バイバイ、エンジェル。こんばんは、最凶の相棒。3
本部の中央にあるホワイトボードに貼られた複数枚の写真を指先で弾き、男はまるで芝居がかった調子で語り出した。
「最初に確認すべき点は、本当に彼女たちが自ら散ったのか…仮にですよ!彼女たちが常日頃から仕事への限界を感じ、店への恨み、絶望を抱いて死んだとしましょう!可笑しくないでしょうか!?なぜでしょう…死亡現場に彼女たちの意思が!想いが!見えないのです!店に一矢報いたい!お店の価値を落としたい!そう思うならその店が入っているビルから落ちるのが妥当でしょう?」
確かに、写真と現場の地図を見比べると彼女たちが散った現場はどれも自分を咲かせ、搾り取った場所である店とは無関係の雑居ビルである。自殺にしては目的があまりにも薄いと思ってしまう。
そして別の写真を提示し、男はさらに語り出す。
「ご覧下さい!現場の痕跡には複数の違和感があります。自殺とは思えない点が…ヒールを揃えて落ちる手前の場所まで歩いたにしてはみんな足が綺麗なのです。雑居ビルの屋上なんて数歩あるけば足なんて真っ黒でしょう?そして極めつけは、落下にしては不自然な血の量です。どれも落下した高さがバラバラなのに血の広がり方からみて同じぐらいの出血量なのです。これは誰かによって先に彼女たちは手折られたあとに別の場所で投げ捨てられたのです…」
守屋さんが座る中央の長机に足を華麗に組み腰掛け名探偵ホームズ気取りで語り出した。側からみたら安い芝居を見てる気分にもなってくる。守屋さんは呆れて口が開きっぱなしだ。
「そして極め付けは、彼女たちの最後の投稿写真です。皆様お気づきにはならなかったのでしょうか?」
男は皆の反応をみて、ため息を溢した。
「はぁ。あまりにも愚かな…ここは愚者の集まりですか?シャンパンタワーは決まって正面からやや左の画角にあり、主役が最も映える位置に置かれています。そして彼女たちのボトル持ち方は皆同じで右手でネックの付け根を、左手でボトルの底を包み込むように持っているんです。1枚なら偶然、2枚なら趣味かなと。流石に3枚も4枚も似たような写真が続けば違和感を感じませんか?」
言われてみれば、シャンパンタワー、主役の笑顔、主役の側で白銀に輝くヘブンリー・ドロップ。どの夜も違うのに同じ写真のように見える。
男はさらに低い声でこう語った。
「しかも、彼女たちが所属する店名は違いますが。経営母体辿って行くとある一つのグループに辿り着くのです。ここ優秀な捜査一課の皆様ならすでに調べはついているでしょう?」
そう。今やこの不夜城を牛耳るグループーサクラメントことである。




