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日本の家族。

個人的に大家族番組が昔から大嫌いで、批判を含んでいますので閲覧注意でお願いします。

あ、番組が嫌いなだけで家族そのものは個人の自由かなとは思います。

 ユーリが異世界に転生して、異世界と末っ子生活を楽しんでいる頃。


 日本の生家である木村家は、第一子を亡くした悲しみに浸る間もなく生活に追われていた。

 木村家は亡くなった葉月を筆頭に7人も子どもがいて、一番下は3歳とまだ手がかかる年だったからだ。


 故長女・葉月(17)

 長男・文月(15)

 次女・皐月(12)

 三女・弥生(10)

 次男・卯月(8)

 四女・如月(5)

 三男・睦月(3)


 家族が多ければ、それだけ生活に手間はかかるし。子ども達は些細な事でも本気の喧嘩になる事もある。

 テレビで放送する大家族ものを他人は微笑ましく見るのかもしれないが、当人にとっては逃げ場のない地獄の場合すらある。両親は笑って見られるタイプだったが、次女の皐月は笑えなかった。

 家族のプライバシーを晒されて、子ども達は学校で何か言われないのかと心配になった。その可能性を考えてもいないだろう親やテレビ局側も信じられない程に無神経だと思った。

 ご近所で大家族として知られているなら今更なのかもしれない。喧嘩して怒ったり泣いたりする姿も日常で当たり前で、恥とは思わないのかもしれない。けれどプライバシーが守られない状況の当然さが怖かった。

 番組を見ている人達が応援したり見守る気持ちでいるだろう事は想像出来るし。家族が多い事を批判されたいわけでもない。

 ただ、娯楽として扱われるという事は普通でないと言われているような気もした。「良い意味で特別」とかいう肯定的な気持ちからなのも分かる。

 けれど、皐月は「普通」が良かった。毎日が賑やかで明るいというイメージに反して、当事者である子どもは家族とはいえ「共同生活」を送る相手が多い日常は大変だ。家族相手でも個人の領域という意識はある。それを守るのは狭い中では難しい。

 ひとりっ子の友人のように自分の部屋を与えられる事もなく。自分だけの物を確保する事すら難しい。大事な物を隠しておける場所もなく、無造作に扱われたり遊ばれて壊される事も普通に起きる。

 亡くなった姉の葉月は、弟妹間のトラブルを仲裁して回り。掃除や洗濯を母と共同でこなし。弟妹のお迎えや行事も把握して、学校の宿題をさせ持ち物を注意管理したりしていた。母のサポートというよりは、二人目の母のようだったと思う。

 いつも元気で家事をこなして、細かい事に気付いては小言を言い弟妹のフォローをする。それは当たり前の事ではなかったのに、当たり前にしてしまっていたのだと皐月は思う。

 皐月は姉を疎ましく思っていた。母親でもないのにうるさく注意して来て、家庭内を仕切ろうとする。好きでしている家事手伝いを自分にも押し付けようとする。忙しい両親が一番構うようにも見えていた。

 学校が上がる度に家族に注目されるのもズルイと思っていた。初めての事は全て姉に持っていかれる。洋服も姉のお下りばかりで自分好みではない。

 いつでも馬鹿みたいに笑って、こんな窮屈な家で居場所を懸命に確保するような姿は滑稽だと見下していた。自分は絶対に早くここから抜け出してみせる。そう思っていた。

 姉にいくら言われても家事は手伝う事はなかった。その代わりに自分の事は自分でやった。自分の分の洗濯物だけは取り込んで畳んでしまったし。持ち物も管理して、宿題も忘れた事はない。手間はかけなかった。

 兄の文月よりはマシだと思っていた。男だからと家の事はしないし、自分の事も何一つしない。宿題も忘れる事はあるし、学校で明日必要な物を夜に思い出して要求したりするような兄と自分は違うという自負があった。

 姉の手伝いをする二つ下の妹の弥生の事も要領が悪いなと思っていた。姉に懐く姿にイライラした。家事を手伝わない自分は何も悪くない。子どもとして当然だし、本来は母の仕事なのだから。勝手に家を仕切る姉が余計な事をしているだけなのにと。


 けど、姉が亡くなってから家は回らなくてなった。家の中は散らかり、弟妹は些細な事で揉めて喧嘩をする。喧嘩に負けた方が叫ぶのは母ではなく姉の名だった。

 姉は家族間では葉月を略して「はーちゃん」と呼ばれていた。亡くなってからもその名を聞かない日はなかった。

 皐月も姉を疎ましく思ってはいても憎んでいるわけではなかった。時折、胸が痛んだ。もっと姉を手伝っていたら、階段から落ちるのに気付けただろうか。助ける事が出来ただろうか。そうしたら、今も変わらず呑気な顔で笑う姉が家にいただろうか。

 そう思うのと同時に、一人でこの家から逃げ出せてズルイと思ってしまう自分にも気付いて自己嫌悪する。姉は何も悪くないのに、勝手に目の敵にする自分がいる。


 姉が亡くなって少ししてから、母が家族に爆弾宣言をした。弟か妹が生まれるという報告だ。嬉しそうにお腹を撫でながら、今は三か月だと言う。姉が亡くなった穴を埋めるように増える子ども。

 両親の事は嫌いではない。でも、家の状況を見て何も思わないのか考えないのか。

 姉に向けていた反発や嫌悪が起こる。そこで初めて、自分が姉に甘えていた事に気付いた。本来、親に向かうべきものを姉に向けていただろう自分に。

 姉は自分の態度に何を思っていたのだろう。いつしか可愛気のない態度ばかり取るようになった妹を。姉を殺したのは誰だったのだろう。事故なのは分かっている。でも、もしもあの時に姉をもっと気にかけていたら何かが変わったのでないだろうか。

 後悔は後からしても遅い、という事を皐月は思い知った。


 誰にも言えない心の傷は深く刻まれる。消える時が来るのかは分からない。

 過ぎた時は戻らない。

 亡くなった人に伝える手段は何もない。

 起きた出来事は変えられない。

 人は自分の人生を生きる事しか出来ない。何を思い、どう生きるのか。それは死者には一切関わりのない事なのだ。

 

 



 

土日はお出かけ予定だったので投稿出来ないと思っていましたが、何気なく書き出したら書けました☆

読み返した方がいいかもなと思いつつ、勢いで投稿しておきます。

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