表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっぱ異世界  作者: えすくん
第1章 異世界旅話
8/90

第8話 疲労困憊したくない!

 こんにちは! 鷹司たかつかさタカシです!

 空飛ぶ家を撃墜されて、身に覚えのない罪でなじられて、宝百合たからゆりちゃんに息子を見られました!



「魔法を使え! なぶることより仕留しとめることを優先しろ!」



 わし顔の女が、たくさんの化け物を指揮しきする。



「なんとおぞましいことでしょう……地底人類同士で戦うなど……」



 宝百合たからゆりちゃんがわなわなと身を震わせる。

 彼女曰いわく、この化け物どもは世界の敵じゃないそうだけど……じゃあ、本当の敵って??



 気になることを一々口に出してる暇はない。

 ぼくらを取り囲む化け物達は全員、魔錻羅器まぶらきを装着してる。

 繰り出される多様な魔法攻撃。

 ビーム!

 矢!

 炎!

 水鉄砲!

 はい、おしまい!

 人生終了お疲れ様でした!

 タカシくんの来世にご期待ください!



 ま、普通ならそうなる。

 だけど、今ぼくの隣には魔女っ子がいる。

 敵からの攻撃をすべてはじき返しちゃってるよ!



「すっごぉ~い!」



 宝百合たからゆりちゃん、かなり強い。

 自分達の攻撃が封じられて、やつら、どよめいてやがる。

 防戦一方じゃない。

 小さな魔女っ子は、化け物を一匹浮かせると、他の化け物どもに向かってぶん投げた。

 ストラ~イク!



「わーはははは! 勝てる! 勝てるぞ! 宝百合たからゆりちゃん、どんどんやっちゃってよ!」



 勝つって気持ちいいね!

 ぼく?

 ぼくはヒョロガリの体力ザコ。

 なんなら宝百合たからゆりちゃんにも素手すてゴロで負ける自信があるよ。

 活躍なんて期待しないでね。

 宝百合たからゆりちゃんに、ぼくの分もしっかり頑張ってもらおう!



「タカシさん。ヘラヘラして油断しないでください。あなたは人一倍ヤワなのですから」

「ちょっとぉ、言い方がひどおおぉぉぉぉぉおぉおお!??」



 ヤバイヤバイ!

 突然、足を引っ張られた!

 そのまま引きずられてる!

 突然のことだったから、宝百合たからゆりちゃんにも対応できない。

 ぼくの足をつかんでるのは……植物のつる!?



「どこからいてきたのぉ、このつるは……あああっ!?」



 つるの伸びる先を目で辿たどっていくと、そこにはどでかい亀がいた。

 他の化け物の例に漏れず、こいつも二本足で立ってる。

 上半身は魔錻羅器まぶらきだけ。

 下半身は力士がつけるまわしのような布だけ。

 甲剛人こうごうじん並にすごいファッションセンスだ。

 身長は3メートルくらいかな。

 大胸筋がたくましく発達してる。



 そんな、どこからどう見ても普通じゃない亀の手につるにぎられてる。

 ぼくとの距離は見る見るうちにちじまった。

 亀さんはぼくの上で巨大な足を高く上げ、四股しこを踏むように、どでかい足を下ろした。



「ひええぇっ」



 間一髪かんいっぱつ

 宝百合たからゆりちゃんの魔法のおかげで、ぼくは空中に逃げることができた。

 つるも弾みで外れたし、ぼくは自由だ!

 そのまま放物線を描くように宙を舞って……あれ?

 地面に激突しちゃわない?



宝百合たからゆりちゃぁん!!?!?」

「すみませんが、いま忙しくて手が離せません! ご自身で対応してください!」

「いや、無理だけど!?」

「予言の戦士なのですから頑張って!」



 無理無理無理無理!

 そんなのに就任した覚えはないし!

 ただの小学5年生だし!



 ところが幸いなことに、結構な勢いで吹っ飛ばされたおかげで、地面ではなく、その向こうの川に落ちることになりそうだ。

 よーし、体を丸めて、両手の指をまっすぐに伸ばしたら、着水準備完了!



「あだぁーーーっ!!!」



 着水、失敗。

 思いっきり、水に全身を叩きつけてしまった。

 結局、痛くなるんだよ!

 嫌になっちゃう!

 しかも水が汚い!

 土色だよ!

