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メインシナリオの裏側で  ー乙女ゲームの世界に転生したとは知らずに普通に人生を頑張る話ー  作者: 原田 和


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メインシナリオの裏側の、裏側9





 「気に掛けてるのは知ってたけど、常に探るのはやりすぎじゃない?」


 「その台詞、そっくりそのまま返すわ。ちびゴーレムでストーカーしてる奴に諭されたくはないな」


 「ストーカーって、朝から晩までがっちり見守ってると称して監視してる変態でしょ。それは彼女の陰じゃないかな?」


 「……言い掛かりだわ。私の陰は優秀。踏み潰されて終了なゴーレムと、感知するだけで即行動に移せない技と一緒にしないで。推しを守れるのは私の陰よ」


 「守れてないから、あーなってんじゃねーか」


 「……今後の課題は、推しとの距離ね。でもあれ以上近付いたら、流石に気付かれてしまう…」


 「もうバレたけどね」


此処のカフェって落ち着くのよね。紅茶もお菓子もおいしいし。

私は、わちゃわちゃ言い合う弟達を眺めながら、おかわりを頼んだ。目の前には、沈んだ顔の友人。紅茶はすっかり冷めている。

この子が落ち込むのって、弟君関連ぐらいなのよね。


 「……戻れるなら、過去の自分を殴りたい……!」


 「いきなりどしたの」


 「だって……!あなたも聞いたでしょ、弟は愛されたかったのよ、なのに私は自分の事しか考えずに……!」


 「そういうもんじゃないの?」


彼女の家族関係が、歪だったのはほんのり聞いている。弟君が来てから、ゆっくりだけど改善されてる事も。

弟君は、昔からあぁだったそうだ。親に置いて行かれた時も、引き取られた義家族に素っ気なくされても、頼ろうとする素振りなく、一人で立っていたと。自分の境遇を嘆く訳でも、親に対して恨み言を言うでもなく。自分は自分と割り切っている様子だったと。


 「子供の時って、知らない事の方が多いじゃない。自分と、自分の家族ぐらいしか見えないものよ」


 「あの子はそうじゃなかった。きっと、私よりも周りを見てた。だから……諦めるのも早かった」


 「……。だからって、今落ち込んでも仕方ないでしょ。過ぎちゃった事なんだから。これから、どうするかよ。折角気付けたのにそのまま放置は、絶対無いんでしょ?」


 「無いわ、ありえない。あの子は私の大事な弟…!ちゃんと、愛してるって伝えないと……!」


 「伝わってると思うけどなぁ。それに弟君、本当に諦めてたのかな」


どういう事、と必死な友人。普段は感情的にならないのに、今はブレブレだ。これはこれで面白いけれど、茶化す所ではないよね。


 「諦めてたら、今の形にならなかったと思うのよね。弟君、信頼できる人を探してたんじゃない?」


 「信頼……」


 「そう。いくら割り切ってても、不安はあったと思う。味方が一人もいない状況って、キツイだろうし。で、その中で見付けたのが、」


その先は言わずに、友人を指した。すぐ分かったようで、頬を染める。嬉しいんだ。


 「弟君が、あなたに寄せる尊敬と信頼は本物よ。あなたが居たから、弟君、愛情を忘れず持っていれたんじゃない?」


 「………、私はその純な気持ちを蔑ろにしてたのね。馬鹿だったわ。いえ、今でも馬鹿ね。馬鹿は死ななきゃ治らないというのは真実のようだわ」


 「何してんの、その剣離しなさい。離せっての力つっよいな!!?」


喜んだと思えばすぐ萎む。駄目だ、この子今、情緒不安定だ。

私は胸を貫こうとする友人を羽交い絞めにする。弟達が速やかに剣を離してくれた。


 「お姉さんの気持ちは痛い程分かりますが、命を絶つよりも重要な事があるのではないでしょうか」


 「俺もそう思う。先ずは伝えなきゃならねーだろ」


 「……推しの悲しみは、私の悲しみ…。お願いだから考え直して……」


弟達も、気にしていたようだ。

まぁそうよね、みんな弟君好きだもの。勿論、私も。東の姉弟が揃って南に来てくれたら、毎日が楽しいだろうな、なんて考えるくらいなんだから。でも、厄介なのが居るのよね。


