知ってるのか?」

「まあ、うん。この前、風華が西洋料理の本を持って帰ってきてから、ちょっといろいろ探してたんだ。それで、さっきいいものが届いて」

「いいもの?」

「うん。これ」


そう言って、手に持ってた本を見せる。

青い表紙に金色の文字らしき模様が入っているが、何なのかはよく分からない。


「料理の基礎って書いてあるんだって。舶来の本だよ」

「基礎?基礎なのか?」

「うん。西洋の料理のことなんて全然知らないし。でもね、この本はちゃんとこの国の言葉で書いてあるんだよ」

「なんでだ?」

「この辺は全然だけど、南の沿岸地域では結構外国との交流も多いんだって。それで、西洋の本がいろいろと翻訳されてるらしいよ。この本も、そのひとつ」

「ふぅん…」

「材料がいろいろと足りないから、美希に買い出しを手伝ってもらおうと思ったんだけど、なんか機嫌悪いみたいだしダメだね」

「そうだな。残念だったな」

「…なんで灯は、そんな話し方で、背も低くて、女の子っぽくて、可愛いんだよ」

「え、えっ?」

「さっき、美希が歳上に見られるって話をしてたんだ。それで、オレが背丈やら話し方やらを挙げたときに、灯の名前も出たんだ」

「えぇ…」

「はぁ…。私も歳相応か歳下に見られたいよ…」

「なんか、かなり重症っぽいね」

「ぽいじゃなくて、重症なんだ」

「ふぅん…」


美希はまたため息をついた。

…八色目の話をしてたあたりまでは、ニコニコしてたのにな。

まるで山の天気だ。

何か気になることでもあったんだろうか。


「美希、買い出しに行かない?気晴らしにでもさ」

「行かない」

「もう…」

「子供だな」

「ふん」

「じゃあ、お姉ちゃんがついてきてよ。どうせ、何もしないんでしょ?」

「なんだ、そのオレが暇人みたいな言い方は」

「事実でしょ」

「お前なぁ…」

「いいじゃない。祐輔も来るって」

「祐輔が?またなんで」

「さあ?ルウェに会いに行きたいんじゃないの?」

「今朝別れたばかりだろ」

「いつ別れたとかいう問題じゃないと思うよ。好き合ってるんだったら、いつでも一緒にいたいって思うでしょ」

「そうか?」

「なんでもお姉ちゃん基準で考えちゃダメだよ。とにかく、お昼ごはんが終わったら市場に行くんだからね」

「はいはい、分かったよ…」


買い出しなんて面倒だけど仕方がない。

買い出しに行けば、おかずが一品増えると考えるんだ。

たぶん、増える。

失敗しない限りはな…。

こればかりは、灯の腕を信じるしかない…。

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