表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっぱ異世界  作者: えすくん
第1章 異世界旅話
9/90

第9話 本当の敵を知りたい!

 こんにちは! 鷹司たかつかさタカシです!

 鷲人間に殺されかけたぼくを救ってくれたのは……そう、カーチャンでした!



 カーチャン……!

 なんだか久々に見た気がするよ!

 ちょっと存在を忘れかけてたくらいだもん。

 だけど、やっぱり、いざという時に役立つのはカーチャンだ。

 宝百合たからゆりちゃんも強いけど、カーチャンの圧倒的筋力の前だと、魔法なんてかすんじゃうね。

 だって、玄関のドアを開いただけで、敵を吹っ飛ばしちゃうんだから。

 ぼくはカーチャンにしがみつくと、尻餅をついた鷲女を指差して、叫んだ。



「あいつにいじめられた! やっつけちゃってよ!」



 鳥モンスターの表情が苦痛から驚愕きょうがくへと変化した。

 その他大勢の化け者どもも同じく。

 彼らの視線の先には……カーチャンのっぱい!



 あーはいはい、このパターンね。

 甲剛人こうごうじんの人達もカーチャンのっぱいを見てガクブルになってたな。

 だって、魔力の源は胸だから。

 胸の脂肪あるいは大胸筋に秘められている特別な力を、魔錻羅器まぶらきとかいう特別なブラジャーで、魔法に変換する。

 っぱい・おっぱいが大きいってことは、それだけ魔法使いとしてすごいってこと。



 ふっふーん。

 もっとビビれビビれ。

 でも、実はぼくもカーチャンも魔法を使えないってことは秘密にしておこう。



「カーチャンさん、お気をつけください」



 イカ墨に直撃されて、いまだに目が見えない宝百合たからゆりちゃん。



「彼らは世界の敵ではありませんが、わたくし達の命を狙っています」



 カーチャンと鷲女の目がぶつかった。

 互いに言葉を発することのないまま、カーチャンは黙って歩き始めた。

 カーチャンと鷲女の距離が縮まっていく。

 観衆は静まり返って、きを見守る。

 皆、自分達に手出しのできる場面ではないと理解してるんだ。



 ほら、見てよ。

 カーチャンの表情。

 やる気だよ、これは。

 こぉ~んなかわいい息子をいたぶられちゃったんだもんね。

 おらおら。

 鳥人間。

 懺悔ざんげしやがれ。

 おっぱい揉ませてくれたらゆるしてあげてもいいけど。



「昨日、こちらに引っ越してきました、鷹司たかつかさですぅ」



 ……は?



「私達まだゴミの分別もわかってないんですけど、ご指導よろしくお願いしますぅ」



 う、嘘でしょ、カーチャン……。

 まだ、お引っ越し気分でいたの?

 宝百合たからゆりちゃんも、これにはガクッと脱力。



「な……めるな……!!」



 鳥の化け物が、困惑気味にぶちギレた。



「誰が殺戮者さつりくしゃなんぞを歓迎かんげいするか! 何がゴミ出しだ! ゴミは貴様らだ! ふざけやがって……畜生ちくしょう……こんなやつらに……我らは……」



 辺り一帯に嗚咽おえつが響く。

 鳥なのに、鳴くんじゃなくて、泣くんだな、と思った。

 なんでこいつ泣いてるんだろ?

