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異世界にも梅雨はありました。

 異世界にも梅雨はあるのらしい。

 転生に気付いてから三ヶ月ほど経った。今は夏になる前の梅雨に入った所だ。毎日のように雨が降っていて、外には中々行けていない。家の窓から裏庭を見ると、雨でも元気なアヒル親子は確認出来るけど。外で遊べなくて残念だ。


 ユーリは暇だった。兄は勉強に大分慣れて、午前中は座って話を聞けるようになって来たのだが。午後はまだ無理だ。とはいえ、身体を動かすのは好きなので先生や家人相手に剣術を教わると言って構ってもらっている。そこに3歳女児は危ないから交ぜてはもらえないし、面白くはないので遠慮したい所だ。という事でマーサに絵本を読んでもらったり、自分だけで絵本を読むのに挑戦したり、お絵描きや字の練習をしたりしていた。

 正直、ヤンチャな兄の相手をするより一人遊びする時間の方が楽でよかった。マーサもいるから寂しくはないし。普段構ってもらえているから言える事なのかもしれないけど。

 姉のローザは学校に通っているので、あまり接点はない。学校帰りも友人宅に寄る事も多いようで、会うのは晩御飯を家族で食べる時位だ。顔を合わせた時はユーリに声をかけてくれるので嫌われているわけではないと思う。兄とは口喧嘩になりがちな姉だけど、どちらかといえば面倒臭いのが嫌いなタイプなんだと思う。あまり話していないので分からないけど。

 両親は優しいし、よく気にかけてくれている。良い家族だなと思うし、既に大好きになっている。

 家族の誰かが家を維持する為に頑張らないといけなかった前世とは違うなと、時折しみじみする事もある。

 前世の家族も嫌いではなかったし、楽しい思い出もある。

 でも戻りたいとは思えない。

 懐かしくは思っても、恋しくはない。

 家のお金の有無とかではなく、愛情の質量と安心感が明らかに違う。

 もし、今の世界が夢ならと考えるとそっちの方が怖い位だ。

 もちろん、この世界でも大人になって生きて行くのは簡単ではないかもしれないという不安はある。でも、前世よりも選択肢は多いのだ。そしてその選択を尊重してくれるだろう家族に恵まれている。

 せっかく転生出来たのだから、子ども時代の今を楽しもうとユーリは完全に気持ちを切り替えていた。


「そういえば、ガァちゃんの羽毛。洗って綺麗に乾いたそうですよ。冬毛なので冬用の布団を作りますね。軽くて温かい布団になるそうなので楽しみにしていてください」

 本を読むユーリに、マーサが思い出したかのように声をかけた。アヒルのガァちゃんは、梅雨に入る前に冬毛を一気に落として夏毛になった。

 何か寄り添って来たな、と思ったら身体を震わせて一回り大きく膨らんで一気に羽毛を落とした。

 フワフワの羽毛に埋もれたユーリをアヒルは満足気に見ると機嫌良さげに離れて行った。

 マーサは笑いながら庭師のシンを呼びに行き。シンはやっぱり笑いながら羽毛の中から救出してくれた。

 その後、シンが持ってきた洗濯物を入れる用の大きな袋に3人で丁寧に羽毛を集めて入れた。集めた羽毛は綺麗に洗ってユーリの布団にしてくれるとシンは言っていた。

 早く出来ないかと楽しみにしていたけど、確かに夏に冬布団はいらない。素直に頷いて「たのしみ!」と返しておいた。

 兄から「いいなぁ」と言われたけど、そこは譲らずにもらっておこうと思う。先に仲良くなった特権という事で。

 何となくアヒルのガァちゃんもユーリにくれたような気もするし。

 ちなみに、羽毛から脱出して呆然とするユーリに何故か雛達も寄って来た。ピィピィ言いながら取り囲まれたのが謎だった。

 羽毛をくれようとした、のかもしれないけどまだ小さい。冬毛も夏毛もないのか、当然生え換わらず。家に来た当初よりも一回り大きくなった身体から黄色い羽毛が少し抜けた位だった。黄色い羽毛は貴重らしいので、有り難く回収させてもらったら何故か雛達も満足気な顔をしていた。

 自分達の羽毛の価値をやっぱり理解しているのかもしれない。

 ふと、布団だけではなく羽毛を入れた上着とか出来ないのかなと思う。この世界にあるのかは分からないけど。冬が近付いて来たら聞いてみようと決めた。

 もし上着に羽毛を入れるというものがこの世界になかったとしたら、上手く説明出来るだろうかと考える。まだサ行が上手く発音出来ないし語彙も少ない。上手く話せるようになるにはどうしたらいいだろうか。

 声を出して話す練習をするのが一番だろうけど、大人に幼児のオシャベリに付き合わせるのは申し訳ない。一人でも出来る発語練習、と考えて手元の本が目に入った。本の音読したら練習になるかもしれないと思いつく。

 こうして、ユーリの梅雨の日課は本の音読になった。

 微笑ましげな笑顔のマーサに見守られながら地道に本を読み、梅雨が明ける頃には大分発音が改善されるようになる。

 とはいえ、日本とは言葉が違うので言葉を増やす為に増々読書に勤しむようになり。変に家族に心配されたりするのだった。

不定期更新ですみません。

次はもう少し早く更新出来たらいいなと思っています♪

ブックマークしてもらえると更新したのが分かるので、よかったらお願いします☆

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