 泥水じゃん!

 ちょっと口の中に入っちゃったけど、すごぉく不味いじゃん!



「~~~~!」



 よく聞こえないけど、宝百合たからゆりちゃんが何か言ってる。



「げほげほっ。何か言った?」

「お急ぎください!」



 何を?



「後ろ!」



 後ろ……?

 振り返ると、そこには魚がいた。



「おわーっ」



 でっかいでっかい魚の頭だ。

 忘れてた!

 川の中には半魚人がいるんだよ、半魚人が。

 人魚じゃなくって半魚人。

 上半身が魚で、下半身が人間なんだ。

 虚無きょむな瞳がぼくを見つめる。

 つかの間のお見合いの後、うろこにまみれた皮膚をくねらせて、半魚人がぼくに近付き始めた。



「気持ち悪ーいっ」



 殺されるかもしれない恐怖よりも、生理的嫌悪がまさる。

 ぼくは全速力で泳ぎ始めた。



「がぼぼぼぼぼ」



 忘れてた。

 ぼく、泳げない。



「タカシさん、攻撃が来ます!」



 小さな魔女から警告が飛ぶ。

 それと同時に、背後から水が噴出された。

 魔法だ。

 水鉄砲のようで、だけど、ただの水鉄砲じゃない。

 言ってみれば、高圧洗浄機から発射された水。

 凄まじい威力だ。

 かすっただけで、服のそでが破れちゃった。

 もし、こんなものが体に当たりでもしたら……



「がぼぼぼっ。宝百合たからゆりちゃぁーーーん! 助けt……がぼぼぼ」

「いま忙しくて手が離せません!」

「いっつも忙しいじゃん! がぼぼぉ」



 宝百合たからゆりちゃんは自分を防御するので精一杯だ。

 半魚人め、下半身は人間のくせに、泳ぎが上手い。

 あっさりぼくに追いつくと、上からのしかかって来やがった。

 別方向からも半魚人が一匹、更に一匹と、これまたのしかかって、ぼくを溺死させようとする。



 やめろやめろ!

 何もされなくたって溺れそうだってのに。

 しかも、こいつらすっごくぬめぬめしてやがる。



「おひょっ」



 でも、おっぱいが押しつけられると嬉しい。

 こんな魚顔でも、いいおっぱい持ってる。

 Dカップ2名!

 Eカップ1名!



 よーし。

 どうせ殺されるなら、最期にんでやる!

 相手は生臭い殺人魚だ。

 倫理的に問題ないはず!



「ぼっばびぼばべぼぉ」



 水中で必死にもがく。

 濁った水の中では何も見えないから、手探りでおっぱいをみに行くしかない。



「がぼぼ。がび。ぼぶっ……べ!」



 この感触……ブラジャー!

 ぐへへ。

 さっと触るように一瞬でホックを外した。

 これ、ぼくの得意技。

 どうせなら生でんじゃいますか!

 それじゃぁ、いただきm……



「だぶぁぁーーーーーっ」



 お魚ちゃん達、大暴れ。

 ブラジャーを取られて、よっぽど焦ったのかな。

 おかげで、ぼくは水の上に顔を出すことができた。

 久々の空気、うめーーー!



「取られた。……魔錻羅器まぶらき、ない……」



 半魚人、半泣き。

 みにくい顔がもっとみにくくなってるよ。

 あー、そうか。

 やつらの着けてるブラジャーは魔法を使うための道具だ。

 これがないと、水鉄砲を使えないんだ。



「がぼっぼー!」



 でも、ぼくがおぼれ死んじゃいそうな事実に変わりはない。

 だんだん……沈んで……しまうぅ……。



「あっ、あうぅ……あぁぁっ……あああ」

「お?」



 変な声がする。

 今度は何?

 それはハンペン。



「がぼぼっ、ハンペン!?」



 全身真っ白、三角頭、大きな単眼、巨乳、その下に大きな唇。

 きみとは仲良くなれそうな気がする!

 なんだかマスコットキャラクターみたいでかわいいもん。

 だから、お願いハンペン!

 ぼくを助けて!



 ハンペンモンスターは全力疾走&ジャンプ&川にダイブ!

 ゆっくりゆっくり近づいて来るそいつを見て、ぼくは思った。

 あれ?

 もしかして、こいつに乗れるんじゃね?



