メインシナリオの裏側で その16
「そうでしたか…」
「そうなんだよ…」
俺は双子の妹さんとカフェに居た。
考えたい事もあるし、最後にと足を向けた所、妹さんがカフェを眺めていたのだ。妹さんも、最後だからと来てみたらしい。前から入ってみたかったそうだ。
「あんまり驚いてないね。あ、ケーキどうぞ」
「あ、ありがとうございます。驚く…というか、やっぱりというか。あの人は分かりやすかったですから」
妹さんはケーキを頬張り、幸せ笑顔。
「…あなたが好きなんだなっていうのが、よく伝わってきてました」
「そんなに?」
「はい。私は、誰かを想う気持ちは、どういう形であれ素敵だなって思ってます」
「そっか。ありがとうな」
「いーえ。それで、悩んでるんですか?待っててくれるんですよね」
そう言ってはくれたけども。
王子は長い事、俺を好きでいてくれたようなのだ。これ以上待たせるのは、甘えなんじゃないかと考えてしまう。かと言って、すぐに答えを出せるモノでもない。
一人で考えても埒が明かないと、つい妹さんに頼ってしまったが。今更ながら、迷惑だったかと内心頭を抱える。
「待たせておけばいいと思いますよ。あなたにとっては、友達がまさかのそういった意味で見ていたと、衝撃だったでしょうし」
「まぁ……確かに」
「それに、監禁紛いなあぶねぇ思考は看過できないです。例え王族だろうとも。こちとらてめぇの変態ぶりに目ぇ瞑ってやってんだから待てっつったら待っとけよ……な、姿勢でいてもいいかと」
「……頼もしいなぁ。ありがとう、なんか吹っ切れそう」
「お役に立ててたら何よりです」
お礼にケーキと紅茶のおかわりを頼む。
双子は、ピンクの彼女と一緒に魔導宮へ行くことになっている。光魔法の研究の為だ。
あそこは魔法についての資料は勿論、魔道具についての研究に開発と、ありとあらゆるものが揃っているという。警備が厳重で、例え関係者の身内でも、中に入るまでの手続きが大変だと聞いた事がある。
「ある意味安心はできます。ここまで徹底されてたら、あの子も下手な事できないだろうなって」
「あぁ、そういえば元気にしてる?」
「はい。やらかしてからは大人しいです。最近は……元来の彼女が少し戻って来てますが、考えて行動してはいるみたいです」
妹さんが見ているだけという事は、前のような無礼とも取れる行動はしていないのだろう。
あの騒動のあと、急に大人しくなった彼女に、何人かの令嬢が突っ掛かったそうだ。前々から気に入らなかった、という理由だったとか。それらから守ったのは、双子だ。
ピンクの彼女に直接なんかされたのならともかく、極めて下らない理由で自分を貶めるな。といった内容をオブラートに丁寧に包んで伝えたが、平民が出しゃばるなと返されたので、平民なめんな精神で容赦なく攻め抜いたらしい。そこは手は出さず言葉で。令嬢達は泣いて逃げた。
その報告を聞いた時は、双子はどこに行っても、強く逞しく生きていけると思ったね。
でも、長い人生、大丈夫じゃない時もきっと来る。
「何もなくても、報告は続けてな。君らの事でも何でもいい。壁にぶつかった時は、愚痴でもいいから書いて。返事するから」
「恐れ多いですよ……。兄になんて言われるか」
「こうして俺と関わったのが運の尽き、と思っといてよ」
「尽きどころか、爆上げって言いそうですけど。……そーいうトコなんでしょうね、あの人が好きになったのは」
妹さんは紅茶を飲む。
「誰にでも分け隔てなく。身分なんて、軽々飛び越えるんですから。みんな言ってましたよ、貴族なのに、あんな気さくに話しかけられるとは思わなかったーって。あ、いい意味ですよ。密かにあなたを慕ってる人も居ます。それを知ってるから、結婚なんて言い出したんじゃないですかね」
慕われてたんだ、初耳。