 「みんな此処に居たんだ」


そう、この第三王子。あの二番目とは違って、権力振りかざさないけど、弟君への執着心がすんごいのよね。振り切れてる。今の所は、弟君自身がさらっと躱してるし、嫌なものは嫌とはっきり言ってるからいいんだけど。


 「あのピンクはどうなるって?」


 「僕一応、王族なんだけどなぁ……」


 「そう、じゃあ敬意を示すよう弟にも言っておくわ」


 「知ってる、それ他人行儀になるやつだ。ヤメテそれだけは。あの子に敬語使われて距離取られるだけで色々えぐられる……!」


 「風穴開けられなさい。それで、どうなの」


相変わらず、王子への対応は手厳しい。そりゃそうなるよね、大事な弟君を狙ってるんだから。


 「……やった事は未遂。だから魔力封じて監視を付ける事になった。監視役は、双子にしたよ。他の人間じゃ、彼女に騙されそうだから。絶対に絆されない人間がいいと思って」


 「そういえば、怯えてたわね。双子に」


光の双子も強くなってた。機会があったら、手合わせ申し込もうかしら。二人とも大人しくしてるけど、敵には容赦しない感じがするのよね。特に妹の方、簡単に折れない強い意思を感じるし。

そう考えると、なんか弟君に似てる部分がある気がするわ。


 「弟君は、なんて?」


 「……それでいいんじゃないかって。あんな怪我したのも、元はと言えば彼女のせいなのに、あっけらかんとしてるというか……」


 「でも弟君は、許すつもりは無いってハッキリ言ってたじゃない。まぁそれも、彼女の為なんでしょーけど」


全員が顰め面になる。

そう、弟君は宣言した。関わった全員を許さないと。今後妙な動きをしたら、徹底的に潰すとまで言い放ったのだ。温和な弟君にしては、過激な発言だ。

捕まった令息の中には、元凶ピンクに憎悪の目を向ける者が少なからず居た。自分の事は棚に上げて、全て彼女のせいにして。嫌いなヤツだわ。


 「優しーったらないわね、弟君は。それで馬鹿やる馬鹿はいないでしょうし」


 「東が守りから抜けたら、困る貴族はいくらでも居るだろうしな」


 「面白そうだから、私達も宣言しちゃう?」


 「効果はデカくなりそうだよな……、乗った」


私も弟も、ピンクの彼女は嫌い。でも弟君の助けになるなら、話は別。西も北も、考えてる考えてる。


 「俺もそれでいこうかな。あの子を傷付けたのは事実だし、逆恨みする暇を与えるのも癪に障るし」


 「……私も。なんなら一部、見せしめに守りを放棄するなんてどうかしら…」


 「いいじゃない、いいじゃない!王子、早速言ってきて!」


 「これ以上話デカくしないでよ……。もう彼らの家には通達してるよ、次は無いって」


 「あら、足りないわよ。私達がどんなに怒ってるか、教えてやらないと。馬鹿は何処から出てくるか、分からないんだから」


にっこりと笑ってやれば、怖いなぁと腕を擦られた。失礼な王子だわ。


 「あ、お義姉さん」


 「気安く呼ばないでくれる?」


 「彼が呼んでましたよ」


 「一番大事な要件を後回しにしないでくれる?」


すぐに走って行ってしまった。

聞きたいこと、聞ければいいんだけど。弟君の言葉に、勝るものはないからね。

私達は、時間を置いて行きましょうか。そう言えば、弟達は素直に座り直した。そそくさと行こうとする王子を捕まえて。


 「なんで?」


 「いや、姉弟水入らずの中に入ろうとするお前がなんでだわ」


ほんと、それよね。

第三王子はやっぱり、色々突き抜けてるわ。




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