 勝手にぼくの家を壊したり、ぼくを殺そうとしたり、悪いのは自分じゃないか。

 意味不明すぎて、カーチャンでさえ困ってる。



「あら、奥さん、どうなさったの?」

「触るな! 貴様なんぞに手を差し伸べられる義理はないわ!!」

「何をおっしゃいますの。これからはお隣どうしじゃありませんか」

「隣に住もうとするな!」



 それから、鷲さんは両翼に力を込めるような動作を見せた。

 あっ。

 これって、魔法を使おうとしてるんじゃ……



「カーチャン! ヤバイよ、逃げて!!!」

「人の心を持たぬ化け物め……我が子を失う悲しみ、貴様には到底とうていわかるまいな!!!」



 間に合わない……と思った。

 カーチャンが至近しきん距離であのビーム攻撃を受けてしまうんだ、と。



 だけど、カーチャンの動きの方が速かった。

 カーチャンは唐突とうとつに鳥人間を抱きめた。

 それは相手の足が土を離れ、骨がきしむほどのハグだった。



「か……っ……はぁ……」



 鳥のやつ、口からあわいてやがる。

 いいぞいいぞ、カーチャン!

 そのまま落としちゃえー♪

 ……あれ?

 カーチャン、泣いてる。



「そう……子供を亡くしたの……。辛かったろうねぇ。私には想像もつかないわ。そんな苦しみを抱えて生きて……あんた、偉いよ」



 同情の涙だった。

 優しく羽毛うもうを撫でる手つきは、ぼくにしてくれる時となんら変わりなかった。



「ふ……ふざけるな。他人事のように!」



 鷲の全身がオーラのような光に包まれた。

 多分、これって魔法だ。

 光がまたたく間に大きくなると、カーチャンのたくましい両腕が鳥から離れた。

 抱擁をほどいた鷲は、後ろに飛んで少し距離を取ると、続けざまにビーム攻撃を繰り出した。



「カーチャン、けて!」



 耐震強度に優れた我が家に大きな穴を作るビームだ。

 いくらカーチャンがムキムキだからって、これを食らっちゃタダじゃ済まないはずだ……はず、なのに……



「全部、受け止めてあげる」



 腰を低くして、両腕を交差して、カーチャンはあのビームを受けた。

 血は流れてない。

 少し服が破れている程度だ。

 どんだけ強いんだよ!



「私、奥さんと仲良くしたいんですもの」

「……っ!!!」



 勿論もちろん、これで和解とはならない。

 怒り任せのビームが、次から次へと発射される。



「ああああああ! 全部当たってる! 命中率高すぎ! それなのに、どうしてカーチャンは平気そうなの!」

相容あいいれぬ! 恨みを晴らさずには死にきれぬ! 貴様は敵だ!」



 片や魔力。

 片や筋力。

 力の種類は違うけど、それぞれ、(みが)きあげた己の力を発揮してる。

 でも、魔法を使えないカーチャンはさすがに不利かも。

 ぼくにできることは応援だけだ。



「フレー! フレー! カーーーーチャーーーーーーン!! 頑張れ頑張r……どぅわあぁぁぁあああぁぁあ」



 今まですっかり黙りこんでいた観衆。

 すきを見て、ぼくと宝百合たからゆりちゃんに攻撃をかましてきた。



「タカシ! 家の中に入ってなさい!」

「言われなくても、そうするよ!」



 ぼくはすぐさま、宝百合たからゆりちゃんの手を取って、家に入った。

 とは言っても、屋内にいれば安心ってもんじゃない。

 やつらの魔法が家くらい簡単に壊せるのは、とっくに知ってる。



「どどどどっどどうにかしてよ、宝百合たからゆりちゃん!」

「わたくしは、まだ目が見えません。力石りきいしあねさんに頼るしかないのです」



 そうだ!

 すっかり忘れてた!

 旅の仲間はもう一人いるんだった。

 どこで何やってんだろ?



力石りきいしあねさーーーん!」



 呼び掛けても、返事はない。

 だけど、壁に攻撃魔法がぶつかる大きな音に紛れて、かすかに彼女の音が聞こえる。

 声でなはく、音。

 今朝も聞いた、あの音……。



「ぐおぉぉおおおぉぉおぉおお」

「信じらんない!」



 ぼくは急いで、自室の部屋を開けた。

 目に飛び込んできたのは、相変わらず、ぼくのベッドの上でいびきをかく甲剛人こうごうじん

 ヨダレはれてるし、白目をいてるし、なんて緊張感のないやつだ。



「どうしてこんな爆音の中で寝てられるんだよ! ほらほら、起きて。起きて、ぼくのことを助けてよ!」



 ぼくは必死に、力石りきいしあねさんを揺さぶった。

 ほわぁ!

