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目が覚めると、寒さがこたえた。

どうやら、布団からだいぶ離れているらしい。

重たい身体を引きずって這い戻り、掛け布団を上げてみると…明日香がいた。

私を押しのけて寝るなんて…。


「おい、明日香。どけろ」


言ってみるが、動く気配はない。

まだ寝ぼけてるのだろうか。


『明日香。もうちょっと向こうに行ってくれ』


今度は、ちゃんと向こうに行ってくれた。

はぁ…いつの間に潜り込んでたんだろ…。

まだ夜明けは遠いみたいだ。

もう一眠り…しようか…。



目が覚めた。

今度は布団の中。

ついでに、夜も明けたみたいだ。


「あ、姉ちゃん。起こしちゃった?」

「いや」

「そ。おはよ」

「おはよう」


望と響はすでにいない。

というか、布団もない。


「いいお天気だから、布団、干してるの」

「そうか。でも、昼を過ぎたらすぐに取り込んだ方がいいな」

「え?なんで?」

「昼過ぎになったら分かる」

「それじゃ遅いでしょ?」

「まあ、そうだな。とにかく、昼過ぎまでには取り込んでおけ」

「…分かった」

「ほら、明日香も起きろ。布団を干せないだろ」


軽く叩いてやると、明日香は欠伸をして、大きく伸びをする。

私も布団を抜け出し、適当に畳んで持ち上げる。


「あ、私が干すから、姉ちゃんは朝ごはん食べてきなよ」

「自分の布団くらい自分で干す。なんでもかんでも風華任せには出来ないからな」

「でも…」

「でも、じゃない。…それに、夜は風華に任せっきりになるからな」

「…うん。そうだね」


風華に案内され、布団を干しているところに行く。

…まあ、洗濯物を干すところなんだけど。

でも、今日は綺麗に洗われた衛士たちの服が、ずらっと並んでいた。


「わぁ…すごいな…」

「えぇ~、どういう意味で?」

「ん?」


ふと、声をした方を見てみる。


「よっ!紅葉!元気だった?」

「空!」

「手伝いに来たよ」

「そんなこと言って。サボりに来た、の間違いでしょ?」

「あれ?バレてた?」

「もう…」

「それにしても、ここの衛士たちは何を着てるの?洗濯物、こんなに溜めてさ」

「二週に一回、みんなで洗うんだ」

「えぇっ!そんなことしてるの!?毎日洗いなよ!」

「…だって、面倒くさいじゃないか」

「そんなんじゃダメ!毎日洗いなさい!」

「…約束は出来ない」


小突かれた。


「毎日やること!いいね!」

「………」

「返事は?」

「はい…」


これが、毎朝の洗濯の時間が定められた原因の一部始終だ。



布団を干して、厨房へ。

空はもう食べてきた、とのことで、私と風華だけで向かう。


「空姉ちゃんったら、まだ夜が明けないうちから来てたんだよ?そんなに収穫作業が嫌なのかな…」

「風華はどうなんだ?」

「私?私はね~、結構好きだったよ。採れたてのデガナ、美味しいしね~」

「それが目的か」

「え?あ…あはは、そんなわけないじゃない…」


そんなわけ、あるんだな。

まあ、採れたての野菜というものは、どれも最高に美味しいものだ。

特に夏野菜ともなると…な。


「も、もう!なんか、私が食いしん坊みたいじゃない!」

「自分が口を滑らせたんだろ?」

「う…」

「たくさん食べるということは、悪いことではない。むしろ、歓迎されるべきことだ。だから、遠慮せずにたくさん食べるといい」

「…うん」

「認めたな」

「…え?………。あぁーっ!姉ちゃん!」

「ふふ、ホント、風華って面白いよな」

「もう!」


顔を真っ赤にさせる風華。

…でも、食べることは悪いことではない。

しっかり食べて、しっかり遊んで、しっかり寝る。

成長期には必要不可欠なことだ。

そんなことを言うと、また怒るだろうから、心の内にしまっておこう。


「朝ごはん、頼む」

「私もお願いします~」


