メインシナリオの裏側で その1
繰り返し、繰り返し、夢を見る。
夢の中の『俺』は、いつも泣いている。何かに謝っている。
何が悲しくて、何に謝っているのか。訊きたくても、声が出ない。俺は見ているしかできない。
そしていつも『俺』は、ひとりで静かに消えていく。
その夢は、起きるといつも覚えていない。
でも、辛くて、悲しくて、その気持ちだけは強く残って、俺は泣いていた。
繰り返し、繰り返し見るその夢。それは、きっと前世というものなのだと、何となく分かった。
思い残した事があるから、こうして夢を見るのだと。
何を求めているのかまでは分からない。相変わらず、見ているしか出来なかったのだ。
でも、見て、感じて、気付いた事がある。
『俺』は、ずっと寝ている。身体は細くて、弱弱しい。きっと、病気か何かで自力では動けないのだ。
謝っている相手は、きっと大事な人。大事に思っていなければ、こんなに張り裂けそうな気持ちにならないと思うから。
あぁそうだ。きっと、大切な人を置いていってしまうのが、悲しくて辛いのだ。
もっと、一緒に居れば良かった。たくさん旅行だってしたかった。たくさんの事を知って、たくさん笑い合えれば良かった。もっと、話しておきたかった。
ごめん、ごめんね。
気付けば俺は泣いていた。『俺』はゆっくりと、消えていく。
真っ暗になる。自分の視界も塗り潰される。でも、言いたい。言っておきたい。
「…っ俺がっやる!君ができなかった事、俺が大事にするからっ……!後悔しないくらい、頑張るからっっ……、だから、もう、悲しまなくていい!謝らなくていい!全部、ぜぇーんぶっ!俺が引き受ける!だからもう、大丈夫だ!!」
当然、返事は無い。でも俺は勝手に約束した。
夢は、起きたらいつも覚えていない。でも、この約束だけは忘れたくない。
真っ暗になった。もう、何も見えない。
……夢を、見なくなった。
どんな夢だったのか、なんであんなにも悲しかったのか、時々考える。
でも不思議と、大丈夫だという、そんな想いがあるのだ。
今日も今日とて、俺は鍛錬に励む。
自分の身を守れない者が、大事な人達を守れる訳がない。
健康第一、心身共に鍛えるのが今の俺の目標だ。