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ん?

なんだ…?


「ぅん…」


寝てる間に抱き締めてしまったらしい。

響はモゾモゾと動くと、また寝てしまった。

…もう朝か。

ちょっと早いみたいだけど、起きることにする。


「ふぁ…あふぅ…」


さて…服を着替えて…。

響が私の布団で寝ているから、私の横の布団がひとつ余る格好になる。

その余った布団に明日香が寝ていた。

そして、望、光ときて風華が寝ている。

明日香、風華のところで寝ていたはずなんだけどな…。

狭いのが嫌なのか?

…そんなことを考えてると、明日香が目を覚まし、起き上がって大きく伸びをし、私の足元までやってくる。


「ん?」

「………」

『そうか。でも、調理班のやつらはまだ起きてないと思うぞ』

「………」

『ああ。お休み』


そして、また布団に戻っていった。

…そういえば、明日香の親はどうしたんだろう。

拾ってきたってことは、一匹でいたってことだ。

はぐれたんだろうか?

それとも、何かの事故で死んでしまったのか…?

また明日香に聞いてみるか…。

最後に帯を締めて、部屋を出る。

さすがに誰も起きてないらしく、廊下は静まり返っていた。


「あっ。隊長。お疲れ様です」


夜勤組に声を掛けられる。

周りを気にしてか、少し小声だった。


「いや、今起きてきたところだ。それに、それはオレの台詞だ。お疲れ様。今日はもういいから、ゆっくり休んでくれ」

「はっ。あ…いえ…朝の洗濯が終わるまでは寝るわけにはいきません」

「あぁ…そういえば、そんなのがあったな…」

「では」

「ああ。頑張れよ」

「はっ」


敬礼をすると、また見回りに戻る。

さて、厨房に向かうか。



やっぱり、誰もいなかった。

窓を開けて、朝の光を入れる。

えっと、これとこれがあるから…ウルクでも作るか。

小さめの鍋に適当に材料を入れて、火に掛ける。

どうせ私の分しかないから、多少不味くてもいいよね。

煮えるまでの間、たまにかき混ぜながら、ジッと待つ。

………。

暇だなぁ…。

そういえば、利家はどうしてるんだろ…。

って、まだ寝てるよな…。

桜はやっぱり地下牢で寝てるのかな。

大好きな場所って言ってたけど、女の子の部屋としては不向きだと思う。

いろいろ持ち込んでたみたいだけど…。

………。

朝の洗濯か…。

面倒くさいな…。

雨が降ったら休み、とかにならないのかな…。

今日はどっちみち晴れてるけど。

夜の間にやんだのかな。

ん?

もうそろそろいいかな。

鍋を火から下ろす。

…まあ、皿に移すこともないか。

さてと。

箸は…これこれ。

じゃあ、いただきます。

………。

うん、適当にしては美味しく出来たな。

む…。

これは生煮えだ…。



食べ終わるかどうか、というところで、調理班が起きてきたようだ。


「おはよう」

「おふぁようございますぅ…って!隊長!今すぐ準備します!」

「いいよ。もう食べたから」

「も、申し訳ないです!隊長に作らせたりなんかして!」

「オレが勝手に早く起きただけだ。そんなことを気にするくらいなら、みんなに美味しいご飯を作ってやれ」

「は、はい!」

「じゃあな」


軽く手を振って、厨房を後にする。

早起きは三文の徳、なんて言うけど、私の場合、早起きするとみんなに心配だとか気苦労を掛けるみたいだ。

難しいものだな。

今度からは二度寝だな、うん。



桜の部屋に行ってみると、桜は一所懸命に何かをしていた。

…囚人が労役をさせられてるようで、面白くない光景だけど。


「桜、何してるんだ?」

「わひゃぁ!」

「何を驚いてるんだ」

「もう!いきなり声掛けないでよ!」

「じゃあ、どうすればいいんだ。肩を叩いてもびっくりしてただろ」

「むぅ…。前に回るとか、戸を叩くとか…いろいろあるじゃない!」

「じゃあ、今度からはそうするよ。で、何してたんだ?」

「え?あ…いや、な、何もしてないよ!」

「ふぅん?」


必死に背の裏に隠そうとしているが、硯が丸見えだ。

書き物でもしてたのか…?


