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名もないアヒルに名前をつけましょう。

少し間が空きました。

もし待ってくれていた方がいればすみません!

話が一段落ついたので、どうしようかなと思っていました。

ユーリが5歳になる前に、もう少し何かある予定ではあります。

 初めて外に出かけてから1週間が経った。この世界では日曜日にあたる闇の日。勉強もお休みなので、ユーリは朝食後に裏庭に来ていた。休みなので暇だったのか兄も付いて来た。

 いつもなら午後も剣の稽古と称して兄と遊んでくれる先生も出かけているからだと思う。ヤンチャな5歳児に付き合うのは疲れるから休みは休んだ方がいい、と内心で労う3歳児。妹と遊んであげるつもりの兄の心知らず、である。

 裏庭にはしっかり居着いたアヒル親子が主顔で出迎えに出て来た。ユーリは最近ようやく突かれてなくなって来たが、兄は出会い頭に親アヒルに突かれている。それでも攻撃というよりは挨拶という位、少し痛い程度で済んでいるので人には慣れたのだろう。痛がる声を上げる兄と同じ目線の大きさのアヒルは、勝ったと言わんばかりの小馬鹿にした顔をしていた。見た目は可愛いのに、態度は可愛くない。

 気が済んだのか突くのを止めたアヒルを兄は涙目で見た。

「なんだよ、オレがたすけてやったのに」

 アヒルは兄の存在を忘れたかのように地面を突いて虫を出し、雛達がそれに集っている。ユーリも虫探しを初めていた。前世では虫は苦手だったけど、3歳児にとっては虫は不思議で面白い存在だ。綺麗だったり、強そうだったり、小さいのに色々な動きをしたり、気持ち悪さすら面白く感じる。自分で見つける、観察して新しく知るというのがまた楽しいのかもしれない。そんな分析をしつつも面白いものは楽しむのがいいと割り切る事にしている。3歳児にとって、毎日は発見の連続だ。目新しさを常に求めて世界を知り、知識を吸収しながら身体能力も身につけていくのだろう。

「なぁ、なにしてるんだ?」

 放置されて面白くなかったのか兄が声をかけて来る。

「ありしゃん!」

 異世界にもアリがいた。身体の色は透明に近く、真ん丸な黒い目をしていて意外に可愛い。野菜などを食べてしまう小さな害虫を駆除してくれると庭師のシンが教えてくれたので益虫と言えるだろう。捕まえたりしなければ大人しい虫らしい。噛まれると弱い毒があるから念の為、触らないようにとは言われていた。列を作って移動している姿が不思議だ。

「おもしろいか? もっとカッコいいむしならわかるけど」

 カブトムシみたいな甲虫の事だろうか。異世界らしく、ハト位に大きな甲虫がいるらしい。虫を見つけて遊んでいたからかシンが教えてくれた。森など、木が多い所なら割といるらしい。こっちでも夜行性のようで、普段はあまり見る事はないそうだ。

 抱っこ出来る大きさとか、それ以上に大きな虫はさすがに嫌だなとも思う。中には可愛くて賢い虫もいて、ペットのように飼う事もあるらしい。虫を飼う気にはなれないなと思いつつ、可愛くて賢いならいいのかとも考える。

「いえにはつれていくなよ。あいつらがもういるからいいだろ」

 難しい顔をしていたのか、兄が声をかけて来る。家の中にまで虫を連れて行く気はなかったが即座に頷いておく。

「そういえば、あいつらのなまえはもうきめたのか?」

 アヒル親子を指して言うのを聞いて、そういえば飼っているんだなと思う。ユーリにとってはアヒル親子は可愛くて好きだけど、付いて来たという存在で飼っているという感覚ではなかった。前世ではペットを飼いたくても飼える環境ではなくて諦めていたから余計だ。

「……なまえ」

「なんだ、かんがえもしなかったのか?」

 名前をつける事すら頭になかった事に呆然としていると、兄からは呆れられた声をかけられた。

「ユーリ様はお世話に夢中でしたから、名前をつける事を思いつきもしなかったのだと思いますよ?」

 側で見守っていたマーサが助け舟を出してくれた。

「せっかくだから何か可愛い名前をつけてあげたらいかがですか?」

 ペットを飼う事が前世の憧れだったユーリは、その実感に目を輝かせた。

「あいっ!」

 元気よく返事をして、ドキドキワクワクしながら素敵な名前を考え始めた。

 最初はクチバシが桜色だからサクラにしようと直感的に思った。けど口に出して言おうとして、噛まないで言える自信がなかった。サクラが「しゃくら」になる気がする。可愛い名前にしても、ちゃんと呼べないなら意味がない。

 そもそもが名前を考えた事などないのだから苦手だ。前世の両親だって、子どもに生まれ月の名前をつける位だ。意外としっくり来る名前を考えるのは大変なのかもしれない。それに他の人にも聞かれる事もあると考えると、凝りすぎた名前も恥ずかしい。そうなると単純な名前にした方が変に恥ずかしくない気もする。

「……ガァちゃん、ガァちゃんにしゅる!」

 名もないアヒルにつけた名前は世界に一つしかない、なんて事はなく。幼児でも呼びやすいありふれたものになった。

 宣言するのも恥ずかしかったが、ユーリは開き直る事にした。

 兄は何故か爆笑して、マーサには微笑みを浮かべて「かわいらしい名前ですね」と言われたけどいいのだ。

「ガァちゃん!」

 ユーリが開き直ってアヒルを呼ぶと、アヒルは気付いて「ガァ」と鳴いてくれた。

 アヒルの足元では雛達がピィピィ鳴いて、何故か寄って来てくれたが8羽の名前を決める事を考えると気が遠くなった。呼びやすくて覚えやすい名前、なんて無理。

 そんなユーリの心を知ってか知らずか、雛達はピィピィと文句を言うように取り囲んだのだった。

 




 


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