第一話 追放
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「ジュリウス、お前は今日を以って我がグランデウエスから除籍処分とする」
ギルドホームのエントランスに大勢のギルドメンバーが集められた中、唐突にギルドマスターのマグナスにそう告げられた俺の頭の中は真っ白になった。
「なに呆けた顔してるのよ。ぼさっとしてないでさっさと荷物を纏めて出ていきなさい」
「おい、ジュリウス先輩に向かってそんな言い方はないだろイザベラ! 」
「あら、こんな役立たずを庇うのマルス?彼方はこの用無しと違ってまだギルドに残るんだから自分の立場の為に言葉に気を付けた方がいいと思うんだけど」
「おい…どういう意味だそれは? 」
「まあ落ち着けよ二人とも」
鮮やかなオレンジ色の髪を腰まで伸ばし切れ長の眼をした美女イザベラと日に焼けた褐色の肌にドレッドヘアーのマルスが言い争いを始めようとした時、今までその場に居なかった人物がその間に割って入った。
そいつは俺の長年の相棒であり親友のルセウスだった。
急な除籍宣言に混乱しつつも親友の登場に安堵しつつ俺はルセウスの方へと目を向ける。
ルセウスは目が合うとニヤリと笑い口を開いた。
「何の説明もなしでは皆混乱するだろう。なので此処は俺の方から説明した方がいいと思うんだがどうだろうかマスター? 」
「うむ。その方が良さそうだな」
俺はルセウスのその言葉に唖然とした。
俺と同じく何も知らない親友が助けに来てくれたのだと思ったら訳知り顔でギルドマスター側に着いたのだから当然だろう。
「おいルセウスどういうことだ!お前も俺の追放に賛成だと言うのか?! 」
俺がそう言うとルセウスは笑みを浮かべたまま冷ややかな目でこちらを見つめてくる。
「当たり前だろう。貴様がしてきたことを考えればな」
「俺が一体何をしたって言うんだ?! 」
「馬鹿な奴め。それを今から説明すると言っているだろう。まあ当人のお前は知っている筈だがな。この期に及んで白を切るというのならそれでも構わないが」
ルセウスのその言葉に全く心当たりのない俺は奴の言葉の続きを聞く事しか出来ない。
黙っている俺の様子を見たルセウスは再び口を開く。
「自白する気が無いのなら予定通り俺の口から皆に説明してやろう。この男ジュリウスはM&Sのリーグ戦で不正を働いた事が発覚した」
ルセウスの言葉に場がざわつくがルセウスの言葉以外俺の耳には何も入ってこない。
M&Sと言う武技と魔法を用い行われる競技は俺の全てだ。
お互いの陣地に設置されたクリスタルを攻撃し破壊すればポイントが入る基本ルールがあり、ラウンド毎に攻守に分かれ7対7で行われるそれは全世界共通の人気競技であり俺達ギルドに所属する冒険者にとって誇りを賭けた戦いだ。
俺は人生の全てをM&Sに捧げてきた…。
そのM&Sで俺が不正などという愚行が出来る訳がない。
色々な感情で頭の中がぐちゃぐちゃでおかしくなりそうだった。
「話を続けるぞ…。この男ジュリウスはあろうことか誇り高いM&Sの試合で買収行為及び細工行為を行っていた。この事が発覚したのは複数人のジャッジの告発があった為なのだが証人としてその方々にも来ていただいている。証人の方々どうぞこちらへ」
ルセウスがそう言うと同時にエントランスの奥から見憶えのある人物達が三人現れる。
その三人はグランデウエスが所属するダルコフスリーグのジャッジ達という事に直ぐに気づいた。
「ジャッジの方々、貴方方は最近の数試合のリーグ戦においてジュリウスに金と引き換えに都合のいい判定をする様に促された。間違いないですね? 」
ルセウスがそう言うとジャッジ達は頷いた。
