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メインシナリオの裏側で  ー乙女ゲームの世界に転生したとは知らずに普通に人生を頑張る話ー  作者: 原田 和


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メインシナリオの裏側で その7


念の為、注意書きを。

後半少し、不愉快な文面があります




俺は悩んでいた。

姉は今年、学園へ行く。寮に入るので、会えるのは長期休暇の時ぐらいだろう。俺も適正年齢になったので、武道会に出るつもりだ。手合わせできる相手が居てくれるといいのだが。ずっと姉と鍛錬してきたので、居なくなるとちょっと寂しい。

それより、俺は失念していたのだが、姉さんにお見合い話があるというのだ。

考えてみれば、姉には婚約者の影も形もなかった。姉は身内の欲目を差し引いても、美人なのに。クールビューティなのに。なんでだろう。

そう思っていたら、祖母が教えてくれた。俺が引き取られる前にも、話はあったそうだ。けれど、祖父の頼りないという一言で白紙に。しかし、今回の相手は王族。なんと第二王子だというではないか。そして向こうは、南の領主の娘にも話を持って行ったという。姉と同い年らしい。

王族から打診があるのは、珍しい事ではないと祖母は言う。東西南北の国、何処も過去には王族に入った者がいるそうだ。


 「以前は西の国だったわね。力が集中するのを防ぐ意味合いもあるそうだけど…。なんにせよ、権力や肩書きが、魔物から守ってくれるとは思わないけどね」


俺もそう思う。魔物から見れば、どれもただの人だろう。

相手は王族、簡単には断れない。祖父は口には出さないが、南の者には負けて欲しくないらしい。


 「以前のあの人なら、あの子に発破をかけている所でしょう。何も考えずに」


祖母、前々から祖父の態度には思う所があったようだ。最近偶にこうして、にっこりと毒を吐く時がある。苦労してたんだなぁ。

この話を知った時、第三王子に手紙で訊いてみたのだ。第二王子の為人を知りたいと送ったら、性格カスだけどあんなのがいいの?と返ってきた。

曲がりなりにも王子なのに、カスって。もっと詳しく、と返信した所。

傲慢不遜な我儘野郎。弱い者いじめが趣味なのかと、顔面にグーを叩きつけたくなる程歪んだ性格。と、とんでもねぇ再返信が。

これが本当なら、姉に相応しくない。でも、決めるのは姉であって俺ではない。この事を言うべきか言わざるべきか、俺は悩んでいた。

悩みといったら、もう一つ。王子の返信が異様に早い。

俺が手紙を受け取って、返事を書こうと机に向かうとまた届く。それに目を通し、さて書こうとしたらまた届く。中央の郵便システムどうなってる。

ざっくりと言えば、王子十通に対して俺一通だ。もうそれで精一杯だ。もう少し緩やかにできないかとお願いしてみたら、七通に対して二通になった。あんまり改善されてないが、もうこれでいいやと思うようにしている。でも、流石に毎日はいらないと言うべきだろうか。

うんうん悩む俺を、祖母は面白がっているように見えた。







 「私は王族に入る気はないわよ。継ぐんだから」


俺の悩みは、思いの外早く解決した。そりゃそうだ。跡継ぎが領地を出てどうする。

よかった。あの後も、王子からの手紙には、第二王子の性格…というか最早悪口、が散りばめられていたから。多分、現在進行形で仲が悪いんだろう。気になったとは言え、悪い事をしてしまった。もう姉は大丈夫と謝ろう。


 「そうなの?そっちじゃないの?」


そっち、とは俺である。背の高い、快活な美少女は値踏みするような目だ。


 「なんか、弱そうな顔ねぇ。本当に炎使いなの?」


 「…あなたは私の弟をけなしに来たのかしら?南から態々、暇なことね」


 「同年代で強い子がいるって聞いたら、興味沸くじゃない?それに、同じ婚約者候補でもあるんだから、これは挨拶しておかないと。私にも弟居るのよ。ちょおぉーっと、ヤンチャだけどね」


グイグイ来る。姉とは真逆のタイプだ。ちょいちょい好戦的な目をするので、この人は姉と手合わせしたいのだろう。南の国は確か、風属性だったか。暑い国らしいから、自分で風を作れるのは便利だろうなぁ。


