鳥と遊ぶのは楽しいですっ。
耳を澄ませて鳥の鳴き声や微かな葉擦れを聞き、生き物と気配を感じ取れるよう意識を集中する。
小鳥や小動物と出会うには、存在に気付く必要があるからだ。
犬や猫や鹿という大きな動物でも自然中では気配を消す位だ。小さくて臆病な生き物と出会おうと思ったら慎重に探す必要があるのだ。自然の生き物はまず触れる事は出来ない。けれど、直に見る事、出会える事が何より嬉しいもの。動物好きにはそういう所がある気がしている。
自分が変わってるとかではない、はず! と、主張したくなるのは自身の変質的な所に気付いているからなのかもしれない。
昼食後、ユーリは気力満々で木々を見上げながら歩いていた。
森の中には入っていない。森の中は安全とは言い切れないので用心はしているのだ。粘り強く見つめる内に色鮮やかな鳥や地味な色目だけど木をつつくキツツキのような鳥を見る事が出来た。ユーリが小さく、姿を見られても声を上げたり走り寄ったりしないからか鳥達は隠れなくなった。好奇心が強い鳥なのか、様子を伺うように見て来る鳥もいる。
「鳥頭」という言葉もあるけど、意外と鳥は賢い種も多い。
そして賢い鳥は状況判断が出来、好奇心もあり遊び好きでもある。
ユーリはポケットからパンを取り出して、ちぎって一口食べた。そして、様子を見るように視線をチラチラ向けて来るヒヨドリに似た茶色の鳥にパンをちぎって見せる。ちぎったパンを振ると「いつでも飛び立てるよ」と言うように前かがみの体勢になった。
ユーリはにっこりと笑い、「いくよー」と言うとパンを上に投げた。鳥は少し反応が遅れたものの飛び、滑空してパンを空中キャッチした。
「しゅごーい!」
ユーリが歓喜の声を上げると心無しか得意気な顔をして胸を張る鳥。そして前かがみの体勢になる。次の催促だと察してパンを投げる。
取り易いように投げたはずでもキャッチ出来ないと「ヘタクソ」と言うように見て来る鳥は、そんな所もヒヨドリと似ていた。もっと頭は良さそうな気がする位だ。もしかしたら、森に来る人間から食べ物をもらったりしてもいるかもしれない。それなら直ぐに乗って来るのも分かる。
そうやって遊んでいると、鳥の数が増えて賑やかになった。10羽の鳥がパンを狙って競い合うような声が響く。前世での餅投げに夢中な人間に似ていて面白いし楽しい。餅を撒いた事はなかったけど、こんな気分なのだろうか。鳥同士が喧嘩しないように平等にあげたいけれど中々難しい。
ここにはいないけど、弱い個体や幼鳥を優先すると妬まれて嫌がらせされる事もある位らしい。猿もそうだけど、年功序列みたいな強者のルールがあるのが自然界というものだ。それでも親鳥は自分で餌が食べられない雛鳥の内は、懸命に餌を集めるし。雛鳥を狙う猛禽類や蛇にも果敢に立ち向かうから薄情ではない。自立したら対等な競争相手になる所はあるのだろう。
意外と大喰いな鳥はパンをよく食べたので、ユーリはパンを投げるのに疲れてしまった。
地面に座り込み、それだけで足りずに横になった。寝転ぶと木々の葉擦れから青い空が見えた。さり気なくユーリの上を飛び交い存在アピールする鳥達も。そんな鳥達は可愛くて、疲れたけど楽しかった。こんな疲れなら悪くないし、むしろ満足だ。
転生しても自分は変わらないのかもしれないと思うと笑ってしまう。
前世は忙しくてこんなにのんびりした時間は中々持てなかったけど、今世はこれからものんびり生きられるかもしれない。
生まれ変わった事をご褒美のように感じて、いるかどうかもしれない神様に感謝した。
草の上に寝転がって満足そうに微笑む幼女は、木陰から見つめる目がある事には気付かなかった。