厨房に着いて、早速注文してみるが、衛士は包丁を熱心に砥いでいるらしく、全くこちらに気付いていないようだった。


「命を磨く。いい心がけだな」

「あっ!隊長!風華さん!すみません!すぐ作ります!」

「あぁ、そんなに急がなくてもいいから」

「わわっ!」


と、砥石を落としてしまった。


「あっつぅ…」

「大丈夫ですか!?」


足に直撃したらしい。

少し血が出ていた。


「ジッとしていてくださいね…」


風華が何か集中するようなそぶりを見せると、その足の傷はどんどん癒えていった。


「え…?何なんですか…?これは…」

「これは応急手当だから、あとでちゃんと医療室に来てもらいます」

「あ…はい」

「じゃあ、朝ごはん、よろしくお願いしますね」

「はっ!」


そして、何事もなかったようにテキパキと働く。


「なんだったんだ?今のは」

「術式のひとつだよ。『手当』っていうの」

「ふぅん…。傷が癒えていたみたいだけど?」

「あくまで一時的なものだよ。傷を騙してるだけだから、放っておくとまた傷口が開いてくるの」

「そうか」


何かよく分からないけど、そういうことらしい。


「治癒は、もっと集中力がいるし、再生ともなると、術者はもちろん、対象者にも負担をかけちゃうんだよね…」

「なんだそれは?」

「手当のさらに上位の術式だよ。いざというときにしか使っちゃいけないって書いてあった」

「なら、今は使うべきではないな」

「うん」


今日の朝ごはんは、何かの魚を焼いたもの。

適度な味付けだな。

焦げ目も上手く付いてて、視覚的にも楽しめるものだった。


「ご馳走様」

「ご馳走様でした!」

「あ、はいっ!お粗末さまでした!」

「砥石、もう落とすなよ」

「はっ…」

「医療室、ちゃんと来てね?」

「はっ!」

「じゃあな」

「また後で~」


厨房を後にした。



風華は何か薬の調合をするとか言って、そのまま医療室に向かってしまった。

何もすることがない私は、見回りも兼ねて、グルッと外周を回っていた。


「あ、お母さん!」

「ん?望か。どうした」

「お散歩?」

「そんなところだ」

「じゃあ、望も一緒に行く!」

「そうか。じゃあ一緒に行こうか」

「うん!」


望は明日香を連れていた。

やはり、狼同士は気が合うのだろうか?


「お母さん、夜、明日香と何話してたの?なんか、変な言葉が聞こえたの」

「聞いてたのか?」

「うん。眠たくて、よく聞こえなかったけど」

「明日香がオレの布団で寝てたから、どいてくれって言ってたんだ。な、明日香」

「ワゥ!」

「ふぅん。お母さん、明日香と喋れるんだね!」

「まあな」

「すごいね!」

「でも、このこと、誰にも話すなよ?」

「なんで?」

「あれは、秘密の言葉なんだ。だから、誰にも言っちゃいけないんだ」

「じゃあ、望は…?望、聞いちゃったよ…?」

「望は賢い子だから、誰にも喋らない。オレはそう信じてるから、大丈夫」

「うん!誰にも言わないよ!」

「えらいな、望は」

「えへへ」


頭を撫でてやると、なんとも可愛い笑顔をこちらに向けてくれる。

…いつか話さないといけないな。

少なくとも、風華には。

約束だしな。

まあ、その時はその時だ。

今、心配しても、どうなるわけでもないからな。

今は、望を撫でてやることに専念しよう。

可愛い笑顔のためにも。

ついに、ナンバリングも二桁突入です。

次は三桁ですね(ぇ

食べ物に関しての話題が多いのは、自分が食べることが好きだからです。

あと、寝ること。

昔、食べたくても食べられないときがあったからでしょうか。

食べ物を残すなんて、そんな恐ろしいこと、考えられません。

お腹が破裂しそうでも、嫌いなものがあっても、無理矢理押し込みます。

後にどうなるかなんて考えません。

とにかく、食事中は、残さないことだけを考えてますね。

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