第1話 閉幕の日に
はじめまして。
本作は「大阪・関西万博」を舞台にした青春タイムリープ物語です。
実際の万博を体験しているかのように楽しめる雰囲気を目指して書いていきます。どうぞお付き合いください。
2025年10月13日。
大阪・関西万博、閉幕の日。
僕は自分の部屋で、スマホを握りしめたまま天井を見つめていた。
SNSのタイムラインには、友達が投稿した写真や動画があふれている。
笑顔でピースするクラスメイト。夜空を彩るイルミネーション。見たこともない料理を頬張る姿。
画面越しに見るだけで、あの場所がどれほど盛り上がっていたかが伝わってきた。
「……俺、何してたんだろ」
つぶやいた声は、部屋の壁に虚しく跳ね返る。
万博が始まった頃、僕は「人混みが苦手」「チケットが高い」「どうせ混雑してるだろう」なんて言い訳を並べて、結局一度も行かなかった。
誘ってくれた友達にも適当な理由をつけて断った。
あの時は、自分が何かを失うなんて考えてもいなかった。
けれど、閉幕して初めて気づいた。
僕だけが、取り残されたんだ。
「みんなの話題についていけない……」
「一緒に行った思い出もない……」
SNSの画面をスクロールすればするほど、胸の奥が締め付けられる。
後悔が押し寄せてきて、眠ることすらできなかった。
その夜。
うとうとと浅い眠りに落ちて、ふと目を覚ますと、外から聞き覚えのあるフレーズが聞こえてきた。
「大阪・関西万博、ついに開幕です!」
テレビのニュースキャスターの声だ。
耳を疑った。
慌ててスマホを開くと、表示されていた日付は――2025年4月13日。
万博、開幕初日。
「……は? 嘘だろ」
心臓が早鐘を打つ。
何度もカレンダーを確認した。
現実感がなかった。
けれど、もしこれが夢ではないのなら――。
「今度こそ……行くしかない!」
後悔で胸をいっぱいにした昨日の自分に、さよならを告げるように。
僕は万博へ向かう決意を固めた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
第1話は「後悔」と「タイムリープのきっかけ」を中心に描いてみました。
次回からはいよいよ開幕日の会場に足を踏み入れ、主人公が万博を体験していきます。
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