「あなたはあの人の事、どう思ってるんですか?」
「頼りになる友達」
「第三王子殿下、じゃなくなったらどうです?」
「頼りになる友達」
「あの人自身を見てるって事ですね。けど周りに居る人達全員が、そうとは限らない。肩書きがなくなったら、手の平返す人なんて結構居ますし。でも、あなたは無条件で信じられる。誠実に人と向き合ってるから。私も信じられます」
「ありがとう」
「いーえ。私、ずる賢い世渡り上手より、不器用でも誠実で真っ直ぐな人が、幸せになって欲しいんですよね。だから、……後悔の無い選択をしてください。自分が幸せであるかどうかを、考えてください。私から言えるのは、これくらいです」
「……充分。聞いてくれてありがとう、考えてみるよ」
お礼に奢る。そう言えば、妹さんはいい笑顔でごちそうさまと返してくれた。
「そうだ」
「はい?」
「そっくり返す形になるけど…俺も、君らに幸せになって欲しい。喧嘩してもいいけど……仲良くな」
「………、……はい、ありがとうございます」
妹さんは、晴れ晴れとした笑顔だった。
……結局俺は、三国全部行く事になった。期限は三年ずつ。
どう行こうかと悩んだ結果、西から行く事に。だってオープン迫ってるんだもの。手伝いなのに三年後行っても、何しに来たのって笑顔のフリルに言われそうだもの。
という訳で、今移動中。隣に王子を添えて。
「ついてこなくていいのに」
「忘れたの?君を口説き続けるって言ったでしょ。だったら側に居ないと」
「……そうですか」
この王子、本気を見せる為に継承権と肩書き捨てやがった。なので元王子の、一貴族。
満面笑顔で実家に現れた時は、俺を追い詰めに来たのかと本気で思った。姉が鬼の形相で対処してくれたが、これは俺が向き合わなきゃならない問題。迫力のバトルの末、斬り捨てようとしていた姉を必死に止めた。
因みに姉、見合い相手といい感じなようだ。挨拶したが、姉の全てに惚れ込んでいる様子に安堵したよ。俺にも優しかった。
「……まぁいいや。けどこれからが大変だぞ」
「覚悟はしてるよ。働かなきゃ、今日の暮らしもままならないんだからさ」
頼りになるんだかならないんだか。
でも、楽しそうにしているのを見ていると、良かったのかなと思う。城の中は敵だらけだったらしいし。
「どうせなら、三年契約で家借りて二人で住もうよ。その方が僕としてもやりやすいしさ」
「断る。こっちは働かせてもらうんだぞ。その上、住む所まで提供してくれるんだから、ありがたいと思っとけ」
「いい案だと思ったのになぁ……」
家事もまともにできない俺達で、二人暮らしはないと思う。とりあえず最初の三年は、家事と仕事に専念しよう。家借りる云々はそれからだ。
西に着いたら、どう説明しようか。多分、王族から抜けたのは知ってるだろうけど。どこ行っても同じ反応が返ってくるんだろうな。
旅を続けてる間に、慣れるかな。もしかしたら遠い未来に、俺のパートナーです。…って、紹介してるかもしれない。
先の事は分からない。俺の気持ちが変わるかどうかも。
世の中変わらないモノは無いっていうけど。
「なんとかなるかな、多分」
金色の、楽しそうな友人に微笑む。
気楽に行こう、健康第一、心身共に鍛えながら。これは変わらない、子供の頃からの決め事。
大事な人達が居るこの世界で、俺は精一杯、生きていこうと思う。
とりあえずこれにて終了でございます。
あとはオマケを書こうと思っておりますが、もう少し、あの人この人どうなったとか、ここの部分もう少し知りたい、等々。気になる何かがありましたら、感想欄に書いていただけたら頑張ってできる範囲で書いていこうと思っております。
ブックマーク、いいね、ありがとうございます!読んでくれる方々に感謝を。
それでは失礼いたします