「よい……しょっと……。ふぅー。助かったぁ」


 てんでノロマなやつなので、あっさりと乗っかることに成功。

 これじゃハンペンじゃなくって救命ボートだね。

 あっははは。

 さてさて、水を掻いて、陸を目指しますか。



「あっ、ああう、あぇ、うぇっえぇ……んぼぇぇぇぇええぇぇ」

「!?」



 前言撤回。

 こいつとはお友達になりたくない!

 口から真っ黒の液体を吐き出しやがった!

 キモ!

 その液体はハンペンそっくりに形を変えて、まるで意思を持っているかのように動き始めた。



「あっ、わかった! きみ、ハンペンじゃなくってイカでしょ!」

「あうっ、あ、あ、あいぃ」

「ちょっと待ってね、いま上陸するから」



 大地を踏みしめた時、生まれて初めて自分が陸上生物だな~と実感した。

 ただいま、土。

 おや?

 ぼくってば、半魚人の魔錻羅器まぶらきを手につかんだままだ。

 あんなやつらのブラジャーなんて色気もクソもないけど、ま、一応もらっておこう。

 いくらブスでもおっぱいを包んでた布には変わりないし。



「いいお土産もできたし、それじゃ、ご機嫌よう」

「あっあっあいぃいぃぃ」



 そうはいかなかった。

 イカ女とイカ墨オバケがぼくを追いかける。

 こんなやつらに挟み撃ちにされたくなぁ~い!



 とにかく急いで宝百合たからゆりちゃんの後ろに隠れなきゃ。

 この世界、ぼくには向いてない。

 戦闘とか宝百合たからゆりちゃんに任せて、ぼくは楽して生きよう。



「タカシさん、走って!」

「歩いてるように見えるかもしれない。走ってる!」

「嘘でしょ……」



 泣きたくなるよ。

 運動音痴のヒョロガリが、どうしてこんなに運動しなきゃならないのさ。

 別にぼくはダイエットしようとも思ってないからね!?



「泣き言ばかりおっしゃってないで、自力で……えっ!?」



 真っ黒オバケは急に速度を上げ、色白魔女に飛びかかった。

 そして、衝突。

 オバケはぶつかった後、ただのすみになった。

 むむっ。

 すみまみれ女子って結構オツだねぇ。



「タカシさん……どこですか!?」

「ん? ここだけど?」

「申し訳ありません。わたくし……視界をうばわれてしまいました……」



 ……えっ?



「イカ人が得意とする魔法です。迂闊うかつでした……」



 ……つまり?



「わたくしにはもうタカシさんをお守りできません!! 逃げてください!!」

「逃がさぬわぁぁぁああああぁぁあ!!!!」



 こちらにとっては危急存亡ききゅうそんぼう

 敵にとっては千載一遇せんざいいちぐう

 例の鷲さんが、ぼくの尿も乾かぬままに、捨て身の突撃をかまそうとする。

 鬼気迫る表情。

 ぼくが何をしたって言うの?

 どうして、ぼくを憎むの?

 ぼくを……殺したいの?



「ああああああああああ!!」



 恐怖で心がいっぱいだ!

 こんな状況だけど、体は動いてくれる!

 だから、ぼくは走った。

 ひたすら走った。



宝百合たからゆりちゃん! 助けて! 助けて! 助けてよぉ!」



 目をこすってる場合じゃないよ!

 すみなんかさっさと取り除けよ!

 ぼくは自分で自分を守ることもできないんだぞ!!!

 うずくまる宝百合たからゆりちゃんの元に辿り着くことはできた。

 このまま彼女の背中の後ろに隠れていようか、それとも家の中に入ろうか……。

 迷うぼくの耳に、鷲女の声が届いた。



「死ね」



 顔を上げれば、間近にやつの顔。



 ああ……ついに……



 このわけのわからない世界で、



 ぼくは何の意味もなく、



 無慈悲むじひに、



 死んじゃうのか……。



「カーチャン……」



 ぼくの目から涙がこぼれ……その瞬間、家の扉が開いた。



「んぐぁっ!?」



 小便臭い鷲人間が、開かれたドアにぶつかり、飛んで行った。

 ぼくは、呆気あっけに取られつつ、扉の向こうを見つめた。



「何? 呼んだ?」



 カーチャン!!!!!!!!!!!!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