バイバイ、エンジェル。こんばんは、最凶の相棒。4
「サクラメント」ーー。
歌舞伎町元No.1、御子柴セリナを代表とする。今や新宿の夜を牛耳る一大グループである。
この名が出てきた瞬間。捜査一課の面々、守屋さんは発光色男に向けた苛つきを納め。皆一同にホワイトボードへ目を向けた。俺もまたホワイトボードをみてこの男の言ってることに納得してしまった。確かに筋が通っている。ようやく事件の輪郭が見えてきたのであった。
別々の店。別々の女。別々の夜。
そう見えていたものが、実は同じ根から伸びた枝葉にすぎなかったのだ。そうなると、次に摘まれるであろう『華』は自然と分かってくる。
「おま・・」
守屋さんの発言に被さるように発光色男はこう言った。
「捜査一課の皆様はサクラメントグループNo.1キャバ嬢こと嶺聖アマネの周辺の人物捜査と彼女の警護。やり方は自由です。潜入なんてボーイでもなんでもいいのです。サクラメント内のこの事件に関わってくる関係者を全て洗ってください。」
「…ッスー。お前たちはどうするんだ?」
苛つきを抑え守屋さんは男を見てこう言った。
「なぁに、この事件を上に言われた時点で、すでにワタクシの部下たちは優秀なので動き出しておりますが?」
「チッ!!お前ら聞いたかぁ!?一旦第4種事案とか訳のわかんねぇ俺の発言、この男の存在は忘れろぉ!負けるなよ!!この男の部下よりも先に成果を上げろ!!!!いいかぁ!?解散だ!!!!」
守屋さんは捜査一課に喝を入れるように叫んだ。
***
思考が追いつくよりも先に、冷たい都会の空気が肌を突き刺す。浮遊感?いや、それは落下であった。なぜ自身が今なぜ落ちているのか考えるよりも先に落とした相手の手がかりを掴もうと見上げたが、そこにあるのは都会のネオンに輝く一枚の白銀の羽だった。
視界がぐるっと回る。高層の雑居ビルからアスファルトまで落ちて行く。死が目前までやってきた瞬間。
「ん?あいにくの空模様かと思ったら。今度は天使が落ちてきたのかと思ったよ。」
重量に逆らうような、ゆったりとした声が鼓膜を撫でた。
身体に衝撃が走る、まともに受け身も取らずに落ちたんだ。血が止めどなく溢れる…俺はもう助からない。
(ー気配がする、さっきの声の主か)
そこには男が立っていた。夜の歌舞伎町を象徴するような、隙のない着こなしのスーツ。人目を引く整った容姿。薔薇のような赤眼の艶やかな男はこう言った。
「さて、こんなところで死なれても胸糞悪いんだが…」
およそヒトではない異質なオーラを漂わせる男は俺を一瞥して去って行こうとした…が、俺は最後の力をふり男のズボンの裾を掴んだ。
ーここで俺の意識は途絶えた。
***
「○○○○○!!」
色欲の悪魔アスモデウスは困惑した。天使が好き勝手しているからとたまには天使の1匹でも狩ってあのお方の祭壇の貢物として捧げようと下界にきたらこれはなんだ。意味がわからない。死にかけの男の一言に涙を流す自身がいる。わからない、わからない!!
「ふぅ…。なんだこれは…何故涙が流れている?どうも下界に来てからおかしなことばかり起こる…ややこしくなる前にさっさと天使の1匹でも狩って帰るとするか」
アスモデウスは冷静を装い、男が掴んだズボンの裾を払うように足を動かした瞬間。
ー鼻腔を掠めた芳しい香り。
(いい香りだ…)
懐かしい香り。かつてのオレはこの香りを知っていたはずだ…
よく見るとこの男中々にいい魂を持っている。足を降ろして、アスモデウスは口角を吊り上げた。
その姿は、獲物を見つけた捕食者のようであった。
ーこれが俺狭間墜人とのちの相棒となるアスモデウスとの出会いである。
ようやく出会いが書けました・・・長い長かった。




