十年後と旅立ち
オルレイは足元を見る。
足元には傭兵の死体が転がっており、それをオルレイは見つめている。
「……ははっ」
自虐の笑みが出た。
自身が抱えてきた苦しみや不幸がちっぽけに感じた。
命が亡くなるという場面に遭遇し、家族に殺されなかっただけでなんて自分は幸運なんだろうか。
「……私は世界を知らなかったんだ」
オルレイは変わってしまった。
冷たい戦場と血の匂いを知ったがだがオルレイは殺し合いがしたいわけじゃないただ生きて死のうと思う。
老いて死んでいく事を決めた。
そう思いながら夢から覚めた。
「起きたか」
目を覚ますとロテナがいた。
「……私は気絶していたんですね」
そうポツリとオルレイは呟く。
「……まぁな。 すまない別動隊が本陣を襲ったそうだな。 幸いノヴァのおかげで死者は二名だけだった」
「そうですか」
そう言ってオルレイは淡々と頷く。
「あのロテナさん」
「なんだ?」
「私明日から旅に出ようと思います」
「な、なんで!?」
するとロテナが驚いて立ち上がった。
「私は傭兵なんて血生臭い世界にいちゃいけない人間なんだと理解しました。 なので私はこの世界から逃げます」
「だ、ダメだ! 五歳の君に何が出来る!?」
ロテナが肩を掴んでオルレイに怒鳴る。
「私はもう決めましたもうほっといて下さい」
「……ダメだ。 この帝国。 南のゲネイア。 西のリルア。 そして東の刀国どこも危険だ。 五歳の子供の一人旅なんて危険過ぎる」
そう言ってロテナが険しい顔を作る。
「じゃあどうすれいいの?」
「……十年」
「え?」
「十年間私がお前を鍛えてやる。 そしたら旅でもなんでも好きにしろそうすればお前は自由だ」
「……自由」
「ああ自由だ」
「……分かりました。 私は自分を鍛えます」
「よし! 今から修行をしよう」
こうしてオルレイの修行の日々が始まった。
「武器は何がいい?」
「……ロテナさんと同じ物で」
「分かった」
武器庫に行ったが結局ロテナと同じく長い杖を望んで鍛錬に臨んだ。
朝は走り、昼は剣術と魔術をブリットとリーゼから勉強し、夜は瞑想と一時間のみロテナと長杖による魔法を交えての実戦を設けて戦いの心と経験を育んだ。
これ繰り返し、オルレイは成長して、十年が経った。
「……ロテナさんありがとうございます」
「……本当に行くのか?」
「はい」
「そうか達者でな」
「はい」
こうしてオルレイは旅立った。