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第7話 トランプの騎士隊

 ◇


 次の日の朝。魚安家の洋館では団員達が戦闘の準備をしていた。父親を殺して当主になった春也は椅子に座って堂々としており銀知雄と要七がひざまずいている。


「どうだ、銀知雄? 康を殺す準備はできているか?」


 当主になった春也の懸念は生きている弟だ。ボーゾーストを送って宣戦布告をしてきたので兄は怒っており弟を殺すことに、なんの躊躇もない。


「はい。順調です。磯木家の戦力はすべて春也様についており鮟鱇田第一基地の団員は、ほとんどがこちらにつき、周辺の貴族も康の味方になるものはいません」


 春也に忠義をつくす銀知雄の家は全面協力で康に勝ち目がないので第一基地の団員達は勝つ方につき、周辺の貴族は中立や新当主を支持しており康の味方は少ない。

 ちなみにボーゾーストが失敗したので無頼党鮟鱇田支部は切り捨てた。そのため無頼党鮟鱇田支部が滅んだことを知らない。


「そうか。弟の味方はせいぜい婚約者がいる甘瓜家だが話にならないな」


 有能な側近の言葉で当主は安心し喜んだ。甘瓜家が康の味方になっても勝利できる。


「これだけの戦力がいて康に味方がいないので春也様が敗北することなどありません」


 銀知雄は春也が信頼している有能な側近で油断などなく康を嫌っており、ようやく殺せるので喜んでいた。


「康のやつが怖気づいてこないかもしれません」


 自分達の勝利が確実で康を恐れていない要七は余裕の笑みを浮かべている。この戦闘がうまくいけば父親が当主の重臣になり彼の人生はバラ色になる。


「そうなったら、こちらから攻めればいい。きたら盛大に迎え撃つ。どのみち、むかつく弟は終わりだ」


 春也は悪い笑みを浮かべた。弟の嫌なところばかり知っていて彼の隠していた強さを知らないので余裕があり当主気分だった。


「父上」


 高そうな服装の頼りない男児がやってきた。


沙吾さご


 男児を見て春也は微笑み、殺気がなくなった。この男児は春也の息子 魚安うおやす沙吾さごだ。


「身の程知らずの叔父の最期が早く見たいです」


 生意気な男児は父と同じで康を嫌っており彼の死を望み、無邪気に笑った。そんな彼が立派に見え、将来が楽しみなので父と部下達は喜んでいる。


「もう少しだ。康を殺せば私達は幸せになり、お前は私の跡を継いで魚安家の当主になる」


 息子と妻のためなら邪魔な弟を平気で殺すことができる。


「はい。僕は父上のような立派な当主になります」


 父はうれしくて泣きそうな顔になった。沙吾は両親と部下達に大切にされているが兄の遺伝子を残したくない康は容赦なく幼い息子を処分する。当主として父として負けるわけにはいかない。

 優秀な女傭兵 傭ヘドロは親子のことなどどうでもよく康と早く戦闘がしたいので恍惚の表情を浮かべながら入念な準備をしている。

 彼女の指示は魚安家の洋館だけでなく鮟鱇田第一基地にも届いており康を殺す準備は順調だった。


 ◇


 敵の準備が進んでいる頃、康は甘瓜家の洋館におり豪華な椅子に座って、トランプをシャッフルしていた。横には豊希が立っていて申し訳なさそうな表情を浮かべている。


「ごめんなさい、康。甘瓜家の戦力が使えなくて」


 彼女は男の娘に頭をさげた。甘瓜家の戦力は弱く、裏切った者達が出たように春也との戦闘を恐れて逃げてしまった。


「気にするな」


 康は気にしておらず味方がいないのに余裕の表情だった。


「人喰いクラゲを送ればクソ兄貴達などひとひねりだけど、あれは非人道的だからやめておこう」


 人喰いクラゲという戦力があるが無頼党のような非人道的なことをしてもいい犯罪組織などに使うようにしており春也とは、まともな戦闘をして当主になろうと考えている。


「康様」


 ゴスロリ男の娘が戦闘の準備をせず、トランプをシャッフルしていると、ひとりの中年男性がやってきた。

 短い銀髪、ほうれい線が目立つ渋い顔の誠実な中年男性で背中に鯛の入れ墨のような絵がある青い着流し姿で紺色の足袋、下駄を履いていた。


まこと


 突然やってきた中年男性に少し驚き、知っている人物なので康は冷静だった。


「落ち着いて! 親父!」


 中年男性を追いかけるように霞もやってきた。彼の名前は女鯛にょたい まこと。霞の父親で、このへんの海関係を治めている富豪だ。ここにきた理由は分かっており霞の父親なので彼を追いだすようなことはしない。


