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戦国時代はほとんど全く関係ありません

ご了承のほど、よろしくお願いいたします


ブログで公開しているものを、時間差をつけて投稿していこうかと思います

具体的には、一更新ごとにひとつずつ…になるかと

ではでは、ごゆるりと…


「回れ!囲むんだ!」


もう逃げ場はないぞ…。


「くっ」

「さあ、観念しろ」

「はぁ…仕方ない…か」


こそ泥は、参ったというかんじで座り込む。


「捕らえて牢に入れておけ。盗品は元あった場所に直しとくんだ」

「はっ!」


まあ、盗品も戻ったし、すぐに開放されるだろう。

…普通ならな。



ドシンドシンと、本当に地震が起こるかと思うくらい、足を鳴らして歩き回る陛下。


「いえ、しかし、盗品も元に戻ったのですから…」

「ふん。こそ泥なんぞが入ったとなれば、朕の名に傷が付くわ!噂が広まる前に処分しておけ!」


こそ泥程度なら、厳重注意の後、釈放される…というのが普通。

だが、残念なことに、こんなのがこの国の王だ。

だから、事前にこういったことを防ぐために、私たちは気を張って警備に当たっている。

…しかし、昨日は新米が当直をサボったらしい。

さらに不幸なことに、その隙を突いて、あいつが侵入してしまった。

サボったことでどうなったのか、その新米に話した後、そいつは警備担当から外した。

その新米だけの責任ではないが、いたしかたあるまい。

青ざめた顔してたけど、大丈夫かな…。


「あ!紅葉(いろは)隊長!お疲れ様です!」

「ああ。ご苦労」

「…で、やっぱり…これ、ですか?」


親指を立てて、首をかき斬る仕草をする。


「ああ。陛下はそれをお望みだ」

「…なんであんなやつの下で、せっせと働かなければならないんですか?」

「今後こういうことが起こらないようにだ。それと…今聞いたことは不問にする」

「はっ、すみません…」

「ふふ、だが、それがみんなの本音だろう」


衛士の肩を軽く叩いて、その場を後にする。

…みんなの本音。

それが真実なんだろう。

なぜ、あんな王の下で働かなければならないのか。

なぜ、あんなのが王なのだろうか。


「捕らえたものはどうしてる?」

「はっ!ぐっすり眠っております!」

「そうか…」


地下牢の前まで来た。

何年も何年も、使われない地下牢の掃除だけが仕事だった牢番だが、今日はえらく気を張っているようだ。

着任してから初めての囚人だからな…。


「ちょっと様子が見たい。中に入れてくれないか?」

「はっ、いえ、しかし…」

「ちょっとだけだ。な、頼むよ」

「はっ!では、少しだけ…」


慣れていない鍵束をガチャガチャいわせて、牢の鍵を探す。


「えっと…あ、これです!どうぞ」

「ああ、ありがとう」

「いえっ!」


貰った鍵を持って、地下牢の中へと進む。

狭い石の部屋に、食べ物を差し入れたり様子を見たりするための窓と、頑丈そうな、ピカピカに磨かれた金属製の扉がひとつだけあるという、なんとも簡素で堅固な牢が、両脇にふたつ、計よっつ並んでいる。

