第5話 宣戦布告の使者
◇
ボーゾーストが失敗した頃、春也は魚安家の洋館におり当主である父親が座っていた豪華な椅子に座っていた。魚安家は洋館の家があり鮟鱇田第一基地で仕事をしている。
「父上が悪い。長男の私を当主にすれば、こんなことにはならなかった」
春也は怒りながら呟いた。父親を殺す気はなく、おどして当主になるつもりだったが認めなかったので部下達に命令して殺した。
「康よりも私が当主にふさわしい。優秀な部下達がいて跡継ぎがいる」
父親を殺したことに罪悪感はなく正しい行動と思っている。どんな方法でも当主になったので春也はうれしく、妻と息子も喜び、息子の将来も安泰になった。
「あとは康が死ねば問題ない」
次期当主の弟は目障りで仲が悪く、父親より簡単に殺すことができる。
「ボーゾーストの報告が楽しみだ」
春也だけでなく妻と息子、部下達も康の死を待っている。しかし殺し屋は失敗し康は生きているので、そのことを知ったら絶望するだろう。
「春也様!!」
銀知雄が慌ててやってきた。
「どうした、銀知雄!?」
ただ事ではないのが分かり春也は立ちあがった。
「ボーゾーストが戻ってきました!!」
「そうか! 戻ってきたか! 康を殺したんだな!」
ボーゾーストの帰還を聞いて新当主は喜んだが、銀知雄は喜んでいない。
「いえ!! 康に寝返ったようで暴れています!!」
「なに!? 高い金で雇ったのに裏切るとは!! しょせん低俗な殺し屋か!!」
殺し屋は康に操られているだけだが、それを知らない春也は怒っている。
「すぐに片づけます」
「そうしてくれ。康に寝返るような殺し屋はいらん」
ボーゾーストは処分されることになった。
◇
洋館の前。静かな夜はボーゾーストによって騒がしくなっていた。
「康様のために、康様のために」
機械のような無表情で暴れており正気ではないが団員達は敵と思っている。しょせん殺し屋で絆や信頼などなかった。
康に切断された両腕は特殊金属の両腕になっており二本の剣を持って、デタラメに振っている。近づいて攻撃する団員達は斬られて死体になっていく。
「なんてやつだ!! 早くやつを倒せ!!」
指揮を執っているのは要七。優秀な団員でもプライドが高くて安全な仕事が多く、ボーゾーストにびびっており部下達に戦闘をさせていた。銀知雄の息子なので団員達は従っており、マシンガンを向けて撃ちまくる。
「康様のために、康様のために」
防御や回避をせずに無数の銃弾をくらい、まったくきいていない感じで動く。
「どうなってるんだ!?」
ボーゾーストが正気じゃないので要七達は動揺している。康によって彼は死ぬまで暴れ、相手の攻撃を受けるようになっていた。痛みなど感じていないので気にせずに暴れているが、ちゃんときいている。
暴れて体力なども消耗しており体は死に近づいているのでボーゾーストが死ぬのは時間の問題だった。
「やつが死ぬまで撃て!!」
要七の命令でマシンガンを撃ち続ける。
「康様のために、康様のために」
全身が穴だらけになっても倒れず狂ったように二本の剣を振って要七達に近づいているので怖い。
「どっちも情けない。私がやる」
「撃つのをやめろ!!」
聞き覚えがある女性の声がしたので要七はマシンガンを止めた。黒いヘドロがボーゾーストの後ろに出現した。ヘドロに気づき、ボーゾーストは振り向いて二本の剣で斬った。しかし、ヘドロはなんともなく、殺し屋はなにも考えずに敵を攻撃するしかないので剣を振りまくって意味がない攻撃をしている。
「操り人形。楽にしてやる」
ヘドロは女性の声でしゃべり、黒い鎌を持った手が出てきてボーゾーストを切った。致命傷で暴れる体力がなくなり倒れた。
「このおれがこんなところで死ぬなんて……康を殺す仕事なんてしなきゃよかった……こうなったのは、すべて春也のせいだ」
ボーゾーストは正気になり自分の死が分かっているので後悔し、すべて依頼人のせいにした。
「お前達もおれのように康に殺される。ざまあみろ!!」
最期の力で要七達を呪うように笑った。
「うるさい!! この役立たず!!」
要七達は怒り、失敗した殺し屋を助ける気などなかった。
「ぎゃああああああ!!」
全身が特殊金属の両腕と同じ金属になっていき、ボーゾーストは叫び破裂した。飛び散った破片は槍のように長い特殊金属の無数の針となり団員達に突き刺さる。
特殊金属の両腕は康の復元能力のようなものでボーゾーストが死ぬと同じ金属にして破裂し無数の針になるようになっていた。
針が突き刺さった団員達は死んで倒れた。
「危なかった!!」
要七は部下達の後ろに隠れたので無事で、ヘドロはなんともなく無数の針を飲みこんでいる。団員達は死に、生きているのは二人だけだった。
「おのれ、康!! どこまで春也様の障害になれば気がすむんだ!!」
ボーゾーストを送り、団員達を殺して宣戦布告をしたので要七は怒っている。
「お前の出番があるようだ。傭ヘドロ。おれは春也様に報告してくる」
要七がいなくなると、ヘドロは人の姿になっていく。ヘドロと同じ黒いローブ姿でタコの漏斗のようなものがあるフードで顔が隠れている。ローブの中は黒いブラジャーと黒いティーバックの露出が多い姿で黒いブーツを履いていた。
「康か。これほどの力があるとは。楽しみ」
フードをとると紫のショートで黒い瞳の若い美女の顔があり恍惚の表情を浮かべている。彼女の名前は傭ヘドロ。春也が雇った凄腕の女傭兵だ。
要七の報告を聞き、春也は大激怒し魚安家の兄弟対決が始まった。
傭ヘドロの名前は傭兵とヘドロです。
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「美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者」と「非正規団員の小事件集」も連載中です。




