第3話 フューチャーライフゾーンの衝撃
大屋根リングを抜け、会場マップを眺める。
色とりどりの展示の中で、僕の目が向いたのは会場の西端だった。
「フューチャーライフゾーン」
スマートモビリティやカーボンニュートラルな暮らしが再現されたエリア。
瀬戸内海を望む景観が特徴で、万博会場を構成する「パビリオンワールド」「グリーンワールド」「ウォーターワールド」の一つとして位置づけられている。
閉幕の日、SNSで見た写真の中で最も心を動かされた場所――それがここだった。
会場の道はフラットで、歩きやすい。
人の流れに沿って進むと、やがて視界が開け、海風を感じるエリアに出た。
「……ここが、フューチャーライフゾーンか」
最初に目に入ったのは、静かに走る自動運転シャトル。
小型のモビリティが音もなく移動し、来場者を次の展示へと運んでいく。
排気ガスのにおいはなく、空気は澄んでいる。
ここでは、カーボンニュートラル社会が“当たり前”として再現されていた。
さらに、未来住宅の展示も目を引いた。
壁面に植物が生い茂り、再生可能エネルギーで電力をまかなうモデルハウス。
自然と都市が共存する空間は、僕の知る街とはまるで別世界だ。
「……すごすぎる」
言葉が勝手に漏れる。
ここでは単に技術を見せているのではない。
「未来をどう実現するか」という問いに、世界中が答えを出そうとしていた。
前の世界線で、僕はこの景色を知らなかった。
そのまま閉幕を迎え、後悔だけを抱えて生きていた。
でも今は違う。僕は確かに未来を見ている。
「もっと、この世界を見てやる」
拳を握りしめ、僕は会場マップを再び広げた。
次の目的地は――世界の文化と料理が集まる「国際ゾーン」。




