賽の口
その大きな四角い壁に囲われた町に入ると門兵から四角い真っ白な箱を渡された。私の肩幅よりも少し小さい箱は見かけ以上に重かったが重心は箱の中で動いていた。気味が悪くなった私はたまらず、私は門兵に尋ねた。これが何かどうしても気になったのだ。
「これは何ですか?」
門兵は何も言わずに無機質な表情で兵舎へと戻っていった。
仕方なく箱を抱えて門をくぐった。
門の向こうに広がっていた町は至極穏やかな住宅地だった。地面にすごろくのようなコマさえなければ。その一コマ一コマには何も書かれておらず、真っ白なタイルのようなコマには所々赤黒い錆びのようなシミがついていた。
とにもかくにも町の中に続いているタイルの上に足を伸ばした。しかし、その足は透明の壁に阻まれているようにタイルの上にはおけなかった。
私が中々一歩目を踏み出せずにいると手から箱が滑り落ちた。
「・・・3」
ドチャッっと鈍い音を立てて落ちた箱から弱弱しい声が上がって来た。その声はうめき声に近く苦しそうだった。
何が入っているかなど想像したくもなかった。