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静かな湖畔の森の影から。

 心地良い疲れに眠りに落ちていたようだ。腰の辺りをゴソゴソと何か探られているような感じに意識が浮上する。

 ピピピ、チチチ、という鳥の声とは別に何かガァガァと聞こえる気が。

 何の声だろう、と思った事で完全に目が覚めた。

 ガァガァという声は腰の辺りから聞こえる。何か探るように小突かれる感覚も。そうっと視線を動かすと、何か白い物が忙しなく動いていた。

 アヒル? 顔を上げた鳥と目が合った時に思った。クチバシが桜色のアヒル、にしか見えない。ただ、少し大きい。自分と同じ位の背丈がありそうだとユーリは思った。3歳児と同じ位の背丈の鳥はこの世界では普通なのか、大きい方なのかは分からない。そして、何故ポケットを突くのかも。

 ユーリが身を起こすと文句を言うようにガァガァと声を上げる。アヒルは後退りしたものの、頭を上下に振りながら見つめて来る。もしかして、と思ってスカートのポケットを触るとアヒルは期待するかのように黒い目を輝かせた。

「こりぇ?」

 ポケットから取り出したのはパン。ヒヨドリに似た鳥にもう右ポケットに入ったパンは全てあげてしまったけど、左ポケットにはまだ入っていた。2つも持って来たのかという話でもあるのだが。


「はい、どうじょ」

 アヒルの一口大にちぎったパンを手にのせて差し出す。アヒルは欲しそうな顔をしつつ躊躇している。しばらく待っても来なかったので、投げてあげる。

 繰り返すと段々距離が近くなり、手から食べるようになる。その次にちぎる前のパンにクチバシが伸びて来た。

 ユーリは声を上げて笑いながら避けるものの、奪い盗られた。盗られる時にモフモフのお腹の羽毛を堪能出来たので満足だ。


 アヒルが戦利品のパンをくわえて胸を張ると、どこからかピィピィという声が聞こえて来た。目の前にいるアヒル後方の草陰、声の方を見ているとピョコンと黄色い小さな鳥が転がり出て来た。アヒルの雛かもしれない、と思いつつ驚いていると。最初の子がコケた上にユーリに見つかった事に驚いて固まっている内に、その後ろからもぞろぞろと雛が出て来る。数えてみると8羽もいた。ユーリを見て驚いて固まる子、パニックでピィピィと声を上げながら動き回る子、好奇心からか仲間の後ろに隠れながら見て来る子。中々、個性豊かだ。

 パンを奪ったアヒルは母親なのか、動揺しているのか雛に寄って行くものの右往左往している。それでもユーリとの間に立ち、守ろうとする姿はさすがだ。

 注意しようとしたのか、ガァと鳴くとポトっと口にくわえたパンを落とした。雛を守るのが先か、パンを確保すべきか迷うように首を振っていた。

 ユーリは歩み寄り、その落としたパンを手に取った。そして雛でも食べられるように小さくちぎると地面に撒いてあげた。


 パンが大きいと鳥にとっては食べにくい。人がいる場所では食べるのを諦めて去る事もある位だ。小さくしてあげると、一口で食べられるのでその場で口にしてくれるのだ。

 前世では、パンが大きくてもハトは気にせず集る事が多かったけど、スズメには有効な手段だった。小さな鳥は用心深いので、一口で食べられない大きさだと咥えて飛び去る事もある。一口サイズなら、その場に居座った方がより多く食べられるという欲が出るのだろう。仲間が多く集まると闘争心も起こるらしく、自分が食べる主張をする声を上げながら夢中になって取り合ったりもする。気を許すと近くにも寄って来るし、手から食べてくれたり肩や膝の上に乗る事もある。肩や膝は、毎日通って顔を覚えてもらうまでいかないと無理だけど。人慣れしたスズメなら、手から食べてくれる事はある。近くに寄って来てくれるだけでも充分可愛いのだけども。


 地面に撒いたパンを夢中になって突くアヒル親子も可愛かった。ユーリはしゃがんだ体勢でニコニコと見守った。

 触ろうと手を伸ばしたりするのは悪手だ。即座に信用を失い逃げられる事もある位に。何より可愛い姿を間近で観察出来るだけで満足だった。鳥の姿さえ見られなかった午前中に比べたら、すごい進歩である。


 ほのぼのとした時間を過ごすユーリは警戒を忘れていた。

 森の中には何が潜んでいるのか分からない。その危険な生き物に目をつけられた事にユーリは気付けなかった。







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