「ええ間違いありません。彼は私達に多額の金銭と引き換えに都合のいい判定をするよう要求しました。更にクリスタルへの細工を黙認する事も言い含められました」
「嘘だ!俺はそんな事はやっていない! 」
気が付けばそう叫んでいた。
叫ばずにはいられなかった。
「見苦しいぞジュリウス。証人が居る以上言い逃れはできないと言うのに…。俺はお前が自分から罪を告白してくれるのを待っていたんだ。そうしたなら自主的にこのギルドから去りさえすれば親友の好で大事にせず済ませようとしたがこうなった以上どうしようもない」
「本気で俺がそんな事をしたと思ってるのかルセウス?!いくらジャッジがそう言うからと言って鵜呑みにするのか?! 」
「俺だって信じたくはないさ。だがなここ近年のお前の成績を見れば信じる他ないだろう。去年、一昨年のお前は不調で苦しみギルドキャプテンの座も下ろされた。今年も出だしから成績不振だったが最近の数試合はそれが嘘の様な活躍だった。最初は俺も昔の感覚をお前が取り戻し復活したのだと喜んだがこの告発を聞き腑に落ちてしまったよ。ああグランデウエスのエースジュリウスはもういない。いるのは過去の栄光に縋りついた醜い下衆だったんだとな」
「違う!俺は不正などしていない!確かに成績だけ見ればそう思われるかもしれないが本当にやってないんだ! 」
「これだけの証拠が揃っていながらまだ認めないとは…。仕方ないな。最後の証人に来ていただこう。アンナ入って来てくれ」
ルセウスに呼ばれた名を聞き俺はまさかと思いエントランスの奥を見つめた。
そこから入って来た人物の顔を見て血の気が引いて行くのが恐ろしいくらいに分かる。
何故ならその人物は予想通り俺の最愛の妻であるアンナだったからだ。
「アンナ…君が証人というのはどういう事なんだ…? 」
俺は震える声でそう呟く事しか出来なかった。
彼女は虫を見るような瞳で俺を見つめると口を開く。
「救いようがない人ね。私が気づいてないと思ったのかしら?貴方が夜な夜な出かけてそこのジャッジの方達と密談しているのは知ってるのよ。最近様子がおかしかったから何か良くない事に巻き込まれてるんじゃないかと思って心配で夜出かける貴方を付けたらお金を握らしてあんな事をしてるんですもの…」
「本気で言ってるのかアンナ? 」
「勿論よ。皆さんには夫がこんな事をして申し訳なさでいっぱいです」
アンナは俺の方から視線を切りギルドメンバー達に頭を下げた。
その謝罪にイザベラは満足そうな顔をしておりマルスは眉を下げて複雑そうな顔をしていたのが強く印象に残った。
「これでもまだいう事はあるか? 」
ルセウスにそう問われた俺だったがアンナの告発で放心しており何も言葉に出来なかった。
「無言は肯定と見なすぞ。残念だがジュリウス、お前のやった事は許されざることだ。この事はアダマス大陸S&M協会及び冒険者ギルド統括本部にも伝えれる。お前はもう二度と冒険者として歩むことは出来ない上それ相応の賠償が課せられるだろう…。もうこの大陸では生きていくのは難しいだろうが自分のやった事の代償だ。受け止めて罪を償うと良いだろう。親友として最後にかけてやれる言葉がこの位しかない俺を恨んでくれてもいい」
ルセウスがそう言い切るとマグナスが「コイツを摘み出せ!」と言う声が聞こえてくる。
ギルドメンバー二人がその声に反応し俺の両腕を掴み上げると外に引きずりだそうとしてきた。
しかし、俺は抵抗する気力も残っていない為なすすべなく放り出されるしかなかった。
こうして15歳から始まった14年間の俺の冒険者生活は幕を閉じた。
その時感じた事は外から見るギルドホームの外装が物凄く冷たく灰色に見えた事だけだった。
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