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大波乱の朝ごはんの末、やっと一息つける時間に。

少し遅めだったけど、みんなお昼ごはんはちゃんと食べられるのかな。


「紅葉お姉ちゃん!」

「そろそろ教えてよ!」

「ん?あぁ、そうだったな」

「ツカサの恥ずかしい話って何?」

「………」

「祭司という仕事があるんだけど、お祭りなんかのときに儀式をしたりするんだ。それで、そのハレの儀式のときに、大失敗をやらかした祭司がいたんだ。恥ずかしいだろ?」

「…うん」

「でも、そいつはそれから失敗しないようになった。二度と失敗しないように、必死になって練習したからだ。失敗をバネにして、大きく成長出来たんだな」

「うん。…終わり?」

「ああ」

「それが、どうツカサと関係あるの?」

「祭司は普通、司と呼ばれている。だから、司の恥ずかしい話だ」

「…え?」

「さあ、話は終わりだ。そら、遊びに行け」

「えぇ~…」

「なんか、騙されたかんじ…」

「文句を言うな。ツカサの恥ずかしい話には変わりないだろ」

「んー…。まあ、そうかな」

「もういいじゃん。それよりさ、遊びに行こ!」

「うん!」


キリとシュウは元気良く部屋を飛び出していった。

まったく、単純なやつらでよかったよ。


「………」

「お前は遊びに行かないのか?」

「俺はいい。紅葉姉ちゃんといたい」

「望も寝てるしな」

「………」

「好きなだけ眺めたらいい。見るのはタダだからな」

「い、紅葉姉ちゃん…」

「まあ、起こさない程度になら触ってもいいぞ。ほら、サンもどうだ」

「むぅ…」

「はは、冗談だよ」


頭を撫でると、不機嫌そうに尻尾を降る。

可愛いやつだな、本当に。


「そういえば、朝、誰かに会うんじゃなかったの?」

「ん?なんでだ?」

「そんなかんじがしただけなんだけど…」

「そうか。まあ、大したことじゃない。佐之助と静香を探しにいこうと思ってたんだ」

「なんで?」

「城に帰る時期を相談しようと思ってな。実際、こうやって何もせずにいるだけだし、それなら帰った方がいいんじゃないかと思ってな。でも、いちおう、こうやって来てるんだから、事件が完全に解決するのを見届ける方がいいのかもしれないとも思うんだ」

「事件が完全に解決って?」

「禁地への侵入を手引きした者の特定、逮捕。あとは、木を売った先の特定だな」

「…俺、両方とも分かるよ」

「そうか」

「…事情聴取とかしないの?」

「そうだな。でも、お前はもう盗賊じゃないんだ。オレや警察には、お前が嫌がることを無理矢理させる権利はないよ」

「…なんで嫌がってるって思うの?」

「分かるさ。ツカサの考えてることは」

「なんで?」

「弟だからな」

「弟…」

「嫌か?」

「ううん。今まで兄としてしか見られてなかったから。なんか、新鮮だなって思って」

「そのうち慣れる」

「そうかな」

「ああ」


ツカサは、そっと身体を寄せてきて。

ずっと気を張り詰めていたから、誰にも甘えられなかった。

だから、今こうやって、精一杯甘えているんだろうか。

ゆっくりと頭を撫でると、パタパタと尻尾を振って応えてくれた。



望は大きな欠伸をして。

一度パタリと尻尾を振ると、ニッコリ笑った。


「………」

「よく眠れたか?」

「うん」

「そうか」

「みんなは?」

「外に遊びに行ったぞ。望も行くか?」

「ううん。もうすぐお昼だし。みんな、帰ってくるでしょ?」

「そうだな」

「サン、まだ寝てるの?」

「ああ。よく寝てるよ。なんでだろうな」

「昨日、遅くまで起きてたみたいだから」

「そうなのか?」

「うん。なんだか、遅くにゴソゴソしてて、それが気になって望も寝られなくなっちゃって」

「そうか」


血を飲んでいたときだろうか。

そんなにゴソゴソしてたのかな。

私の感覚だと、割とすぐに寝てたみてたけど。

もしかしたら、誰かの寝相が悪かったのかもしれない。

まあ、それがサンで、ずっと眠りが浅い状態が続いたから眠い…ということもあり得る。


「ツカサは、なんで何も喋らないの?」

「えっ、いや…」

「……?」

「まあ、いろいろあるんだよ、ツカサにも」

「………」

「どういうこと?」

「それは、ツカサに聞くといい」

「ツカサ、どういうことなの?」

「えっ、あっ、いや…。えっと…」

「……?」


横から見てる分には、かなり面白いんだけどな。

慌てふためくツカサと、わけが分からないと首を傾げる望。


「ご、ごめん…。また今度にさせて…」

「うん」

「………」

「顔、赤いよ?」

「ごめん…」

「なんで謝るの?」

「えっと…」

「えへへ。なんだか、可笑しいね」

「うぅ…」


なぜか、望に頭を撫でられている。

ツカサの顔は、どんどん赤くなるばかりで。

まったく。

もしかしたら、お似合いの二人なのかもな。


「んぅ…」

「あ、サン。起きたか?」

「うん…」

「そうか」

「ふぁ…」

「まだ眠たいか?」

「ううん…。あっ」

「ん?」

「サンも入れて!」

「わっ、えっ?」


ツカサに抱きついて、胸のところに額を擦り付ける。

それに乗じ、望も抱きついて。

二人に挟まれて何が何だか分からなくなってるツカサは、オロオロとして必死な目で私に助けを求めていた。

…まあ、もうしばらく待ってみようか。

望もサンも楽しそうだしな。

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