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着物やら下着に混じって、今日は布団も干されている。

それを見て、風華はため息をついて。


「ごめんね」

「なんで謝るんだ」

「朝から大変だったでしょ?」

「いや。葛葉のためだし、何も大変じゃないよ」

「ナナヤにも迷惑掛けたでしょ?」

「あはは、平気平気。イナだって、ちょっと前までああだったし」

「でも…」

「当人たちがいいと言ってるんだから、別にいいじゃないか」

「うーん…」

「そうそう。葛葉、プニプニだったし」

「え?」

「そういえば、風呂に入ったとき、葛葉を触りたくってたな」

「だって、触ってると気持ち良いんだもん。あんなにプニプニしてる子を触らないなんて、勿体なすぎるよ!」

「サンはどうなんだ」

「サンはね、こう…葛葉にはないハリがあって、それもいいんだよね~」

「夏月は」

「夏月は、お腹のところを撫でたら、すっごく喜ぶんだ。それが可愛くて」

「弥生」

「弥生は、頭を撫でてあげると、ちょっと恥ずかしがって俯くのが良いねぇ」

「…お前は、何の評論家なんだ」

「えっ?」

「チビたちを触りすぎだ、お前は。まったく…」

「だって、可愛いんだもん!」

「ナナヤは、なんか変な趣向を持ってるみたいだね…」

「可愛いものを愛でてるだけなのに、何が変なのよ」

「いやぁ、ね…」

「まあ、ナナヤの幼女趣味は置いといてだ」

「姉ちゃん、スパッと言うねぇ…」

「ちっちゃい男の子も好きだよ!」

「そういう問題じゃない」

「うっ…」

「それより、だ。ツカサはどこに行ったんだ?」

「えっ?朝早くに、街に出ていってたけど…」

「また走り込みで誰かに捕まったのか?」

「そうなんじゃない?」

「難儀だな、あいつも…」

「そうだね」

「じゃあ、今日の訓練は?」

「お前だけでも出来るだろ」

「えぇ~…」

「まだ始めたばかりなのに、もう音を上げてるのか」

「私、結構頑張ってるでしょ?」

「まだまだだな」

「えぇ…」

「まだ二日三日しかやってないのに、偉そうなことを言ってるんじゃない」

「うっ…」

「あはは。ナナヤって、思ったより面白いね」

「むぅ…。どういう風に思ってたのよ…」

「なんか、もっと真面目な子だと思ってた」

「そう?そんなに真面目に見える?」

「喋らなければな」

「お姉ちゃんには聞いてない!」

「そうだね。喋ったら、天真爛漫天衣無縫ってことが分かるよね」

「天真爛漫と天衣無縫は同じ意味だぞ」

「それだけ、無邪気ってことだよ」

「無邪気…か?邪気だらけじゃないか、チビたちに対して」

「お姉ちゃんは、余計なこと言わない!」

「あはは。好きなものに一途になれるのって、無邪気だと思わない?」

「どうだろうな」

「私は、そう思うよ」

「風華大好き!」

「どうも」


わざとらしく抱きつくナナヤの頭を律儀に撫でる。

ナナヤは風華より頭半分くらい小さいので、ちょうどいいのかもしれない。

と、不意にナナヤは顔を上げて。


「風華ってあれだよね」

「え?」

「薬の匂いがする」

「えっ?今日はまだ医療室に行ってないんだけど…」

「服に染み付いてるんじゃないのか?」

「えぇ…。毎日ちゃんと洗ってるのに…」

「まあ、染み付いた匂いなんて、そうそう取れないからな」

「どうしよ…」

「お香で焚き染めてみたら?」

「あぁ、その方法があったな。でもまあ、薬の匂いと混じっても変にならないようなお香を選ぶ必要はあるだろうけど」

「あっ。じゃあさ、お香、買いに行こうよ!市場にあるでしょ?」

「まあ、あるだろうけど…」

「何?」

「ナナヤとオレは訓練があるからな」

「いいじゃない、一日くらい」

「一日やらないだけでも、かなり腕は落ちるんだぞ」

「じゃあ、姉ちゃんはかなり落ちてるよね。訓練してるところ、見たことないよ」

「それは…」

「ね?行こうよ!」

「うーん…」


それを言われると辛いな…。

平和になって大きな事件もあまりなかったから、全く鍛練を怠っていた。

平和ボケって言うのかな…。

まあ、それはそれでいいことなのかもしれないけど…。


「ね!行こうよ!」

「分かった分かった…」

「やった!」

「はぁ…」

「じゃあ、ナナヤ。準備しに行こ?」

「うん」

「姉ちゃんも」

「オレはいいよ。準備も何もないし…」

「光も連れていくから、そっちの準備だよ」

「連れていくのか?」

「うん。約束してたんだ」

「なんだ…。結局、最初から難癖付けて行くつもりだったのか…」

「そうだね」

「………」

「いいじゃない。どうせ、ツカサもいないんだし」

「ツカサがいたら、どうしてたんだ。あいつは訓練を優先させるぞ」

「もしもの話なんて、何の役にも立たないよ。ほら、早く光を探してきて」

「まったく…」


探さなくても、すぐそこにいるだろうに…。

ため息をついてる間に、二人はもう城の方に歩いて行ってて。

はぁ…。

自分にも落ち度があったわけだし、もういいか…。


「光」

「ん?」

「市場に行くぞ」

「うん」

「何か、買ってもらう約束でもしたのか?」

「ううん。市場に、行きたかっただけだよ」

「そうか」

「えっとね…」

「ん?」

「欲しいものは、あるの…」

「そうか。じゃあ、また小遣いをやろうな」

「うん!」


光の頭を撫でると、パタパタと翼をはためかせて。

そして、手を繋いで城へ戻る。

…光が何かをねだるなんて珍しいな。

何が欲しいんだろ。

少し、気になる。

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