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「ツカサは?」

「さあな。まだ街にいるんじゃないのか?」

「ふぅん」

「気になるか?」

「んー。まあ、新しく来たからね。ちょっと気になるかな」

「そうか」

「うん。何か悩んでたりしてないかなって」

「まあ、そうかもな」

「お節介なのかな」

「そういうときもあるかもしれないな」

「はぁ…。嫌われてないかな…」


風華はため息をつくと、また洗濯物に戻る。

でも、上の空のようで、同じ場所ばかり洗っている。


「ナナヤとかマオはどうなんだ?同じ女の子同士、仲良くやってるのか?」

「まあね。二人とも、とっても良い子だし」

「そうか」

「イナもね、可愛いんだ。可愛いって言ったら怒るけど」

「まあ、男なのに可愛いなんて言われるのは恥ずかしいことだって思ってる年頃だろうし」

「うん。それがまた可愛いんだけどね」

「イナに怒られるぞ」

「ふふ、そうだね」


切り替えが速いというか、さっきの上の空はどこへやらだ。

鼻唄なんかも歌ったりして。


「キリとシュウはどうだ。上手くやってるか?」

「うん。もうみんなと仲良くなれたみたいだよ。昨日も元気に遊んでたし」

「そうか。それはよかった」

「ていうか、姉ちゃん、さっきから私に聞いてばかりじゃない。そういうのは、自分で確認しないとダメでしょ?姉ちゃんが連れて帰ってきたんだし」

「まあ…そうだな。ごめん」

「ツカサとナナヤの訓練もいいけどね、大切なことはちゃんと自分でやらないと」

「ああ」

「あ、そういえば、さっきナナヤとユカラが話してたけど、何だったのかな」

「さあな。歳も近いみたいだし、話題が合うんじゃないか?」

「んー…。そんなかんじじゃなかったけどなぁ…。よろしくとか言ってたし…」

「…あ」

「え?」

「そういえば、昨日、ユカラに訓練に付き合ってくれるように頼むのを忘れてた…」

「なんで付き合ってもらうの?」

「あいつ、術式が使えるだろ?召致とかなんとか」

「あぁ、そうだね。…術式の練習をするの?」

「いや、ツカサやナナヤに合った武器を探したくてな」

「武器ねぇ…。そりゃ、ユカラは武器を召致出来るかもしれないけどさ。でも、本当は嫌かもしれないでしょ?武器は人を傷付ける道具なんだから。自分の出した武器で誰かが傷付くなんて、やっぱり気持ちの良いことじゃないと思うよ」

「そうだけどな。でも、ユカラの力が必要なんだよ。ツカサも焦ってる。いつ一人前になれるかってな。手にするものがあれば、少しでも安心するかもしれない。…二人の気持ちは、分からないなりにも分かってるつもりだよ」

「………」

「あたしは、良いと思うな。攻撃は最大の防御なりってね。みんなを守る手伝いが出来るなら、あたしはなんでも喜んでするよ」

「ユカラ…」


いつの間にか、後ろにユカラが立っていた。

ユカラと同じく、髪を三編みにしたサンを背負って。


「お母さん!」

「サン。ユカラにおんぶしてもらってるのか?」

「うん!」

「よかったな」

「えへへ」


手が汚れているから、サンを撫でてやれないけど。

ユカラはそれを感じ取ってくれたのか、代わりにサンの頭を撫でておいてくれた。


「それでだが、ユカラ。攻撃は最大の防御なりっていうのは、ユカラが思ってる意味は間違ってると思うぞ」

「えっ、そうなの?」

「ああ。また調べておけ」

「うん。…じゃあ、話を戻すよ。この力を使うこと…だったよね。あたしね、思うんだ。誰がどういう目的で、あたしにこの力を与えたのかは知らないけど、この力はあたしのものなんだから、あたしの使いたいように使えばいいって。だから、あたしは、あたしの力を、ツカサとナナヤのために役立てたい」

「………」

「姉ちゃんに何も話を聞いてなかったけどね。ナナヤに聞いてびっくりしたよ」

「それはすまない」

「うん。まあ、誰に聞いても返事は同じだったけどね」

「ありがとう」

「ユカラ…。無理しちゃダメだよ…?」

「してないよ。やりたいんだ、本当に」

「じゃあ、私は何も言えないけど…」

「ごめんね。ありがと」

「ううん」


風華はニッコリと笑って。

ユカラも、つられて笑う。

でも、少し哀しそうだった。

風華に心配を掛けたことだろうか。

それは分からないけど。


「えへへ。じゃあ、洗濯物が終わったら、すぐに特訓だね」

「そうだな」


だけど、すぐに哀しそうな表情は消えた。

今度は本当の笑顔で。


「サン。ちょっと降りようか」

「うん」

「あたしたちも手伝お?」

「うん!」

「ちゃんと出来るか?」

「出来るよ…。何歳だと思ってるの?」

「お前じゃない。サンに言ってるんだ」

「あ、そっか」

「まったく…」

「ふふふ。ユカラって、早とちりだよね」

「もう…。何よ、それ…」

「今のを見ると、事実でしょ?」

「むぅ…。普段は違うんだから!」

「どうかな~」

「風華!」

「あはは」

「楽しそうにしてるところ、すまないが。早く済まさないと、空の怒髪が天を突くぞ」

「え?」


物干し場からこちらを睨んでいる空を指さす。

それを見て、二人は慌てて洗濯物に取り掛かって。

…軽く手を振って合図を送ると、空は少し呆れたように笑う。

こっちの話を聞いていたんだろうか。

いや、あの遠さでは聞こえないか。

まあ、空の演技に感謝、だな。

今日は、少し早めに終われるかな。

サンが洗濯済の服を入れたタライを引っくり返すまでは、そう思っていた。

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