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君に春風を  作者: 讀茸


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第三十話 思い出して、ペインフルリベンジャー

 生まれつき、俺の体は魔力を通さなかった。

 呪われた子、なんて故郷では呼ばれていた。

 十三の夏、俺は故郷を追われた。

 親父が自殺したのが原因だった。


 ――――すまない、ファンガル


 遺書にはそう書いてあった。

 俺には何が何だか分からなかった。

 親父が謝るようなことなんて一つも無い。

 むしろ、謝らなきゃいけないのは俺の方だ。

 俺のせいで村のヤツらから酷い嫌がらせを受けた。それに耐えかねてお袋は家を出て行った。親父が日に日に痩せていったのも知っている。

 全部、俺がこんな体に生まれたせいだ。

 俺がまともに生まれていたら、親父にこんな苦労をかけることはなかった。

 親父が死んで寄る辺を失った俺は、村から追い出された。

 俺は身一つで村を追い出され、運悪く大陸きっての危険地帯に足を踏み込んだ。

 オルトーン原生林。通称、死の森。俺が迷い込んだ暗い森は、文字通りこの世の地獄だった。

 背の高い木が茂らせた葉に日光は遮られ、昼間も夜のように暗い。

 暗闇の中襲い来る魔物や肉食獣から身を守らねばならず、毎日が死と隣り合わせ。

 そんなサバイバルをどれだけ続けただろうか。

 ある日、不思議な音が聞こえたのだ。

 ブゥンと響く大きな音。腹の底に響くような重低音。

 気付けば、俺は音のする方に足を進めていた。

 音の正体が何であるか、なんて考えなかった。

 心身ともに限界だった。

 擦り減った精神で正常な思考などできるはずも無く、ただ光を求める虫のように足を動かした。

 そして、俺は見た。

 瞼が焼けるほどの眩い光を。


「――――撃て、ルナストラフィーア」


 気付けば、森を抜けていた。

 光の通らない死の森を抜けた先、そこは崖沿いの街道だった。

 そこで少女は弓を撃っていた。小柄な体躯に似合わない大弓を構え、崖の向こう側の岩を粉砕していた。

 俺が聞いていた音は、少女が弓矢を放つ際に響く轟音だったのだ。

 綺麗な翠の瞳をした少女だった。


「嘘、死の森から出て来た。えっと……大丈夫ですか?」


 焼けるように瞼が熱かった。

 オルトーン原生林の暗闇に慣れた目では、晴れた日の陽射しでさえ眩しくて仕方ない。

 それでも、俺は目を離せなかった。光の通らない死の森から、俺を掬い上げた少女の姿から、目を離せなかったのだ。


「顔色悪いですけど、本当に大丈夫……?」


 そう、俺は体調を訊かれたのだ。

 だから、答えようと思って、俺は口を開いた。

 久しく、人の言葉など発さなかった口を開いて――――



「――――だい、じょう……ぶ…………」


 夢から目が覚めた。

 俺がいるのは護送用の馬車の中。

 手枷と足枷で動きを制限された上に、鎖で上半身と腰を座席に括りつけられている。

 向かいの席には、見張りの騎士が座っていた。居眠りでもしていれば良いのに、真面目にも俺から目を離さない。


「……そうか」


 夢から目が覚めて、俺は自分の置かれた状況を思い出した。

 王女誘拐に失敗。サーガハルトから派遣されていた護衛に叩きのめされ逮捕。身動き一つできないように拘束されて、監獄か或いは処刑台に護送されている。


「負けたのか、俺は」


 つまる所、敗北したのだ。

 異常な体質に生まれ、そのせいで故郷を追われて、死ぬような思いで生き延びて、一人の王女に救われた。

 ルナトルフィアでは受け入れられて、大切な仲間がたくさんできて、それをサーガハルトにぶち壊された。

 理不尽だと思った。こんな酷い話があってたまるかと憤慨した。

 強いというだけで全てを奪っていく強者に、弱者の報復を食らわせてやりたいと思った。

 理不尽な強者(サーガハルト)に勝ちたいと思ったのだ。


「負けたんだな……」


 護送用の馬車の中、項垂れるように呟いた。

次回、最終話です。

折角ですので、良ければ感想など書いていってください。

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