その右側奥に、例のこそ泥が入ってる。

窓から覗いてみると、ホントにぐっすりと眠ってやがる。

鍵を開けて中に入り、ちょっと小突いてみる。


「おい、起きろ」

「……?」


目を擦り、大きく伸びをして、焦点のあってない目でこちらを見つめる。


「あ、分かった。あなたも捕まったんでしょ」

「違う。オレは、ここの衛士長、紅葉だ」

「ふぅん…」

「お前の名前を聞いてなかったな」

「ボク?ボクは桜」

「桜。今日、お前の死刑執行が決まった」

「…そっか。ボク、殺されちゃうんだね」

「ああ。残念ながらな。これは独り言なんだが…オレは今から、鍵を掛け忘れるだろう。そして、牢番を買って出て、居眠りをしてしまう」

「…それは、ボクに逃げろって言ってるの?」

「そんなことは一言も言ってない。

 これからのオレの行動をただツラツラと述べただけだ」

「………」

「じゃあな。オレはもう行く」


扉を閉めるとき、何か聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。

囚人に礼を言われるようなことをした覚えはないしな。


「そういうことだ。牢番」

「はっ、しかし…」

「今からオレはここで牢番をする。…お前は今日は非番だ。家族に会いに行ってやれ」

「あ、ありがとうございます!」

「いや、いいんだ…」


牢番は、いそいそと支度をして、帰っていった。

仕事もないのに、ここ何週間も詰め続けだったからな…。

幸せそうな笑顔を見てると、こちらも救われた気分になれた。


「あぁ…眠い…ちょっと居眠りでもするかな…」


牢に向けて、さりげなく呟く。

…そういえば、私もここしばらく寝てなかったな。

最期くらい、ゆっくり眠ってもいいだろ…。

おやすみ…。



ドシンドシンと、歩くたびに地割れが起きそうなくらい、大きな足音を立てる陛下。


「今、なんと申した!」

「私めの不手際により、例のこそ泥を取り逃がしてしまいました」

「ち、朕の名に傷を付けおって!お、お前なぞ死刑だ!即刻、死刑だ!」


目が覚めたとき、桜はいなかった。

上手く逃げおおせたらしい。

次の日の謁見のときには、すでに陛下の耳にその噂は届いていた。

そして、死刑死刑と、狂ったように叫び続けている。


「ふふふ…そうだ…お前は火炙りだ…。ふふふふふ…じっくり、その罪を後悔して死んでいくがいい…」


かくして、オレの死刑執行が決定された。



晴天の中、磔にされた私は、逆に清々しい気分だった。

これで、終わる。

辛い日々が。


「お前らが泣いてどうするんだ」

「でも…紅葉隊長…!」

「大丈夫だ。お前らだけでもやっていける」

「嫌です…紅葉隊長がいないと…!」

「あいつに聞かれたら、お前らも死刑になるぞ」

「それでも…それでも…!」


ふふ、バカなやつらだな…。

もう私が面倒を見てやれることはないほど、立派に成長して…。

桜、今何してるんだろうな…。

こそ泥なんてバカな真似、やめてくれるだろうか…。

新米の衛士たち…。

あいつらの面倒、最後まで見たかったな…。

…やっと終わるのに。

…辛い日々ばかりだったのに。

なんで…今になって…死ぬのが惜しいんだろう…。

もっと…生きたかった…。

もっと…先まで見たかった…!


「やれ」


あいつの、嘲笑うかのような声が響いた。

そして、放たれる火。


「うっ…うぅ…すみません…すみません…」


謝り続ける執行人。

もういいんだ。

私まで…哀しくなるだろ…。


「五元素がひとつ、水よ!人々の哀しみを汲み、その涙を以て火を剋せ!」


掛け声とともに、どこからともなく水が流れてきて、火を消してしまう。


「ふふ、いろはねぇ。助けに来たよ」

「桜!?」

(はやて)!」

「おうよ」


隼と呼ばれた少年が、次々と縄を切ってゆく。


「風華に続けー!」

「な、なにごとだ!衛士!出会え出会え!」


また別の掛け声。

そして、それに答えるように、あらゆる方向から、広場へと人々がなだれ込む。

…農民の蜂起だった。


「お前が紅葉か?」

「ああ」


さっきの掛け声の主が、近付いてきた。


「桜が世話になった。ありがとう」

「いや…。でも、これは…」

「あぁ、蜂起だな。悪政に対しての。紅葉は運がよかった。蜂起の"ついで"に、死刑を逃れることが出来た」

「ふふ、そうか。…ありがとう」

「"ついで"に礼を言われる筋合いはないな」

「そうか。…衛士たちは、オレの大切な家族だ。あまり傷つけないでやってくれよ」

「その心配は無用だ。見てみろ。誰も、王の命に従うものはない」


武器を捨て、無抵抗となった衛士たちは、ことの成り行きを見守っていた。

…たしかに、王の命に従うものはいなかったみたいだ。


「こ、こらっ!貴様ら!ち、朕を誰と心得るか!貴様ら、ぜ、全員死刑だ!」


王の言葉は、空しく晴天に吸い込まれていく。


「た、助けて…!ち、朕はまだ死にたくない!」


命からがらといったかんじで、こちらまで走ってくる。


「え、衛士長!このゴミどもを処分するのだ!は、早く!」

「え?オレに言ってるのか?オレは衛士長じゃないし、それに、あいつはもう死んだ」

「た、頼む!助けてくれ!」

「彼女が、助けてやってくれと頼んだとき、お前は聞く耳すら持たなかった。何かにつけては、死刑死刑と、狂ったように叫んでいた。そんなやつを、助けるような人間がいると思うか?」

「頼む…!助けて…!」


私は、手近にあった刀を取り、大きく振りかぶり、一気に振り下ろした。


「…いいのか?これで」

「ああ。もういい」


すんでのところで止められた刃だったが、王…だったものは泡を吹いて気絶していた。


「国境より向こうに捨てて来い!」

「え…いや、しかし…」

「こいつは殺された。この、紅葉の手によって」

「はぁ…分かりました…」


渋々といったかんじで、丸々と太った巨体を運んでいく農民たち。

…目が覚めたとしても、こいつには何をやる力も残ってないだろう。

権力を振りかざして生きてきたこいつには何も…。


「さて…。蜂起は無事成功した!悪政の世は終わる!」

「「「おおーーーーっ!!!」」」

「明日からまた大変になる!今日はゆっくり…宴を開こうじゃないか!」

「「「おおーーーーっ!!!」」」


でも、宴はすでに始まっていた。

城の貯蔵庫から、酒を出してきて、呑んでいるものもいる。


「じゃあな。また明日、会おう」

「ああ。…あ、お前、名前は?」

「利家だ。…犬千代とでも呼んでくれ」


そして、あいつは去っていった。

犬千代か…。

ふふ、楽しくなってきそうだ!

導入の部分です。

お楽しみいただけたなら、幸いです。


あと…自分こと、佐倉いろは と、作中の紅葉(いろは)は別人ですよ。

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