第19話 子守唄の夜襲
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その日の夜。海賊とクラーケンの肴は康達に見つからないように甘瓜家の洋館に向かっている。
海賊は一隻の帆船と無数の手こぎボートに乗って空中を移動している。飛ぶことができる帆船と手こぎボートで海がなくても強さを発揮できる。
トリコーンをかぶっている針船長と幹部達は帆船におり、手こぎボートには子分達が二人ずつ乗っており、ボートをこいでいた。
康達に見つかることなく移動できたので針船長は安心した。
「あんなのの相手は無理だ」
首にされた元団員達の中には鮟鱇田の貴族連合にきた者達もおり、敵戦力の情報を知ることができ、自分の目で見たので勝つ自信がなかった。
いくら飛べる帆船と手こぎボートでもチョウチンアンコウ型の飛行戦艦と雑兵蟻、トランプの騎士隊、康が相手では春也の二の舞になる。
「豊希を捕えるのは、いつもやってることだからできる」
無駄な戦闘をせず、女を捕えるのは得意で自信がある。
「クラーケンの肴が私達より早く着くことはない。手柄を独り占めにできる」
針船長は下を見て笑った。クラーケンの肴は地上を移動しており、海賊のような乗り物がなく凄まじい体力で歩いている。
一緒にいくが協力して手柄をわけあう気などない。
「船長!! 甘瓜家の洋館が見えました!!」
マストにいる子分が報告し、針船長は望遠鏡を出して見た。洋館の周りに雑兵蟻がいて守っており人間はいない。
「船長!! 虫どもがきました!!」
洋館を守る雑兵蟻達だけでなく飛んでいる雑兵蟻達がいて海賊に近づいており、マストにいる子分は報告した。
「虫ケラどもが守っているのか!!」
ある程度の戦闘は覚悟しており情報で知っている相手なので望遠鏡をしまい、剣を抜いた。
「あの虫ケラどもは知ってるな!! 海で魚の怪物と戦ってきた私達がやられるような相手ではない!! 戦闘開始!!」
帆船と無数の手こぎボートは包囲され戦闘をさけることはできず強行突破するために戦う。
「「「アイアイキャプテン!!」」」
子分達は針船長に従い、マシンガンを構え帆船は無数の大砲を向けた。雑兵蟻達はマシンガンや大砲を警戒して止まった。
「撃てー!!」
針船長の命令で大砲とマシンガンを撃った。くらった雑兵蟻達は落ちて卵を産んだ。しかし雑兵蟻の能力を知っており、卵を攻撃した。
卵を破壊すれば減らすことができ雑兵蟻の強みがなくなる。
雑兵蟻達は攻撃をかわしながら飛び、光線を発射した。
「うわあ!!」
手こぎボートの子分達は光線をくらって落ち、ボートが爆発してやられており、マシンガンを撃ち、オールを振りまわして抵抗している。
帆船も光線をくらっているが耐えている。見た目が古いだけの高性能で魚の怪物との戦闘に耐えるほどの帆船なのでボートのように壊れず大砲を撃ちまくる。
「どわあ!!」
雑兵蟻達の光線で少しダメージを受けており、デッキを攻撃され針船長達はふっとびそうになった。
「ああっ!!」
手こぎボートに乗り込み、子分達を殺す雑兵蟻達がおり帆船にも乗り込もうとしている。
「おのれ!! 虫ケラどもを船に乗せるな!!」
針船長は小さな大砲を持って構え、トゲつきの鉄球を発射した。子分達もマシンガンや大砲を撃ちまくり、雑兵蟻達が帆船に乗り込めないようにしている。
魚の怪物と戦闘をしている海賊なので魚の怪物と戦うような攻撃をしており雑兵蟻を減らしていく。
「そうやって虫どもと戦ってろ」
地上にいるバッカスルメは空中の戦闘を見て笑い、スキットルの酒を飲んだ。
「今のうちに洋館を攻めて豊希を捕えるぞー!!」
「「「おおー!!」」」
海賊が戦闘をしている間に豊希を捕えて手柄を独り占めにしようとしている。
海賊と同じで協力して手柄をわけあう気などなく波武の命令が最優先なので無駄な戦闘はせずに進む。