 勢いよくやりすぎて、力石りきいしあねさんの魔錻羅器まぶらきが外れちゃった。

 こんな硬そうなおっぱい見たくない!



「んぁ?」



 ようやく甲剛人こうごうじんおさが目を覚ました。



「なんだい、タカシ……ぉぉぉおおぉぉおぉおおお!?」

「へ?」

「あ……あんた、あたいが寝てるからって、魔錻羅器まぶらきを脱がして……やらしいことを……!」



 いやいや!

 違う違う!

 きみがなかなか起床しないから、少々、手荒てあらな真似をしただけだ!

 顔を赤らめるな。



「タカシさん、最低です!」



 宝百合たからゆりちゃんまで、ぼくを疑ってる。



「違うって! やらしいことなんて、してないよ! 見てたでしょ!」

「わたくしが目の見えない状態なのをいいことに、いかがわしいことをなさるなんて……」



 ぐぬぬ……。

 そうか。

 目が見えてないんだった。



「とっ……とにかく! 今は大変なんだよ!」



 ぼくは話をらすため、慌てて現状を説明した。



「だから、あいつら、やっつけて!」

「無理だね」



 窓から外を眺めながら、力石りきいしあねさんはつぶやいた。



「え? 無理……って?」

「やつらは『復讐連合』を名乗ったんだろ? 話には聞いちゃいたけどね……復讐のために人を殺そうっていう連中が、色んなとこから集まってんのさ。あっ。甲剛人こうごうじんもちらほらいやがるじゃないか。勝手に里を抜け出しやがって」



 やつらが殺気に満ちてるのはわかってるよ。

 だから、やっつけてくれって頼んでるんじゃないか。

 そしてさ、また宝百合たからゆりちゃんに家を飛ばしてもらって、トンズラこけばいいの。



「いいや。やつらは決して諦めない。地獄の果てまで、ついてくる。あたい達か、あいつらか、どちらかが死ぬまで終わらない喧嘩けんかが始まってんのさ」

「そんなぁ……。だけど、ぼく達も、あいつらも、世界の敵じゃないんだよ? そもそも戦う理由がないじゃない。家を壊したことならゆるしてあげるからさ、もう帰ってもらおうよ」

「そうはいかないだろうね」

「どうして??」

「大切な家族や同胞どうほうを殺されちまったからさ」



 ちょっと待って!



「何回も言わせないでほしいんだけど、ぼくもカーチャンも殺人なんてしたことないんだよ!」

「だけど……言い方は悪いが、同じようなもんじゃないか」

「はぁ!?」



 宝百合たからゆりちゃんが、どこか後ろめたそうな、それでいて苛立いらだったような声音こわねを出して、



「タカシさん、いいですか。心して聞いてください。ここ最近、地底世界で暴れまわり、多くの無辜むこたみを虐殺しているのは……」

「言われなくたって、わかってるはずさ」



 力石りきいしあねさんが勝手に決めつけてくるが、何の話なのやら、ぼくにはさっぱりわからないぞ。



「……あんた、本当にわからないのかい?」

「本当だよ! 大体、ぼくはs━━」

「聞いてください!!!!」



 宝百合たからゆりちゃんが大きな声を出す。



「敵は……地上からやってきた人類なのです」



 ……。

 …………ん?

 えっ?



「ち、地上からって……ぼくみたいな……人間が?」



 ぼくの疑問に答えようと、口を開いた宝百合たからゆりちゃんだったけど、お返事を聞くのは、もうしばらく後になりそうだ。

 外から、今までとは違った種類のざわめきが聞こえてきた。



「地上人が空を飛んで来たぞ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