「康様。娘を助けてくださり、ありがとうございます」


 真は平伏した。娘から無頼党にさらわれ康が助けてくれたことと兄との権力争いを聞いて、ここにきた。


「お父上を殺し当主の座を奪い、娘にひどいことをした春也は許せません。正統な当主は康様です」


 冷静なようで父親は怒っていた。庶民の自分が富豪になれたのは康のおかげで恩義があり彼を支持している。


「康様のため、この真。命をかけて戦います」


 庶民だが貴族に負けないほどの金持ちで自警団のような戦力を持っており、ゴスロリ男の娘に協力しようとしている。しかし戦闘のプロではない素人の集まりで人数も少ないので期待できない。


「お前に戦闘をさせる気はない。お前には他にやってもらいたいことがある。とても重要なことだ」


 戦力は期待していないので別の仕事をさせる。


「どのようなことでしょう?」


 戦闘じゃなくても不満はなく真はどんなことでもする気だった。


「クソ兄貴と関係がある者達を首にして、ここで働けないようにしてくれ。鮟鱇田でさまざまな商売をしている真ならできるだろ?」


 兄だけでなく兄の息がかかっている者達も自分が治める中心地から排除しようと考えている。兄の味方は敵で、どんな事情があっても容赦なく首にして、ここにいられないようにする。


「はい。できます」


 無理難題のようで鮟鱇田でさまざまな商売をしていて影響力がある真なら一方的に首にし、圧力をかけることができる。

 大勢、首にするので大変になってしまうが刷新するチャンスでもある。


「戦闘は私に任せろ。私には優秀な味方がいる」


 康は戦闘に自信があり、トランプをシャッフルし、ばらまいた。すべてのカードは人の姿になっていく。

 頭部は西洋の白い兜で白い団員服姿。胸部に黒いスペードとクラブがある者達は黒いブーツを履いていて背中に一から十三の黒い数字がある。胸部に赤いハートとダイヤがある者達は赤いブーツを履いていて背中に一から十三の赤い数字があり、スートごとに一が先頭で整列していた。


「これは!?」

「七並べみたい」


 真は突然現れた五十四体の団員に驚き、霞はバカなことをいった。


「これが私の優秀な味方 トランプの騎士隊きしたいだ」


 人間の味方が少なくてもトランプを優秀な人材に変え、一瞬で戦力を生みだした。


「「「康様!! なんなりとご命令を!!」」」


 康が生みだした者達なので、どんな命令にも従い、主の命令を待っている。

 トランプの騎士隊の先頭の両側には姿が違う二体がいた。道化師のような白い仮面だが、かたい感じで白と黒の団員服姿で腰に剣があり黒いブーツを履いていた。もう片方は道化師のような白い仮面で笑っている赤い口があり白と赤の団員服姿で赤いブーツを履いていた。

 数字がないトランプの騎士隊最強の二体 くろのジョーカーとあかのジョーカーだ。


「これからクソ兄貴との戦闘がある。お前達はくろのジョーカーとあかのジョーカーの命令に従い、この私に逆らう敵を倒せ!!」

「「「はい!! 康様!!」」」


 トランプの騎士隊はひざまずいた。豊希と真、霞はついていくのがやっとだった。一瞬で戦力ができたことなど春也達は知らず恐ろしい戦闘が始まる。

 沙吾の名前はサゴチで真の名前は真鯛です。

 評価とブックマーク、感想をよろしくお願いします。

 ポイントは小説を書き続けるための大きなモチベーションになりますので、ご協力お願いします。

 「美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者」と「非正規団員の小事件集」も連載中です。

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