表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
204/578

204

「取った!」

「あぁ~、上手いねぇ」

「えへへ、五点だよ!」

「そうだね」


バヤック旅団で停まったときに、ついでに取ってきたおはじきに興じる。

どうやらサンが一番強いらしく、次々と取っていってる。


「あっ!ナナヤお姉ちゃん、間を通ってない!」

「うーん…。やっぱり難しいなぁ…」

「じゃあ、次は兄ちゃんの番だね」

「ああ」


祐輔も上手いみたいで、軽く弾いて二つのおはじきの間を通し、その先に当てる。

そして、それは台から落ちて、祐輔の持ち駒となる。


「わぁ、上手いね~」

「そんなことないよ…」

「私なんて、もう残りもないのに」

「ナナヤ姉ちゃんは、大きいのを狙いすぎなんだよ。少しずつ大きいおはじきを取っていって、最後に一番大きい十点を取ればいいんだ」

「あー、そうだね。言われてみれば」

「だから、他の人に取られないうちに、自分のをどうやって大きくしていくか考えるんだよ」

「ふむ、なるほどね」

「つぎ、夏月だよ!」

「頑張ってね~」


次に夏月が弾く。

でも、どのおはじきに当たることもなく、台から落ちてしまった。

でも、それを拾って、楽しそうに笑って。


「えへへ。当たらなかった~」

「残念だったね」

「うん。ね、次は弥生だよ」

「はぁい」


負けが込んでたりしてても、みんな楽しそうに遊んでるな。

いいことだ。

そして弥生は、一点のおはじきと自分の手持ちを落とすことが出来た。


「次、お母さんだよ!」

「あぁ、そうだな」


手持ちのおはじきを適当な場所に置いて弾く。

そして、台から落ちた自分のおはじきと、弾き落とした三点のおはじきを手持ちに加える。


「ねぇ、紅葉お姉ちゃんって、なんでそんなに上手いの?」

「昔からずっとやってるからな」

「そっかぁ」

「ひとつ言うと、少しずつ大きくしていくのもひとつの戦法だが、最終的には点数で決まるんだから、自分の手持ちを残しつつ、小さいのを増やしていくのもいいと思うぞ。大きく点数を稼ぐのか、小さくたくさん点数を稼ぐのか。両方とも有効な作戦だ」

「なるほど…」

「ほら、サンの番だ」

「うん!」


まあ、作戦を解説したところで、サンのやり方は変わらない。

好きなおはじきを好きなように落としていく。

サンにはおはじきの才能があるんだな。

…そんな才能があっても、あんまり意味ないかな。


「次、ナナヤお姉ちゃんだよ!」

「あ、私のおはじきがないんだった」

「余りを使えばいいじゃないか。一点保証だ」

「ん、分かった」

「まあ、手持ちがなくて出来ないんじゃ面白くないだろ」

「そうだね。じゃあ、私は紅葉お姉ちゃんの作戦でいってみようかな~」

「どうぞ」


ナナヤは、さっきまでの大物狙いから、堅実路線に変更する。

まあ、ナナヤにはそっちの方が合ってるかもしれないけどな。

無理なく小さいのを落として、点数とする。

…それぞれ、思い思いの方法で点を稼いでいってる。

さて、ここからが本番のようだな。



白熱して疲れたのか、ナナヤ以外は眠ってしまった。

結局、ずっとサンが圧倒的な強さを誇っていたんだけど。


「それにしても、ナナヤ。ちょっとわざとらしかったぞ」

「そうかな?上手くやったつもりだったんだけど」

「こっちのチビ三人は気付いてなかったけどな。祐輔は気付いてたみたいだぞ」

「そっかぁ」

「まあ、お前の努力空しく、サンはひたすら我が道突き進んでたけど」

「強かったからいいじゃない。それより、紅葉お姉ちゃんは本当に容赦なかったね。もうどんどん取っていってさ」

「あれでも手加減してたんだけどな。本気なら、置き石とかもやるぞ?」

「あー、そう来るかぁ」

「置き石って何?」

「お前、聞いてたのかよ…」

「聞いてたんじゃなくて、聞こえるのよ」


遙は前の小窓を開けて、ニヤリと笑ってみせる。

翔も聞いてたようで、慌てて顔を前に戻してたけど。


「ね、置き石って?」

「たとえば、相手が高得点のおはじきを取れそうなときとかに、そのおはじきまでの進路上とか、直接おはじきにくっつけるように、手持ちの駒をわざと置くことで、得点を阻止するって戦法ですよ。絶妙な位置に絶妙な大きさおはじきを弾く腕がいるんですが、名人達人の戦いになると、この駆け引きがすごいんです」

「へぇ。でも、自分の点数が減るってことでしょ?」

「ああ。だから、次の自分の番までに誰にも取られないように、次の自分の番で確実に取れるように、置いていく必要があるんだ」

「…おはじきって、頭使うんだね」

「まあな」

「桐華も子供たちを集めてやったりしてるからさ、簡単なのかと思ってたよ」

「桐華はどうか知らないけど、いろんな人が楽しめる奥深い遊びだってことだ」

「んー、そうだね。そんな気がしてきた」

「…俺、ずっと、おはじきなんて子供っぽい遊びだと思ってたけど、違うんだな」

「やってみたくなったか?」

「…うん」

「じゃあ、またやろうよ!みんなで一緒にさ!」

「うん」


翔は小窓のところから覗いてニッコリと笑う。

ナナヤもそれに応えて、嬉しそうに笑って。

城に帰って仕事が終わったら、みんなで一緒にやろう。

今から楽しみだ。

…こうやって、みんなで楽しめる遊びっていうのは、本当に楽しいものだな。

何より、みんなと楽しさを共有してることが一番楽しい。

もしかしたら、私だけの感覚かもしれないけど。

まあ、それでもいい。

楽しいことは、いいことなんだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