「あ…うぅ…て、手紙を書いてたの!」

「手紙?桜、お前、字が書けるのか?」

「うん…まだ平仮名だけだけど…」

「ほぅ。どこで勉強したんだ?」

「風華に教えてもらったの」

「あぁ、風華な。で、誰に書いてたんだ?」


すると、なぜか顔を真っ赤にさせる。

恋人宛にでも書いてたのか?


「だ、誰だっていいでしょ!」

「まあ、それもそうだな」

「…聞かないの?」

「聞いてほしいのか?」

「そ、そういうわけじゃ…」

「じゃあ、言わなくてもいいだろ」

「でも…気にならないの…?」

「気になるけど、桜が言いたくないなら言わなくてもいい」

「う…あぅ…」

「じゃあな。朝ごはん、ちゃんと食べるんだぞ」

「あっ、ま、待って!」

「ん?どうした。オレはもう食べたから、昼まで厨房に行く予定はないけど」

「ち、違うよ!こ、これ、隼に書いてたの!」

「ほぅ。隼か。でも、なんで教えてくれたんだ?」


目を逸らし、モジモジしながら。


「い、いろはねぇ には言っとかないと…。ボ、ボクのお姉ちゃんだもん…」

「ふふ、そうか。ありがとう」


横に座り、優しく頭を撫でる。

桜は、こちらに向かってニッコリとし、ゴロゴロと喉を鳴らす。


「隼のこと、好きなのか?」

「そ、そんなんじゃないよ!で、でも、ボクがいなくて寂しがってるかな、なんて…」

「そうか。隼も喜ぶだろう。…ところで、隼は字が読めるのか?」

「あ」

「…そんなことだろうと思ったよ。一回、村に帰ったらどうなんだ?」

「ダ、ダメだよ…」


桜のことだ。

隼の前では上手く自分の本心を出せないんだろう。

そうなると、さて…どうしたものか…。


「あ、そうだ。絵で伝えたらどうだ?」

「絵?」

「絵なら誰にでも分かるだろ?」

「そ、そうかもしれない」


と、早速机に向かう桜。

…この机、どこから持ってきたんだろ。

衛士の部屋に置いてあるのと同じ書き物机だけど…。

まあ、使ってないやつらがほとんどだから、持っていっても大して問題にはならないんだけど…。

それにしても、この箪笥とかはどうやって入れたんだろうか。

戸の大きさより、幅、あるよな。

中で組み立てたのかな?

布団があるところを見ると、ここは寝間みたいだけど、他の部屋も最大限利用してるみたいだ。


「出来た!見て見て!」

「どれどれ」


ふむ…。

なかなかに上手いな。


「いいんじゃないか?」

「これ、なんて言ってるように見える?」

「男の子が寂しがってないか、女の子が心配してるってところだな」

「そ、そう見える?」

「ああ」

「ふぅ~」


良かった…と言わんばかりにため息をつく。


「じゃあ、これ、伝令班の誰かに届けさせようか?」

「うん…お願い出来る…?」

「ああ。一番速いやつに任せるとしようか」

「うん、ありがと」

「お礼はそいつに言ってくれ」

「うん。でも、いろはねぇ にも。ありがと」

「どういたしまして」


頭を撫でてやると、またニッコリして。

…私に出来る範囲のことは、なんでもやってやりたい。

たぶん、衛士のみんなも、そう思ってくれてるだろう。

なにしろ、可愛い妹のため、だもんな。

絵手紙、いいと思いますよ。

絵は文字よりも強し。

あれ?違いましたっけ?

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