空中の雑兵蟻達は海賊の相手をしており地上の雑兵蟻達はクラーケンの肴に気づき、迎撃態勢で待っている。
「虫どもをけちらせ!!」
突破するための戦闘なのでバッカスルメは攻撃命令を出した。
「おれが一番槍だ!!」
強ダツは槍を構えて突っ込む。雑兵蟻達は光線を発射したが、止まらず回避もしないでまっすぐ進み、当たらないように加速した。
凄まじいスピードで突っ込み、雑兵蟻達は槍をくらって消しとんだ。強ダツはそのまま敵をけちらしながら走り、雑兵蟻達の防衛線を突破し洋館に着いた。
まっすぐ進む突破力では凶悪な傭兵だった。
「進めー!!」
敵の防衛線に穴ができ、バッカスルメの命令で子分達は進む。強ダツにやられた雑兵蟻達は卵を遺しており、周りの雑兵蟻達が穴をふさごうと動く。
しかしアイゴロツキが無数のトゲを飛ばし、バッカスルメがスキットルの酒を飲みながら炎を吹き、雑兵蟻達と卵をけちらしていく。
アイゴロツキのトゲには毒があり、くらった雑兵蟻達は卵が産めずに溶け、産んだ卵も毒にやられ溶けてなくなった。
バッカスルメが吹く炎も雑兵蟻と産んだ卵を燃やして数を減らしている。海賊と同じで雑兵蟻のことを知っており、対策ができていた。
それでも数が多いので速く移動する。
「ぎゃああああああ!!」
やられている子分達もおり、助けずに突き進む。
「ひいいいいいい!!」
戦闘に慣れていない陰子がおり、移動が遅い。青紫のきわどい下着姿で前には黒い布がはりついていて、背中とたるんだ巨尻は丸見えで黒いブーツを履いていた。
「わあ!!」
子分達は彼女を盾にしながら進んでいる。
「やめてー!!」
陰子はおびえて泣いているが、雑兵蟻の攻撃をくらっても平気だった。アイゴロツキの毒で強化され、頑丈になっていた。
戦闘向きの性格ではないので、せっかくの攻撃力を活かせず盾にしかならなかった。
「うまそうな卵だ」
バッカスルメは移動しながら焼けた卵を拾った。大きな虫の卵でも彼は躊躇せず走りながら食べた。
「珍味だ」
殻ごと中の小さな雑兵蟻をかみ砕き、焼いたカニを丸ごと食べたような感じで酒を飲み、喜びの炎を吹いた。
クラーケンの肴はかなり減ったが、主力は死なず数は十分なので洋館に着いた。
「ああっ!! いやだあ!!」
陰子は子分達に押さえられて、突破したクラーケンの肴を守る盾にされ、雑兵蟻達の光線を受けている。
「よし!! 入るぞ!!」
バッカスルメがスキットルを槍に変え、子分達とともに洋館に入ろうとした時、彼と強ダツ、アイゴロツキと陰子、実力がある子分達は一瞬で消えた。
「なっ!? 消えたぞ!!」
残っているザコどもは驚き、バッカスルメがいなくなって統率が乱れた。
「おれ達はどうすればいいんだ!?」
盾の陰子がいなくなり雑兵蟻達の光線が直撃し、溶けて消滅していく。
「くるなあ!!」
ザコどもではどうすることもできず雑兵蟻達にやられていき、クラーケンの肴はこの任務に全戦力を投入したので崩壊した。
「敵がきた」
豊希は自分の部屋の窓から戦闘を見ていた。白い下着姿で透けているネグリジェをつけており、眠る時間だった。
「私ができることは眠るだけね」
敵が攻めてきたが、彼女は冷静でベッドにあがって寝転んだ。これくらいで慌てたら康の婚約者は務まらない。
それに敵がくることは康の連絡で知っており、迎撃準備は万全だった。
防音なので戦闘の音はあまり聞こえず、聞こえても子守唄のようなもので安眠できる。
さすが康の婚約者で、ここを守っている彼の部下達は安心して敵を殲滅できる。
外にいるクラーケンの肴は全滅し、外の敵は海賊だけになった。
バッカスルメの名前はバッカスとスルメです。
「美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者」と「非正規団員の小事件集」も連載中です。




