夢と安息
夢を見る。
『なんで言う事が聞けないの!』
『おい! 話を聞いているのか! ◼️◼️◼️』
『ご、ごめんなさい。 ごめんなさい!』
『お前はクズだな?』
『……はぁ何でこんなに魔力ないのかしら』
目の前にいる母や父、兄や姉と思われる人影が少女を罵倒する。
そんな罵倒に少女は縮こまって涙を流す事しか出来ない。
ある日だ。
『お嬢様どこかへ遊びに行きましょう』
『……いいの?』
『はい! その代わり目隠しをして下さいね?』
一人のメイドが少女に笑いかけて少女は外へ遊びに出掛けた。
そして目隠しを外されるとそこは雪山であった。
『ここは? ねぇ?』
『さようなら』
『ま、待って! 置いて行かないで!』
少女を連れてきたメイドは転移の魔法で少女の目の前から消えた。
『うぅぅぁぁぁぁぁん!』
少女は捨てられた事に激しく苦しんで涙を流して雪を背景に悲しみの籠った叫びを上げた。
「うぅ。 ごめんなさいごめんなさい。 ちゃんとします。 頑張ります」
「……熱があるな。 精神的な物か? ……それとも」
眠っている少女の体が非常に熱い事を察してロテナが少女の額を触る。
「ねぇはやく安全な場所に行きましょう。 子供じゃあこの寒波はきついわ」
「そうだなリーゼ。 もうすぐで宿があるそこに泊まろう」
ロテナに声を掛けたピンク髪に青い瞳そして左腕の隻腕が目立つ騎士の様な格好をしたリーゼの言葉にロテナは頷く。
「しっかし子供は宝だろ? 捨てるなんてひでぇなぁ」
「それは経験則からか? ブリット?」
ロテナは茶髪に大剣を背負い、髭が目立つ四十代くらいの男ブリットに声を掛けて笑う。
「チッ、ガキだろ? 孤児院にでもぶち込めばいいんだよ!」
そんなブリットの言葉に黒髪に青い瞳の目立つ七歳くらいの少年が反発する。
「そんな事を言うなノヴァ。 お前も似た様な物だろ? 年上だからと言うのは違うが孤独という面では灰の放狼団のメンツは大体似た様なものだ。 実際に私も孤児だったからなぁ」
「っ! ご、ごめんロテナ。 お、俺は!」
「大丈夫だ。 私にはこんなにも暖かい家族がいるからな。 さぁもうすぐ宿だ。 物資の調達と休息を取ろう」
「「「おう!」」」
ノヴァは自身の失言を恥じて涙を流しながらロテナに謝る。
そんなノヴァの頭を優しく撫でて、ロテナは微笑みを浮かべる。
「ひどい親がいるものだ」
「ご、ごめんなさい」
胸に抱く発熱した少女を見ながらロテナはまるで親の仇を呟く様に呪詛を吐いた。