 「此処、毎年腕を競う武道会があるんですってね。一度出てみたかったのよ、だから弟と来たの。弟もやる気満々よー?ま、優勝は間違いないわね。私か弟か、舞台は変わっても跡取り争奪戦は免れないかー」


聞いた事あるな。南は完全実力主義で、年齢性別関係無く、勝った者が跡継ぎになるって。今は姉と弟で争っている最中という訳か。それは自分の国でやって欲しい。武道会は、一般参加が多いのだし。巻き込まれて怪我をさせられたら、大変だ。


 「それだけが理由じゃないでしょ。……言っておくけど、『光』属性は平民。戦った経験も無い子供よ。手を出さないでね」


 「あら……、残念。光使いはどの文献にも、『最強』と書かれていたから楽しみにしてたのに。まぁ、目覚めたばかりだし…これから、かしら」


 「これからもこの先も、余計な真似はしないで」


先日、光属性が二人も現れたと大騒ぎになっていた。平民の、双子らしい。

珍しいなぁと思って、少ない文献を調べてみたら。光属性が現れる時は、魔王が生まれる前兆とあった。

これ、アカンやつやん。と姉に報告。姉も流石に引きつり、義父に報告。義父は即行中央に報告。

中央精鋭の魔導士達曰く、今の所異常は無いから様子見で。光の子らは、学園に入る迄そっちで守るように、との事。一応、他の三国の領主には、情報共有の為連絡している。

魔王が生まれると、魔物の強さは格段に上がるという。その影響は全世界。

普段から魔物と戦っている、東西南北の国にとっては、笑い事じゃ済まされない。今は何ともなくとも、出来る防衛はしておいた方がいいだろう。例えばこんな風に、光の子らと戦いたいと無茶ぶりをする人から守るのも、立派な防衛だ。


 「ところで、姿の見えないあなたの弟と、まだ跡取り争いをするのなら、王族に入る気はないという事?」


 「今の所はねー。私達が断ったとしても、まだ北に一人居るからいいんじゃない?彼女にも話は行ってる筈だし。あの子は嫌とは言わないでしょ…。なんせ、お人形なんだから」


南のお姉さんから、北への嫌悪を感じる。

北の国。隣接してるけど、あまり交流がないんだよな。必要最低限というか。それは西の国も同じらしい。前に息子さんが教えてくれたけど、男尊女卑がまかり通っているとか。女は子を産むだけの道具、と豪語するほどだという。不愉快極まりない。

だから、北出身の男が他の国に出た時は、大体驚くらしい。そして、女性を下に見ている言動で、滅茶苦茶嫌われ罵られ、メンタルボコボコにされる……という流れが、必ず何処かであるという。


 「…生まれ育った環境は、本人にはどうしようもできない事よ。従順にならなきゃ、生き抜けない時だってあるわ」


ちらと姉が視線を送る先。木陰に、一人の少女が静かに立っていた。男女二人の従者が守るように側に居る。あの子は北の領主の、妹さんだ。

何か月か前に代替わりをして、彼女のお兄さんが新領主となった。だからと言って、何かが変わった訳ではない。相変わらずの不愉快思想。妹さんの扱いは、道具そのものらしい。

妹さん付きの従者達は、その不遇を見ていられず、どうにか外に出せないかと考えていた。そんな時に、東で光属性の者が現れたと知らせが入り、飛び付いてこうして出てきたそうな。

表向きは、視察なのだが。使えるようなら、光属性の女の方を北に連れてこい……と、命じられたと。北の新領主、殴っていいかな。

妹さんは物静かだけど、自分の置かれた環境が異質だって理解しているし、情報を渡したって事は、変えたいと思っているんじゃないかな。


 「折角、高い魔力を持ってるのに。戦いもしないなんて、あれじゃ宝の持ち腐れよ。……あなたの弟も大人しいわねー。ウチのなら、誰彼構わず突っかかってる所よ?」


戦闘狂?


 「私の弟はわきまえているの。一緒にしないで……、……待って。本当に何処に居るの、あなたの弟は」


…嫌な予感がするなぁ。


 「着いた途端、光のやつ探すって飛び出したっきりよ」


まずい、間違いなく暴れてる。

顔をひきつらせた姉に、南と北のお客さんを任せ、俺は村に走った。




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