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お客様が来ました。

 自分の家だけど隠れないといけない、なんて事が世の中にはあるらしい。

 隠れたい事はあったな、とユーリは前世を思い出した。


 前世では逆に隠れる場所はなく。弟妹が友人を連れて来るとオヤツを出したり遊び相手をしないといけない事があった。

 自分の家なのに寛げず、ヤンチャな男児が暴れずに遊ばせる努力をさせられた日もあった。自分だけ出掛ける手もあったが、帰ってからの片付けが大変な日があってからは用事がない限りは相手をしていた。

 大人数で遊ぶのが楽しいと、毎日のように遊びに来る子もいたし。近隣の人からも子どもが集まる家と認識されて、差し入れをもらう事もあり。人が良くて細かい事を気にしない両親は、最終的に昼と夜の営業の合間時間を子ども食堂として店を解放していた。

 その手伝いをさせられていた前世に比べたら、客の前に顔を出さないなんて楽なものだとユーリは思う。


 兄の友人らしき男児が家に来る、という事でユーリが言われたのは客室付近に近寄らない事だけだった。

 勉強もしばらくは一緒に出来ないという事になったが、元々はユーリはオマケだったので仕方がないと諦めた。

 食事は兄が客室で一緒に食べるらしいので、ユーリはいつも通りだ。

 しばらくは本を読み、一人遊びを楽しもうと決める。一人とは言っても、マーサはいつも側にいるし。裏庭に行けばアヒル親子とシンも遊んでくれるだろう。


 話を聞いた翌日の午後、お茶の時間にそのお客様はやって来た。

 とは言っても、ユーリはそのお客様を見てもいない。午後の勉強を終えてお茶をしている時に来て、兄は出迎えの為に呼ばれて出て行った。客室に案内して、そのまま遊ぶのかと思ったら兄はお茶に戻って来た。

「にいちゃ、おともだちは?」

「……わかんねぇ。げんきなくて、くらいかおしてさぁ。あそぼうとおもったのに、へやからおいだされた」

 兄は困惑している顔で言った。元々、明るい性格でもなかったらしいのに今日は話しかけにくい雰囲気だったとか。

 せっかく遊べる相手が来ると思ったのに兄はガッカリしたらしくブチブチ文句を言っていた。

「かぁちゃ、やさしくしてあげてって。いってたよ?」

 首を傾げながら、昨夜母が言っていた言葉を口にする。

「そうだけどさぁ。ちかよるなってかんじなんだよな。なんかいかあそんだことがあるだけだしぃぃ」

 兄も何回か会った事があるだけで親しくはないらしい。拒否されたら困惑するのは無理ないだろう。

「おともだちになれば、たのしくあそべるの!」

「えー、なかよくできるかんじじゃないしさぁ」

 自分が関係ないのをいい事にユーリは兄の背中を押す事にした。この機会に仲良くなってしまえばいいのだ。

「がんばえ!」

 頑張れ、と言おうとして失敗する。その失敗も兄と離れている間に無くせそうな気がして、輝く笑顔で更に後押しする。

「えー、でもさぁ」

 渋る兄の背をグイグイと押す。ドアまで押して行くと、マーサが苦笑しながら開けてくれた。ドアの外に兄を惜し出す。

「がんばれぇ!」

 今度は上手く言えた事に満足して、満面の笑みで手を振った。そして、満足気な笑みでドアを閉じる。


「えぇー、ひどくない?」

 閉められたドアの前で兄が呆然とした顔でボヤいていた事をユーリは知らない。

 肩を落として悄然としながら兄は客室に向かったらしい。


 この時、ユーリは自分も関わる事になるとは思ってもいなかった。避けられるだけの広さがあっても、同じ家の中では遭遇する事がある。大人にとっては想定の範囲内の事だったが、ユーリにとってはこの時点では他人事でしかなかった。







思ったより進みませんでしたが、キリがいいのでこの辺りにしておきます☆

続きは早めに書ける、と、いいなと。

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